コンビニでお買い物
「お兄さんそれ本物?」 「?」 「名札、海軍少佐って。それにそのマーク、提督の奴でしょ?」 「ああ、そうだよ。今日は地中海で海賊船を撃沈、その足で連中の港まで行って艦砲射撃。海賊を合計36人殺した。そしてこれから帰って家族とバーベキューだ。満足か?」 「なにそれ。チョーうける」
2016-03-21 16:54:56提督が遠くに行ってしまった話
深海戦争の頃は艦娘母艦に乗って無線で艦娘に指示を出していた提督も、戦後は本土から衛星回線経由で必要最低限の支持しか出してこなくなる話
2016-03-23 16:16:55母艦勤務だった頃が懐かしい。 確かに危険な日々だった。怖い思いもしたさ。風に煽られたヘリのローターが艦橋をかすめたことがあった。深海棲艦の奇襲で魚雷が直撃したこともあった。硫化水素が逆流して便所で死んだ奴もいた。
2016-03-23 16:21:19でも、毎日が充実していたんだ。 戦う相手は深海棲艦だった。人類を護る戦いに参加しているのが誇らしかった。水兵たちと、馬鹿みたいに飲んで騒いだ。 なにより、艦娘たちと常に一緒だった!
2016-03-23 16:24:00共に母艦に乗って作戦海域に出撃した。戦闘中は無線越しでも、お互い信頼し合っていた。勝利の喜びを、敗北の屈辱を、皆で分かち合った。 彼女たちを一人も失わなかったのが、俺の自慢だった!
2016-03-23 16:27:15今だって、一人も失っちゃいない。 でも怖いんだ。画面の向こうの彼女たちはどうしている? 何を考えて、任務を遂行している? 何を思って、俺が指示した目標を砲撃した? 俺が彼女たちにさせたことは? 俺は、何をした?
2016-03-23 16:30:51またコンビニでお買い物
「お兄さん、それまだ着てたんだ」 「なんだって?」 「カッコいいと思ってるなら悪いけどさ、それチョーダサいよ。女の子に声かけるならさ、もっと今風の……」 「黙れ!!」
2016-06-25 02:03:01提督の指示に従って砲撃した話
情報では、彼は早朝に車で帰宅することになっていた。そこを狙う為に艦娘を事前に展開させて、監視していたというわけだ。
2016-03-23 16:40:58その家には彼の妻子と、雇われの使用人が幾人かいることがわかっていた。局所攻撃なんて言っているが、建物ごと吹き飛ばすんだ。砲撃すれば巻き添えになるのは間違いなかった。 司令部は、必要な最小限の犠牲と判断した。
2016-03-23 16:41:24夜明け頃、一台の車がやってきた。情報通り、司令官の車だ。 自宅前に停車して、司令官が家に入っていくのを確認した。それと付き人が二人。運転手は、車を家の脇に止めてから入っていった。 そして俺は、砲撃を命じた。
2016-03-23 16:45:59短い砲撃だ。重巡用艦娘二人で一斉射。 20.3㎝砲弾が20発撃ち込まれて、司令官の家は瓦礫の山になった。攻撃成果は司令官家族3人、使用人4人、付き人2人、運転手1人。確実に死んでいるだろう。 だが、監視は続行した。死体を確認するのも任務のうちだからだ。それに今回は、続きもあった。
2016-03-23 16:51:51死体を確認するのは、つらい仕事だ。 砲撃された人間は、大抵バラバラになる。手とか、足とか、頭とか。その破片を数えて、特徴を見たりして、誰が死んだか確認するんだ。妖精さんのカメラは、それができる。
2016-03-23 16:55:36だが今回は、数えるのはそう難しくなかった。 しばらく監視していると人が集まってきて、家だった瓦礫を掘り返し始めた。埋葬するために、遺体を回収していたんだ。 瓦礫の中から破片を掘り出して、丁寧に選り分けて並べられた。10人分の破片の山。殺したはずの人数と整合する。
2016-03-23 17:00:06作業員の一人が、破片の山の前で崩れ落ちた。たぶん、使用人だったやつだと思う。彼は、泣いているように見えた。 しばらくして人数分の棺が運ばれてきて、破片は棺に丁寧におさめられた。
2016-03-23 17:03:13棺は開けた丘に運ばれ、そこで葬式の準備が始まった。そうとも、その様子も観測機で追跡して、監視した。艦娘たちもその丘が射程に収まる位置に移動させた。 なぜなら情報では、葬式に司令官の弟が参加すると予想されていたからだ。彼もまた、重要な標的だった。
2016-03-23 17:06:59司令官の弟が会場に到着して、葬式が始まった。 棺は一か所にまとめて並べられて、参列者はそれを囲んだ。俺はそこにいる全員が棺を囲んだのを確認してから、砲撃を命じた。 砲弾は、彼らが祈りを捧げているときに着弾した。
2016-03-23 17:11:16