カンムス・オブ・ウォー

同志雪の人＠セーラー服 @yuki_8492

［ GOOD ＋ KILL ］

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横須賀鎮守府にて

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諸君、艦娘は未来の戦争の形ではない。今、現実として存在する。 窓の外を見てみろ。作戦海域ではあのような少女たちが、昼夜行き交っている。特に最近海賊が跋扈していると名高いかの海で！ あの辺一帯の観光資源となってもいいくらいだ。

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我々提督が、わざわざ横須賀から戦地まで行くわけではない。そんなことは百も承知だろう。 艦娘部隊は出撃も帰還も全て…母港での休憩でさえも、神が見捨てたかの海で行われる。艦娘が海に出てから、我々が指揮を引き継ぐ。

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我々は様々なところから批判される。画面をぽちぽちクリックするだけの、戦場に出てこない臆病者の”椅子に座った軍隊のゲーム戦争”だと。 言わせておけ。帝国海軍は艦娘を今後さらに増やす。

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失礼、”艦娘”は正しい表現ではなかったな。正しくは”人型戦闘艦艇”、だったか。 いたいけな少女は戦場のどこにもいない。 ……言い換えにはウンザリだ。

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何もかもを、差し障りのない言葉で表現を濁す。 ”対象を排除””局所的な攻撃””目標の無力化”。 勘違いするな。我々は少女を使って、人を殺している。

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お前たちの頭に叩き込む。何度も、何度もだ。これは愉快なプレイステーションなんかじゃない。 お偉方は認めたがらないが、モデルはしょぼいブラウザゲームだ。お安いクリックゲーだ、豪華で精緻な美麗CGになれた連中には物足りないだろう。

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そんな君らには朗報だ。カメラ情報を取得すれば、別画面でリアルそのものを見れる。それを見れば、爆発エフェクトの向こうの現実が良くわかることだろう。 吹き飛んでいるのは画面の上のピクセルじゃない。人の体と人の血だ。君がクリックするたびに、人が死ぬ。忘れるな。

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以上だ。解散。

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「目標確認」 観測機からの映像の中心には、小汚い建物が写っていた。資料の写真と同じ、海賊にミサイルや砲弾を提供している連中の弾薬庫だ。

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確認の為、映像を司令部に送る。一分と待たず返答。 「攻撃許可」 画面の攻撃準備のアイコンをクリックして、艦娘を攻撃態勢に移行させる。ある程度ベトンで固めてある可能性が高いので、徹甲弾の使用を指示。

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艦娘のステータスシンボルが攻撃準備完了のものに変わる。迷わず攻撃開始のアイコンをクリック。航路を行き交う民間人を脅かす武器だ、吹き飛ばすことに躊躇は無い。 「ああ？」 だがクリックしても、反応がない。見れば観測機からの映像も乱れている。 「くそ、リンク切れか」

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急いでリンク復旧作業を実施する。 回線を繋ぎ直すから一時的に完全に情報が途絶える。が、即座に復旧。映像も安定化。 「よし、戻った」 pingテストを実施してリンクに異常がないことを確認したうえで、改めてクリックする。今度はちゃんと命令は伝達され、砲撃が開始された。

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弾着まで十数秒。だが、映像の端から現れる影があった。 「お、おい。ちょっと待て」 ボールを追いかけながら、走ってくる子供が二人。ちょうど弾薬庫の前の道路を、駆け抜ける形だ。 「くそっ、砲撃中止、砲撃中止」 クリックを連打するが、間に合うはずもない。第一射は、とっくに終了している。

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「早く行け、早く行け」 せめて弾着までに、安全圏まで駆け抜けてくれれば。祈りながら、画面を見守る。 弾着までの残り時間と、子供たちの走るスピードを頭の中で計算。微妙なラインだ。備蓄されている弾薬の量によっては、あるいは。

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「弾着」 画面の中央で、盛大な爆発。土煙が画面いっぱいに広がり、少し遅れて衝撃波が観測機のカメラを揺らす。思ったより規模がデカい。 「攻撃成果確認！」 レコーダーに適当な理由を吹き込みながら、カメラを操作して子供たちの影を探す。くそ、どこだ。どこにいる。

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子供たちは、居た。二人とも、道路のシミになっていた。 弾薬庫は間違いなく吹き飛んだ。任務は完了した。艦娘に、帰投命令を出した。

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「なあ少佐、昨日のことを私なりに考えたんだ。本当だ」 「あまり気に病むな。あれは不幸な事故だった」 「ええそうです。悪いとき、悪い場所でした」

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「許可を出したのは私だ。情報を吟味して、あれなら非戦闘員は巻き込まれないと、私が判断した」 「ありがとうございます。ですが、撃てと命じたのは私です」

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「……一つだけ確かなことがある。我々は知らなかった。あそこに子供が居ることを知らなかった」 「だが奴等は違う。子供だけじゃない。沢山の民間人が乗っていることを知っていて、あの日客船にミサイルを突っ込ませた」