通勤電車－番外編－

PoKo @Poko8_m

【通勤電車 番外編51】 俺から声を掛けた「あのさ、会社辞めるん？」「…かもしれない」「そうなんや…？あと、さっきのビンタ痛かった」「うん、思いっきり叩いたから。一応、謝ったでしょ？」性悪さんは、いつものように上から目線でイラってしてしまう「なんで、叩いたん？」「なんでって…」

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【通勤電車 番外編52】 「…叩きたくなったから」はぁ？何…その理由。ありえへんやろ？この人、ホンマに…「…あんなこと、言われて腹が立ったから」「俺、別に普通に思ったこと言うただけやし、他の人も言うやろ？」「言われても、そうですねって笑い飛ばせる相手と笑い飛ばせない人が居るの」

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【通勤電車 番外編53】 「何、すばる。あっちのテーブル観ながらニヤニヤしとるん？あの子はあかんで？好きな人、居るみたいやから」「ちゃうゎ。そんなん言うたら、ヨコやって同じやんか！主役を見ぃひんで、あっちのテーブルばっかやん」「いやさ、どうなるんかな？思ってな。な、そうやろ？」

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【通勤電車 番外編54】 「まぁな…」「って、すばるなんで知っとるん？」「んー、なんでやろなぁ」「そもそも、すばるさぁ。お前があの子をナンパして来いって言うたから、こないなってるんやで？」「えぇやん、別にこっちのが面白そうやし」「また、他人事や思って、そうやって、お前は…さぁ」

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【通勤電車 番外編55】 「でも、あの子……振られんで？」「え？」「え、あ、いや…。その、何でもない。さてと。これとか、これ、めっちゃ、うまそうやな。食お。食お。にしても、久々やな。こない豪華な食事とかさ」「料理には金かけた言うてたからな」「さすが、食べ物に煩い大倉やな。納得」

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【通勤電車 番外編56】 「仮に言うように、彼女が俺のこと好きやったとしても、俺は彼女のことを恋愛対象って、思ったことが1度もないんですよ。やから…」「そっか…。まぁ、えぇんちゃう。ごめんな…。初対面なんに変なこと言うて」「いや別に大丈夫ですよ」ってお辞儀をされたんだよなぁ…。

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【通勤電車 番外編57】 そうですねって笑い飛ばせる相手と笑い飛ばせない人が居るって…「俺は笑い飛ばせへんの？」「そういうことになるよね」「何で？」「何でって言われても、それは…何でもよ」って照れ臭そうにそっぽを向かれて、歯がゆくなる「まさか、俺のこと好きとか言うんちゃうの？」

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【通勤電車 番外編58】 “そんなことない”“勘違いしないで”って言われるんやろなって思っとったのに、何も言われないまま「みんな写真…撮ってるな。私も撮ってもらってこようかな。カメラマンよろしくね」ってカメラを渡されて。でも、あの日を境にあの人と俺は前みたいに話をしなくなった。

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【通勤電車 番外編59】 もちろん、昼間に一緒にご飯を食べることもなくなった。関わらんようなって、よかったゎと思うはずなんに、なんだか、ちょっと物足りひん。けど、お互い気まずいまんま居ったら、ある日、いきなり、あの人は俺の前から、居なくなった「最近、◯◯さん休み多いっすよね…」

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【通勤電車 番外編60】 って、ため息交じりに新入社員くんが言って来る「やっぱり、言うんじゃなかったよな」「え？」「実は辞めるかもって話し聞いて、告ったんです」「え？」「そしたら、他に好きな人がいるって、振られて。気まずくてだから、会社こなくなっちゃったのかなとか…」「はぁ？」

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【通勤電車 番外編61】 むしろ、こいつやなくて、多分…。彼女が気まずいのは俺に対してやないのかな？でも、そんなことを言ったら、勘違いしないでよって言われそうやなって。思ったりして。でも、もし、あの人に好きって言われたわけとちゃうし。もし、言われたらどうする？言われたら…俺は？

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【通勤電車 番外編62】 ミーティングルームを出ると思わず、ため息をついた。人事に呼び出されたから、何事かと思ったけど、契約の話か…。やっぱり、嫌な予感が的中して。次の仕事を探すために有給使って面接の日々。あれから錦戸と顔を合わせるのが気まずかったから、内心少しだけホッとした。

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【通勤電車 番外編63】 そんな折、10歳くらい歳の離れた…そう、あの新人くんに告白とかされて。きっと、錦戸が知ったら、また付き合ったら？いい奴やしとか言うんだろうなって思いながら、無駄にイライラして。他に好きな人が居るの。ごめんなさいって断った。なんかますます気まずくなって。

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【通勤電車 番外編64】 気にし過ぎかな？とは思ったけど。でも、気まずいのには変わらない。そんな風に思いながらいたら、もう会社に行くのも数える程しかなくなった頃、ようやく新しい仕事が決まった。今より少し遠いけど、始業開始時間少し遅いし、今度は正社員だし、頑張らなきゃいけないな。

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【通勤電車 番外編65】 もう、もしかしたら…。仕事を辞めたら錦戸と会うことはきっとない。でも、通勤電車の中で錦戸と偶然出くわしたりするのかな？でも、もういい加減…錦戸のことを考えるのは辞めよう。新しい仕事のことだけを考えよう。きっと、新しい職場で新しい出会いがあると思うし…。

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【通勤電車 番外編66】 そして、迎えた退職の日、会社で錦戸とは話をしなかった。送別会の時、何か言いたそうな顔をしてる気がした。でも、何か言わなきゃいけないのは私の方だから。もう、きっと、会うことがないのなら…自分の気持ち、最後に一言伝えたい「あのさ、錦戸…ちょっといいかな？」

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【通勤電車 番外編67】 少し、驚いた顔をしてこっちを見てくる。その顔がやっぱり、仔犬みたいでかわいくて好きだなとか思う私が居る「えっと…。どうしたんっすか？いきなり」って苦笑いを浮かべてて「ん？最後に一言だけ言っておこうと思ってさ」多分、何を言われるかわかってる顔をしていて。

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【通勤電車 番外編68】 どんちゃん騒ぎをして居る宴会場の中で錦戸だけにハッキリ聞こえるようにずっと言えなかった言葉を言った「私、はじめて錦戸に会った時から好きだったんだ。でも、錦戸、好きな人がいたし、どうしたら、いいかわからなくて、いろいろ酷いこと言ったりしてごめんね。あと…

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【通勤電車 番外編69】 今まで、ありがとう。元気でね！」そう言って席を立った。これでいいんだ。またね。錦戸。さよなら。長い片思い。あれから、どれくらい経ったんだろう。会社に向かう通勤電車の中で声を掛けられた「あの、すみません…」聞き覚えのある声に後ろを振り返った。まさかね…？

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【通勤電車 番外編70】 「髪の毛、短なってたから、一瞬わからんかったゎ。元気にしとったん？会社辞めてから、何度も電話もメールも繋がらんしやな…その…うん…」多分、俺のことを好きやろ？から、気持ちを伝えられて、確信に変わったあの日から、改めて俺なりに考えたけど答えが見当たらん。

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【通勤電車 番外編71】 せやけど、1つだけ気づいたんは、会わへんようになって、やっぱり俺の中で違和感があった言うこと。寂しかった言うこと。それが、まだ何の感情かわからへんけど「とりあえず、新しい連絡先教えてくれへん？あと、いつもこの時間なん？電車…」「え、あ、まぁ…そうだね」

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【通勤電車 番外編72】 「そしたら、明日から俺もこれに乗るゎ。いつも、この車両なん？」「ちょっと、え？何で？」会うことないって決め込んでたから、こうやって会えただけでも、嬉しいと思ったのに、何この展開。ありえない「俺なりにいろいろ考えてん」「考えてって、あの…朝苦手だよね？」

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【通勤電車 番外編73】 「まぁ、そうやな。やけど…。まぁ、深いこと考えんとさ…」って言うけど、深く考えちゃうよ。考えるなって方が無理「変に期待はさせないでよ」「期待させたら、あかんの？」「あかんかな…」「素直やないな。期待させたんそっちなんに」「え？」「やっぱ、なんもないゎ」

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【通勤電車 番外編74】 「そしたら、また明日」そう言って人の波をかき分けて電車を出て行く姿を見送る。一体なんだったんだろう。でも、少なくとも、時間が経って悪い関係から前進したのは確かだよね？また、明日か……。また会える。そしたら、今度は素直にそう思ったら、思わず笑みが零れた。