刀工・月山貞伸氏 特別対談「刀工・月山」at奈良県立美術館 (2016.3.13)
Q:弟子入りして最初の仕事はどういう仕事ですか? A:1年くらいは刀にさわれないので雑用のみ。→炭切り(原木を鍛刀用、焼入れ用などに切り分ける)のが最初の仕事→相槌など師匠の作刀の手伝い。文化庁認可が下りるまでは自分の刀というのは打てないので、5年くらい経ってから自分の刀を打てる
2016-03-15 21:09:57Q:槌など重いものを扱いますが、トレーニングとかしますか? A:ある程度の体力は必要。ただ、体力100%ではなくて技術。槌もがむしゃらに振ってたら100回振っただけでへばったり、腱鞘炎になったりするので、コツがいる。
2016-03-15 21:11:23Q:前回の講義で、刀の原料(卸金、玉鋼、古釘、銅下、めじろ)の中でも玉鋼が重要で、出雲の方で全国の玉鋼を作っていると伺ったが、玉鋼は月山派で一年で何kg使うんですか?
2016-03-15 21:14:38A:その年に作る量で違うので一年でというのは難しい。一回(一振り作る)に使う玉鋼の量は10kg以上です。出来上がる刀は1kgほど。鍛錬するうちに不純物などが減り、炭素量も落ちる。やすりで削ったり砥石で研いだりすると、最終的に1/10くらいになる。(続く)
2016-03-15 21:16:46(深谷氏の発言か貞伸氏の発言か不明)刀を作る際は2振か3振作って一番いいものを残すので、1つの刀を作るために、(10kgの玉鋼の)2倍、3倍の材料が必要
2016-03-15 21:22:02(貞伸氏の発言)若い自分では、2、3振で済まない。師匠(貞利氏)は2,3振で作るが、納得いくものができるまでもっとかかる時はあります。
2016-03-15 21:23:23Q:お答えされにくい質問ばかりして恐縮だが、選ばれなかった方の刀はどうするんですか? A:一度鍛えて出来上がった刀をもう一度刀に鍛えることはできない。炭素量が減るので、もう一度鍛錬は不可能。刀剣彫刻や研ぐ練習などに使ったりすることはある。(続く)
2016-03-15 21:26:12Q:2、3振打った刀の中でこの刀が一番出来がよいと選ぶのはどのタイミングですか? A:まず、鍛刀し、やすりで磨いていった時点で傷がでないこと。次に焼入れの出来。焼入れは刀工が「魂を込める」工程で非常に重要。最後に完成して研ぎに出して帰ってきたときの刀をみて決める。
2016-03-15 21:29:47ただ、案外自分が気にしているところを人は気にしない。コンクールに出しても、自分が「あれ?」と思ったところが評価されたりも…
2016-03-15 21:31:05Q:作刀の工程で一番スキな部分は? A:鍛錬は基礎となる大事な部分で難しい。焼入れも刀鍛治の魂を込めるところで難しい。焼入れは色々新しいことをするとき失敗もともなうが、挑戦しがいがある。
2016-03-15 21:33:28Q:自分の作った刀の個性は? A:追いかけている立場なので、納得いった部分はないが、地鉄の面白さ。今、(県美で)展示させてもらってるのは相州伝の鋼の奥から相が湧き上がってくるような木目を表現した。月山の伝統の上に積み上げた個性だと思う。
2016-03-15 21:37:21Q:一日のスケジュールを教えて A:8:00 朝礼 師匠から刀鍛治の心構えなどのお話 17:00くらいに終了 後片付けして18:00には終わり。 夜、作刀出来なくはないが、光の当たり方で刀の見え方はずいぶん違う。夜の光で刀身の見え方が変わるのであまりやらないが残業もたまにある
2016-03-15 21:42:22月~土 仕事 日曜は愛好家の方に混じって刀剣の鑑賞会や、お客さんのところで刀の手入れなど。弟子は時間外に槌を振る練習をしたり。貞伸氏は時間外に最近はパソコンに向かう仕事(文章を書いたり、作品の写真を撮って整理したりなど)が増えた。
2016-03-15 21:44:01Q:月山さんに一振、刀をお願いしたいなと思ったら、どうしたらいい? A:まずはお客さんに月山道場(桜井市)に来ていただいてお話をさせてもらう。現代刀は直接刀鍛治から買ってもらうのが基本です。
2016-03-15 22:55:58Q:おまかせにした方がいいのか、作風とか指定していいのか。 A:刀の良し悪しはわかりにくく、素人はおまかせが多い。ただ、お守刀なら短刀なのか脇差か、刀剣彫刻など極力希望には沿うようにします。また、居合いをやってる方は実戦で刀を使うので、反り、長さ、茎など細かく指定されることも。
2016-03-15 22:58:54Q:拵なども刀匠に相談できる? A:もちろんご希望はききますが、拵などはたくさんの職人が関わってできる総合美術で、僕は関与できない。 月山ではお客さんに刀をお納めするときは基本は白鞘。刀袋は貞伸氏のお母様が一個一個作ってらっしゃるそうです。
2016-03-15 23:06:26Q:これからの抱負 A:まだ修行の道半ばではあるが、千年の歴史がある刀の世界、自分の作品も何百年残ってほしい。国宝、重文のような立派な刀を作りたいと思っている。 刀は人のお守り刀。大事にしていただきたい。持っててよかったと思われるような人の心を打つ刀を作りたい。(続く)
2016-03-15 23:09:32刀っていいな、刀を持ちたいなと思われるような作品作りたい。最近高齢の方が管理が難しく刀を手放したり、錆びてそのまま放置されたりということを目にするのと、海外に流出も多いので、若い方に受け継いで貰いたい。最近の刀剣女子などはすごくいい傾向と思う(と言われて顔を上げられなくなる私)続
2016-03-15 23:12:27だんなさんが刀買いたいと言ったときに買わしてあげて欲しい。アニメとコラボしたりとかして若い人にも興味を持ってもらえるように活動しています。
2016-03-15 23:14:27深谷氏講演会締め「刀はその歴史のはじまりから美術品、ステータスとしての存在。今でも武器を作っていた時代そのままの作り方をしている。日本の伝統文化をごらんいただくのが今回の展覧会テーマ。受け継がれてきた美術文化をごらんいただきたい」
2016-03-15 23:16:35会場からの質問に答え、綾杉肌について 貞伸氏「顕著に綾杉肌が出るのは月山派の特徴」 Q:見えにくいものもあったが 研ぎ師の加減にもよる。板目が見えればよいというものでもないので。 深谷氏「美術館の方でも展示方法など工夫して地鉄もみやすいようします」
2016-03-15 23:19:33