【怪異殺したち】「時」と「雪」の怪異

TLの話題のキメラ
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洲央@土曜西“は”45a @laurassuoh

「怪異殺し不知火vs真夏の驟雨・しおい」をトゥギャりました。 togetter.com/li/943101

2016-02-26 16:25:39
きのこづ @Kinoko3416

時……時と雪の怪異……

2016-02-26 20:11:47
きのこづ @Kinoko3416

響が時と雪の怪異と出逢い、取り込まれ、受け入れ、一つとなることでヴェールヌイとして

2016-02-26 20:12:41
きのこづ @Kinoko3416

暁、雷、電が次々と前触れもなく、まさに「時が止まったように」眠り続ける事件が発生する。健康状態に問題なし、事故や怪我の類も調べられたが全く箸にも棒にもかからず。当然怪異とされたが怪異対策本部は手がかりなしとお手上げの中、響は単身姉妹たちを襲った怪異の正体を突き止めるべく動き出す

2016-02-26 21:00:23
きのこづ @Kinoko3416

ある日、心当たりを尋ね回るも手がかりはなく、疲れから一人響はベッドへと倒れ込む。三人は眠り続けたまま、静かな部屋。いつしか響は眠りに落ちる……

2016-02-26 21:04:16
きのこづ @Kinoko3416

しんしんと音もなく雪が降っている。不思議と寒くはない。まるで雪にすべての色と音を吸い込まれたかのような、静かな、灰色の世界。 たった一人、響は立っていた。 夢、そうだ、夢だろう。夢は怪異とも繋がりが深い。すぐに響は夢だと思いたった。

2016-02-26 21:09:52
きのこづ @Kinoko3416

予め訓練を受けていた響はこの夢に影響する怪異を辿る。しんしんと降り積もる雪の中を、辿る、辿る、細く今にも途切れてしまいそうな銀の糸を。 響には確信があった。これこそ姉妹を襲った怪異であると。

2016-02-26 21:17:45
きのこづ @Kinoko3416

「まるで、いつもの街みたいだ……」 つい独りごちた囁きも、灰色に消えてゆく。 辿り辿り、その足が踏んだのは白さを増したリノリウムの床。 「病院……」

2016-02-26 21:28:10
きのこづ @Kinoko3416

もうわざわざ怪異の痕跡を辿る必要もなかった。ただ足を進める。行くべき場所はわかっていた。 3階の病室。三人が眠り続けている部屋。

2016-02-26 21:33:00
きのこづ @Kinoko3416

「やっぱり」 引き戸を開ければそこには 「やあ、待っていたよ」 響と瓜二つの怪異 「私の姉妹が目を覚まさないのは」 「もちろん私の仕業さ。いや、君かな?」 「何を」 「まだ気がつかないのかい?」

2016-02-26 21:45:29
きのこづ @Kinoko3416

「私は君だよ。私と君はたった一人の『響』さ」 「怪異が、何を」 「暁や雷、電が眠り続けてるのだって、本当は君が願ったことじゃないか」 「まさか」 「いいや、君がそう願った。だから私がここにいる。君が『三人との幸せな時が永遠に続くように』そう願ったんだ」

2016-02-26 21:49:22
きのこづ @Kinoko3416

「そんなの……まるで猿の手じゃないか」 「面白い例えだね。本当なら私も一緒に眠りにつく手はずなのさ。そう、まさに今日、今がその時さ」 「眠ってどうなる。結局は一人だ」 「いいや?四人仲良くこの街で暮らし続けるのさ。幸せな夢の中で」 「そんなことは私の願った幸せじゃあない!」

2016-02-26 21:51:12
きのこづ @Kinoko3416

「ではどうする?私を倒すのかい?」 「ああ、そうだ」 「私を倒したところでなんの解決にもならないさ」 「……なぜ、そう言える」 「言っただろう?私は『君自身』だって!」 からからと、白い響の笑い声だけが無色透明な世界に響く。

2016-02-26 21:54:10
きのこづ @Kinoko3416

「はぁ……ふぅ……まさか、私自身がこんなに理解力に乏しいなんて思いもしなかったよ」 「……」 「そうだな、私はそう、君の想いが産み出した怪異だ。君の強い想いが、私を作り出した」 「……」

2016-02-26 21:58:35
きのこづ @Kinoko3416

「なんだよ、付き合いが悪いじゃないか。ヴォトカでもいるかい?」 白い響が軽く手を振れば、その手のうちにはグラスと瓶。 「……病院だぞ」 「構わないさ、どうせ君の夢だ。好きなようにすればいい」 「……」 「なんだい、飲まないのか。つれないな」

2016-02-26 22:00:47
きのこづ @Kinoko3416

白い響がもう一度手を振れば、グラスは出てきたのと同じように消え失せる。一人でならグラスなんていらない、そうだろ?と、瓶のままぐびりぐびりと酒を煽るもう一人の響。白く細い喉が、小さく動いて飲み下していく。

2016-02-26 22:03:08
きのこづ @Kinoko3416

「ふぅ……まあ、つまりはね、君と私は一心同体。切り離しても切り離せない。私が『響』であるように、もはや君自身が『怪異』なんだよ、響」 「……」 「そもそも怪異なんてそんなもんじゃないか。違いかい?それともまさか、自分に限ってそんなことはないなんて思ってたわけでもないだろう?」

2016-02-26 22:10:07
きのこづ @Kinoko3416

「そろそろ受け入れたらどうだい?響」 「……それは、できない」 「ほう?」 「私は、大切な姉妹を眠らせたまま、そんなことは受け入れられない」 「じゃあどうする?」 「力を貸せ」 「……ふーん?」 「君は私だ。そうだろう?ならば、私にその力を貸せ」

2016-02-26 22:11:50
きのこづ @Kinoko3416

「……いいだろう。ただ、一介の怪異殺し程度がそう簡単に怪異を飼い馴らせると思うなよ?」 「ふん、私の想いが君を生み出したなら、私にの想いで君を制御できなくてどうする」 「いいこと言うじゃないか……せいぜいよろしく頼むよ、響……いや、『ヴェールヌイ』」 「ああ、よろしく」

2016-02-26 22:15:00
きのこづ @Kinoko3416

差し出した右手と右手がしっかりと握りあわされる。瞬間、響は朝日に目が覚めた。 「……ヴェールヌイ、か。なるほどな」 さて、三人の目が覚めたら食事が必要だろう。この数日の荒れ果てた生活のせいで冷蔵庫はすっからかんだ。一人だとこうも生活が杜撰になるとは。盲点だったな。

2016-02-26 22:18:43
きのこづ @Kinoko3416

一人微笑みながらヴェールヌイは口の中でつぶやく。さて、そのうち朝潮のところにでも怪異とうまくやってください秘訣を聞きに行こうか。「時」と「雪」の怪異、ヴェールヌイの新たな一日が始まる……

2016-02-26 22:21:06