ゾンビ中年トラックで爆走#2 ゾンビドライブ◆1
_自治体はすぐさま事態を把握した。違法にゾンビが労働されている。してはいけないはずの、運転をしている。大切な積み荷だということも分かった。 ゾンビを作るのは死霊術師だが、ゾンビの問題を解決するのは霊コンサルタントである。 31
2016-04-08 17:15:49_クノーム市の霊コンサルタントといえば、レックウィルもその一人であり、今回の事件も彼が担当した。 ピカピカの新車の助手席に座るレックウィル。黒いスーツにはしわ一つない。恐る恐る運転席に座る助手のミレイリル。黒いスーツは色あせている。 32
2016-04-08 17:21:10「あのー、この事務所の新車、わたしが運転するんですか?」 「安全運転で頼むよ」 「わたし免許取ったばっかりなんですけど!」 「大丈夫、信頼しているよ」 レックウィルはにやりと笑って、中折れ帽を傾ける。ミレイリルは完全に硬直した顔で、エンジンを入れた。 33
2016-04-08 17:25:58「やっぱり運転代わっていただけますか……?」 真っ青な顔で助手席を見るミレイリル。 「うーん、となると、君がゾンビと交渉をしてもらうことになるね」 「うう……頑張ります」 彼女はゆっくりとアクセルを踏み、蒸気式乗用車を発進させた。 34
2016-04-08 17:33:46_黄色く、丸っこい車がゆっくり安全運転で赤煉瓦の街並みを進む。ダッシュボードの電信機が先程からカチカチと信号を受信していた。 トラックの行き先を自治体の対策本部から送ってもらっているのだ。レックウィルは信号を聞いて場所を推測し、ナビを行う。 35
2016-04-08 17:39:34_トラックはさっきからランダムに道を進んでいるようだった。レックウィルたちの車は、その行き先を先回りするように移動した。法則性も分かってきた。トラックは走りやすい道を選んでいる。土地勘のあるレックウィルには、簡単に行き先を予測できた。 36
2016-04-08 17:44:21「いいかい、ミレイリル。トラックの蒸気エンジンは大型で、時速100キロは出せる。街中でも60キロは出ているはずだ。この新車のエンジンは、乗用車用で、頑張っても時速50キロだ。普通にカーチェイスしたら、永遠に追いつけない」 「一体どうするんです!?」 37
2016-04-08 17:51:13_レックウィルは遠く、道の先を見て言った。 「チャンスは一回。トラックの先の道に出て、トラックがこの車を追い抜かすとき、僕はトラックに飛び移る。道具があるから、安全だよ。命綱のネクタイって奴だ」 そう言ってネクタイを見せる。 38
2016-04-08 17:57:11「さ、この先の大通りでミッション開始だ。ドアミラーとバックミラーに注意して。後ろから来るトラックが見えるだろう? ポジションはトラックの右側だ」 慌てて大通りの右車線に入るミレイリル。ミラーを見ると、ゆっくりとトラックが後ろから近づく。 39
2016-04-08 18:01:20「い、いけるかなぁ……」 「大丈夫、信じているよ」 「へへ……じゃあ、いくわよー!」 トラックに向けて、幅寄せするミレイリル。レックウィルは素早くドアを開けて、ネクタイを起動した。見えない糸に導かれるように……まさに今、彼はトラックに飛び移った! 40
2016-04-08 18:06:46【用語解説】 【メートル法】 この世界には独自の単位が存在するが、オリジナルの単位を読者は全く実感できず、かといっていちいちメートル法に換算して、などと断り書きをしていたら140字に納まらない。世界共通の単位を作るという理念に近いので、この世界独自の統一単位は全てメートル法に訳す
2016-04-08 18:11:12