指先で送る【フルーツソングシリーズ①】

かおり @orange_shake_

【指先で送る・26】 "この朝の写真な、○○ちゃんに送るためにわざわざ早起きして撮ってんて。あ、これ言うたらあかんやつやった！内緒ね♡" 「、」 やばい。泣いちゃいそう。 "内緒ついでに、その時安田くん言うてたよ。夕焼けとか朝の空とか星空もええんやなぁって。"

かおり @orange_shake_

【指先で送る・27】 "いつも青い空ばっかり見てきたけど、○○ちゃんに出会って、世界が広がったって" 我慢できず落ちた涙に、彼女は気づいているのかいないのか。 楽しそうに笑った。 "というわけで、私はこれにてドロンします"

かおり @orange_shake_

【指先で送る・28】 これがこれなんで、と昭和めいた謎のポーズを決めて笑顔で出て行った。 ＊＊＊ 彼女が出て行って、静かになったリビング。 スマホが震える音がして、通知画面にはまた彼からのカラフルな絵文字。 スマホを取って、ベランダに出た。 今夜は星が綺麗。

かおり @orange_shake_

【指先で送る・29】 カメラを起動して、シャッターを切った。 この部屋は、ほぼここからの眺めで決めたといっても過言ではない。 春には桜並木が目の前で、夏には海も入道雲も花火もよく見える。 秋にはキンモクセイのいい匂いがするし、冬にはこうして星がとても綺麗に見える。

かおり @orange_shake_

【指先で送る・30】 彼が見ている世界と、私が見ている世界。 こうやって交換していくのもいいけど、いつかは一緒に同じ景色を見てみたい。 何気ない毎日のやりとりから、いつかは同じ気持ちを持っていけるようになりたい。 安田くんからのメッセージを開く。

かおり @orange_shake_

【指先で送る・31】 返信を焦らす駆け引きなんてしない。 初めて私から送る、夜空の写真。 震える指先で、一文字ずつ願いをこめて。 たった1行でもいい。 安田くんの言葉を、聞かせてください。 【おしまい】