Nitoro's Strange Show 『吠えられる』

にとろさんのふしぎなはなし 『開封』 http://togetter.com/li/798960 『葬式』 http://togetter.com/li/670912
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nitoro(世界規模のアメーバ) @ignitororian

僕は犬に吠えられる、かなりの確率で、犬に吠えられる 道を歩いていると、犬に吠えられる 知らない家の前を通ると、犬に吠えられる 友達の家に行くと、飼い犬に吠えられる とにかく、僕が一人で犬と遭遇すると、犬に吠えられる

2016-02-28 02:11:53
nitoro(世界規模のアメーバ) @ignitororian

犬に吠えられる心当たりなどないのだが、そういえば、昔親戚の家に行った時に犬に噛まれたことがあった 初めは不用意に近づいたから噛まれたのだ、と反省した 限りなく友好的な態度で近づいたら、また噛まれた それから僕は犬が恐怖の対象になり、あの生き物は狂っていると思い始めた

2016-02-28 02:13:37
nitoro(世界規模のアメーバ) @ignitororian

以来、子供の僕は犬を見ると逃げ出していたのだが、逃げ出しても逃げ出しても追っかけてくる犬に遭遇した 逃げるから追っかけてきたのかもしれないが、僕はもう泣きながら必死で逃げた 必死で逃げたが、犬は追ってくるし、柵という行き止まりが僕を待ち受けていた

2016-02-28 02:15:09
nitoro(世界規模のアメーバ) @ignitororian

体を丸めて防御体制をとっていたが、犬は吠える、吠える、の連続で今にも噛み付こうとするんじゃないかと思った とにかく僕は嵐が過ぎるのを待っていたが、一向に収まる気配がないので、ついに僕は眼を瞑ったまま犬を追い払うことにした 手段は想像にお任せするが、僕と犬は最終的に血まみれになった

2016-02-28 02:17:24
nitoro(世界規模のアメーバ) @ignitororian

それで、病院に行って治療を受けた(大した怪我ではなかった、犬のその後は不明) この戦いを後に僕は犬を恐れるのをやめたというか、何かしらのリミッターが外れたというか、まぁとにかく、こういう経緯があって今は犬を恐れていない、相変わらず吠えられているが

2016-02-28 02:19:53
nitoro(世界規模のアメーバ) @ignitororian

しかし、よくよく考えてみると、この思い出はかなり狂っており、もうちょっと何か犬に対してあったのではないか?と記憶の紐を手繰ってみると、犬を飼っていたこと思い出した

2016-02-28 02:20:55
nitoro(世界規模のアメーバ) @ignitororian

その犬を飼っていたのは、これらの出来事が起きる前だ 恐らく、僕が一番最初に出会った犬だろう 名前は、たしか、ヨタロウと言ったはずだ 柴犬だったらしい らしい、というのは、僕は確かに、祖母が犬を飼っていたことを覚えているし、どうやって死んだかも覚えている

2016-02-28 02:22:01
nitoro(世界規模のアメーバ) @ignitororian

覚えているのに、犬の顔や犬種が思い出せないのだ 柴犬だった、ような、いや、両親と祖母は柴犬との雑種だと言っていたのだからそうだろう、僕はなぜか思い出せないのだが

2016-02-28 02:23:09
nitoro(世界規模のアメーバ) @ignitororian

ヨタロウが死んだのは、家の傍の狭い川で溺れて死んだのだ 祖母が散歩をして帰ってくる時に、突然、家の前まで来て泡を吹いて狭い川に頭から突っ込んだ 溺れるような深さの川ではない、むしろ、ヘドロや生活排水が流れる程度のものだ しかし、ヨタロウは溺れて死んだ

2016-02-28 02:25:16
nitoro(世界規模のアメーバ) @ignitororian

僕はヨタロウと祖母の帰りを家で待っていたのだが、両親と祖母が気を利かせたのか、死ぬ姿を見ることはなかった 伝聞で「口から泡を吹いて川で溺れて死んだ」と聞かされた 死体は一度も見ていない、家で燃やしたと聞く

2016-02-28 02:26:29
nitoro(世界規模のアメーバ) @ignitororian

子供の頃の僕がそれを聞いてどう思っていたのか、は正直もう思い出せないのだが「あの川で溺れて死ぬのは無理じゃないか?」と考えていたことは覚えている 浅すぎるのだ、泡を吹いて死んだ、と言っていたから病気だったのかもしれないが、じゃぁ、死んだその日に何も告げずに燃やすだろうか?

2016-02-28 02:28:04
nitoro(世界規模のアメーバ) @ignitororian

とにかく、不審だった 家で犬の帰りを待っていたのに、気が付けば飼い犬が死んで燃やされていたというのは子供心にも納得できなかったので祖母に聞きまくった すると、祖母は「ヨタロウはよしくんのために死んだんだよ」と言った

2016-02-28 02:29:46
nitoro(世界規模のアメーバ) @ignitororian

意味が解らなかったが、いや、まぁ、多分、これ以上は何も聞き出せないな、という感触はあった 身代り的な、僕を助けるために、死んだ、らしい ということは、川に溺れていなかったのか?交通事故にでもあったのか?僕は家にいたから車に轢かれる要素など皆無だったはずだが

2016-02-28 02:31:10
nitoro(世界規模のアメーバ) @ignitororian

何か、ヨタロウが残酷な死に方をして、それを子供に知らせないためにそういうことを言ったのか それとも、本当に川で溺れて死んだのだが、僕があまりにもしつこいのでそう言ったのか 全く、子供の僕には理解できなかったのだが、僕は、僕のせいで死んだと思い、かなり落ち込んだ

2016-02-28 02:32:33
nitoro(世界規模のアメーバ) @ignitororian

それから、何故か祖母から 「ヨタロウは死んだが、いつもよしくんを見守っている」 「あれは避けられないことだった」 「よしくんのせいではない」 「これ以上はなすことはない」 と段階を踏まえて、説教だかなんだかよく解らない話を受けた

2016-02-28 02:33:49
nitoro(世界規模のアメーバ) @ignitororian

思い返してみれば、ヨタロウは僕に吠えたことなどなかった だが、ヨタロウが死んでから一人でいると犬に吠えられるのだ 祖母の言っていることが、そういうことだとすると、ヨタロウは僕の何か、になっているんだろうか それを犬たちは見ているんだろうか

2016-02-28 02:34:59
nitoro(世界規模のアメーバ) @ignitororian

僕が、今一番、釈然としないことは、ヨタロウがどんな犬でどんな顔だったか覚えていないことなんだ

2016-02-28 02:35:28
nitoro(世界規模のアメーバ) @ignitororian

とりあえず犬は吠えるので好きになれません

2016-02-28 02:36:12