魔法をかけて【フルーツソングシリーズ③】

亮ちゃん×Hello!Orange Sunshine(JUDY AND MARY)で、爽やかフルーツ(を目指した)
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かおり @orange_shake_

【魔法をかけて・1】 『何?急に休みとれって』 不機嫌そうに細められた目。 ただでさえ彫りの深い顔が、目の下のクマをより濃く見せている。 それは数日前のこと。 ** 「ね、次の連休に合わせて有給とって?」 『は?』

2016-02-03 23:08:53
かおり @orange_shake_

【魔法をかけて・2】 「年末年始ずーっと働いてた分、お正月休み余ってるでしょ?」 『…それはまあ、そやけど』 「決まり!連休と合わせて1週間ね!」 『1週間!?あんなあ、俺の仕事そんなに暇ちゃうねんぞ、』 「仕事なんてだいたい代わりがきくんだよ」

2016-02-03 23:08:59
かおり @orange_shake_

【魔法をかけて・3】 「でも、私にとって亮ちゃんの代わりはいないでしょ?」 『…何企んでんねん』 「内緒ー!あ、もし休んでくれなかったら亮ちゃんの代わり見つけてやるからね!」 そんな強引な私に呆れた顔をして、約束通り連休初日の今日。 「そぉれっ!」 『!?』

2016-02-03 23:09:05
かおり @orange_shake_

【魔法をかけて・4】 眠そうに亮ちゃんが欠伸をした瞬間、アイマスクを装着。 亮ちゃんが何のことかわかってないうちに、おもちゃの手錠を両手にかける。 『お前、どういうことやねんこれ』 「あ、大丈夫だよ怪しいプレイとかじゃないから!」 『あんなぁ…』 「亮ちゃん、ちゅー♡」

2016-02-03 23:09:13
かおり @orange_shake_

【魔法をかけて・5】 首に腕を回せば少し構えたようなその唇に、口に含んでたものを流し込む。 『…ん?んんっ!』 「…ぷは、飲んだ?」 『お前これ…』 「おいしいでしょ♡この前大倉くんからもらったんだ〜」 『あいつ…!』 亮ちゃんに口移しで飲ませたのは、高そうなワイン。

2016-02-03 23:09:20
かおり @orange_shake_

【魔法をかけて・6】 はい、これで亮ちゃん車運転できません。 つまり、逃げられません♡ 「さぁて、出かけるぞー!」 『おい、お前な…!』 文句言いたげに開いた大きな口に、カットしたばかりのオレンジを入れて。 『んぐっ、おひ、おまへにゃ、』 「うふふ♡」

2016-02-03 23:09:26
かおり @orange_shake_

【魔法をかけて・7】 残ったワイン、サングリアにしようと思って切ったオレンジ。 いいとこのワインなんだろうけど、私には大人の味すぎてわかんないからね。 サングリアの瓶の蓋を閉めて、余ったオレンジを私も一口。 さあ、お出かけしましょう♡

2016-02-03 23:09:34
かおり @orange_shake_

【魔法をかけて・8】 亮ちゃんの手を引いて、玄関のドアを開けると亮ちゃんがびくっとした。 「どうしたの?」 『…外、出るん?』 「もちろん」 あれ、動かない。 『何企んでんのか知らんけど、お前がここまで強情なん珍しいからとりあえず言う通りにする。やからお願い』 「?」

2016-02-05 23:01:34
かおり @orange_shake_

【魔法をかけて・9】 『手錠で外出だけは勘弁して』 あ、そっか。 手錠にアイマスク。 この状態で外を歩けばそんなつもりなくても怪しいプレイになっちゃう。 「絶対アイマスクとっちゃダメだからね?」 『わかったわかった』 約束させて、手錠を外した。 『寒っ!』

2016-02-05 23:01:44
かおり @orange_shake_

【魔法をかけて・10】 『なあ、外出るんやったらせめていつものライダースぐらい…』 「いいのいいの!」 『良くないやろ』 つべこべ言う割には大人しく私に手を引かれてる亮ちゃんが可愛い。 「ほい、乗って!」 『え、車?』 「そうそう!えっとね、ここに座って…」

2016-02-05 23:01:52
かおり @orange_shake_

【魔法をかけて・11】 『…お前、運転すんの?』 「何か問題でも?」 『問題しかないわ』 失礼な。 今日のために練習したわ! シートベルトを締めてあげて、出発! 「亮ちゃーん」 『ん?』 目が隠れてるからどんな顔してるのかわかんないけど、声はそんなに怒ってなさそう。

2016-02-05 23:01:59
かおり @orange_shake_

【魔法をかけて・12】 「…ごめんね、急に」 『ふは、今更?(笑)』 大きな口が横に広がった。 『ええよ別に。お前俺に1回もわがまま言うたことないやん、むしろいつも我慢しすぎ。 お前の初めてのわがままがどんなもんか、俺もちょっと楽しみになってきてる』

2016-02-05 23:02:05
かおり @orange_shake_

【魔法をかけて・13】 「…きっと、喜んでもらえる、と、思うから」 トランクでゴトゴトと音を立てるのは2人分のキャリーケース。 それから、亮ちゃんのサーフボード。 お気に入りのライダースもいらないような、あったかい島へ。

2016-02-05 23:02:12
かおり @orange_shake_

【魔法をかけて・14】 赤信号の間に、亮ちゃんのお気に入りのキャップを浅く被せてあげた。 「魔法を、かけます」 『え?(笑)』 亮ちゃんの好きな曲が流れる車内。 鼻歌混じりでこの状況を楽しんでる亮ちゃんに、そろそろ教えてあげなきゃ。 空港について、車を駐車場に停める。

2016-02-05 23:02:18
かおり @orange_shake_

【魔法をかけて・15】 「亮ちゃん、最近ずーっと無理してた。」 仕事が忙しい。 もちろんそれは間違いないけど、きっとそれだけじゃない。 1つ1つは小さいかもしれないけど、積み重なった心の痛みとか、昨日うなされてた悪い夢とか、こっそり滲ませた涙とか。

2016-02-05 23:02:25
かおり @orange_shake_

【魔法をかけて・16】 私の前では、いつもかっこいい亮ちゃんでいてくれてるから。 『………』 亮ちゃんは黙って聞いてる。 「今日はね、亮ちゃんが思いっきり笑って、子どもに戻っちゃう魔法を私がかけるの」 半開きの口に、ポケットから取り出した甘いキャンディを放り込んだ。

2016-02-05 23:02:31
かおり @orange_shake_

【魔法をかけて・17】 「ぜーんぶ忘れて、目の前の楽しいことだけ見て。あ、私のこともちゃんと見てね?」 車の扉を開けて、亮ちゃんのアイマスクを外した。 「行こう!ちょっと搭乗時間ギリギリだから走るよ!」 『ぅえっ?え、何?』 「いいから!」

2016-02-05 23:02:38
かおり @orange_shake_

【魔法をかけて・18】 トランクから取り出した荷物を見て、口をぽかんと開けて。 やっと状況が見えてきたらしい亮ちゃん。 『…アホすぎるやろ』 「え?」 やっぱだめだった? 不安になった瞬間、細いけどしっかりした身体が私を抱きしめた。 小さく鼻を啜る音。

2016-02-05 23:02:46
かおり @orange_shake_

【魔法をかけて・19】 『…ぁあー!もぉ!!』 今度は大きく叫んで。 周りをキョロキョロ見回すと、一瞬だけ触れるようなキスをした。 『行くでアホ!飛行機間に合わんかったらどうすんねん!』 私の手から荷物を取り上げて笑う亮ちゃんは、久しぶりに見る眩しい笑顔だった。

2016-02-05 23:02:53
かおり @orange_shake_

【魔法をかけて・20】 「よーし、行くぞー!」 『お前荷物貸せ、足遅いねんから』 「言ったなー!」 眩しい笑顔だけどその瞳の奥、もっと光るはず。 さあ、魔法はまだまだこれから。 【おしまい】

2016-02-05 23:03:43