『そばにいたいと思わせるのがうまい』アルトシエルのことを妄想してみた話

チェルアルコ@†┏┛墓┗┓† @cxielarko

夜営の仕度が済んだと告げて数刻も経たない内にさっさと就寝したアルトシエルに呆れつつ、火の番を勤める。今日は散々だった。どこかの間抜けな先輩が踏んだトラップのお陰で一日遺跡をマラソンする羽目になった。やれやれと、何時もの事だと諦めるのにも残念ながらもう慣れた。先輩の悪運には恐れ入る

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テントの中を覗き見る。 すやすやと寝息を立て巨体を丸めて眠る蜘蛛。この光景ももはや見慣れたものだ。この人はいつも長い手脚を折り曲げ、その巨体を出来る限り小さく畳むようにして眠る。身を守るように。堅苦しくないんですか、と聞けば癖なのだと言った。

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何となくそれ以上は聞けず、そうですかと応えてその話は終わった。 アルトシエルと旅を始めて暫く経って、気づいたことがある。この人は確かに注意力散漫で屡々厄介事を引き起こすトラブルメーカー(本人曰く、冒険者体質だそうだ)だが、それらを補って余りある良い所もあるということ。

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例えば、人一倍心の機微に敏感だ。 誰かを思いやる気持ちが強い。視野が広く、物事を柔軟に受け入れる思考を持っている。 自分の悩みや苦しみ、痛みを悟らせないのも上手い。明るく振る舞ってそれらを巧妙に隠す。俺はいつも後になって気づく。

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かと思えばこちらが予想しないような突然の思い付きで行動し出す。目を離すと今日のようにすぐに何かのトラブルを引き連れてくるのだ。気まずそうに、でも笑いながら〈ごめんねヘイエくん〉と言われると、何故か仕方がないと許してしまう。随分毒されたものだ。

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そしていつだってこの人は、真っ直ぐに前を見ている。目指すべき先《蒼穹》へ、ひたむきに。 見ていて厭きない。不本意ながら。 本当に、 ｢そばにいたいと思わせるのがうまい｣ 振り回されるのも悪くないと思わせる。それがこの人の魅力なのだろう。

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先輩が起きている時には口が裂けても言えないな。と、苦笑する。 夜も更けた。そろそろ俺も休まなければ。 明日もこの人との冒険が待ち受けているのだから。 (夜中にこっそり惚気るヘイエくんの話)