本丸サテライトスタジオ#2
大倶利伽羅が帰ってくる前に僕も何か用意したいんだけど……何なら喜んでもらえるだろう? ミョウバンも刀装ももうあげてしまったし……。なにか良いもの、ないかな。
2016-02-14 11:25:45海岸で拾ったいつくかの琥珀、同じく拾ったまろやかに削れたガラスの破片、オスのミドリカワトンボの標本、不思議な加減で透けるお菓子の包装紙、重要そうなネジとバネ、圧力鍋のしゅんしゅん回る部分、万年筆の蓋、びっくりするくらい大きいどんぐり
2016-02-14 12:11:57茶屋で甘酒と生チョコレートを食べた。こちらもどことなくいつもより人が多いように思える。
2016-02-14 13:01:00どこにもいないと思ったら、押入れの中で光忠が寝ていた。起こすのも申し訳ないし、少し寝顔を眺めていようと思う。
2016-02-14 17:14:56まあるい琥珀に硝子、美しい羽根を持つ蜻蛉の標本、透ける紙切れに何かの螺子と翅、それに圧力鍋の部品……これは厨係が困っていないのか?……そして万年筆の蓋とどんぐり。沢山の宝物に囲まれて光忠は眠っている。
2016-02-14 17:19:47光忠の寝顔は珍しい。いつも俺より先に寝て、俺より先に起きているからだ。一緒に寝ることはあっても、だいたいは抱え込まれていて、寝顔を見ることはできない。新鮮だ。
2016-02-14 17:28:57(キラキラした、あたたかな、とてもうつくしいもの、の、前に、僕は宝物を並べている。僕はどうしてもそれがほしい。箱に大事にしまったり、時折転がしたり、光にかざしてみたりしたい。どんぐり、圧力調整おもり、ネジ、バネ、トンボ、ガラスに琥珀……僕の宝物全部でもそれとは交換できなさそうだ)
2016-02-14 17:34:42今日という日付の意味を俺は知っている。世俗に聡いわけでもないが、この大所帯だ。勝手に耳に入ってくるものだ。誰が決めたかはわからないが、今日は好いた者にチョコレートを贈る日らしい。光忠がそれを知っているかどうかはわからなかったから、チョコレートは準備していなかった。
2016-02-14 17:43:26(万年筆の蓋が「私も付けたら交換できるんじゃないか」って喋っているんだけど、彼女は減衰器だから、あげてしまうと僕はもっとたくさんの音を拾うようになってしまう。それらは僕の大好きな彼の声をかき消してしまうかもしれない。目の前のきれいなもの、は、彼の声よりも価値があるものだろうか)
2016-02-14 17:45:04別に光忠は甘いものが好きだというわけではないからな。あいつはただ、俺から与えられるものをいっとう好むというだけで。だが、光忠が欲しいというのなら俺はなんでも与えてやりたいと思う。……それが女人の群れに飛び込むことになっても、というのは冗談だが俺が与えられるものは全て与えたい。
2016-02-14 17:49:30(考え込む、なにか他のもの。何かもっと良いもの。僕は持っていなかったろうか……。同じようにあたたかくて、キラキラしていて、きれいなものじゃないと。交渉ができない、交換ができない。なにか、もっと、もっと…… 僕の、胸元が、光ったような気がした)
2016-02-14 17:51:55俺達は互いに互い唯一のものであるが、その一方で独立した感情を持ち、自由に動きうる存在でもある。今は互いにそれで満足している。少なくとも俺は、声を上げず表情を変えず動きもしない光忠を与えられても寂しいとしか思えないだろう。
2016-02-14 17:57:42(取り上げる。さて、よく分からない。確かにあたたかくはあるけれど、キラキラもしているけれど、はたしてこれがきれいなものなのか、僕にはよく分からない。その子が喋り出す。「あれはどうしてもほしいものだね、そうなんだけど、交換とか、そういうのとは別に、僕は彼に捧げられたい」)
2016-02-14 18:01:24