戦場の刀と槍

無用組一景
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Crux's @whose_novels_

――死ぬんじゃねえぞ。 鼻息を馬のように荒げて、正国は時空間ゲートを目指した。デバイスに接触しなければ、規定のコードを入力しなければ本丸には帰れない。 ――死んだらぶん殴る。 人は死ぬものだ。刀はいずれ折れるものだ。だが、それがどれほど嘆かわしいことか正国は知っている。

2016-01-31 22:57:03
Crux's @whose_novels_

人ともに生きてきた同田貫正国故に良く知っている。人が死ねば人は嘆く。刀が折れればがっかりする。どちらの嘆きも知っていた。 耳元にかかる御手杵の呼吸音は、異音混じりに続いている。しかしそれはあまりにか細く、何時止まってもおかしくなかった。

2016-01-31 22:59:08
Crux's @whose_novels_

その嘆きを自分は知りたくない――正国はそう思う。

2016-01-31 22:59:11