菊池誠氏kikumacoの小説

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あ〜る菊池誠(反緊縮)公式 @kikumaco

[恋愛小説] 「わたしが何を考えてるか当ててみて」彼女が言った。 「んー、僕のことかな」と僕。 「はずれ、違ったわ。でも、当たったことにしてあげる。だって、今はあなたのことを考えているもの」 「じゃあ、さっきは?」 「あなたとわたしのことを考えていたの。だから、はずれ」

2016-04-09 02:03:06
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[探偵小説] 「みなさん、すべての謎は解けました。犯人はこの中にいます」探偵は部屋の中を見回した。 「気づいてみれば、簡単なことでしたよ。だって、この部屋には私しかいないのですから。簡単な消去法です。犯人は私でしかありえません。では、私は誰を殺したのか」そう言って探偵はこと切れた

2016-04-09 02:14:36
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[音楽小説] 「ロックンロールっていうのはさあ、反抗的じゃなきゃだめなんだよ」ジョーが言った。 「あんたは反抗的なの?」と僕。 「ああ、俺はロックンロールの申し子だからさ。根っから反抗的だよ」 でも、僕は知ってる。ジョーは親父さんに頭が上がらないんだ。金を出してくれてるからね。

2016-04-09 02:23:35
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[メイドSF] 「お帰りなさいませ、ご主人様」いつものメイドが出迎えてくれる。ここは惑星アキハバラのメイドカフェ。 「例のオムライスね」とヘルメットを脱ぎながら僕がオーダー。 しばらくするとメイドがオムライスを運んでくる。「ご主人様もご一緒に。おいしくなあれ、萌え萌えきゅっ」

2016-04-09 02:30:45
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[猫小説] その猫が姿を見せたのは数日前。どこから来たのかはわからない。さしずめ、野良猫が縄張りを変えたってところなんだろう。 はじめは僕の姿を見るとどこかへ消えてしまったのだけど、そのうちに慣れたのか、僕が庭に出ても平気でそこにいるようになった。ただの気まぐれかもしれない。

2016-04-09 02:39:28
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[怪談] 夜、電灯をつけても必ず陰になる場所がある。覗きこんでもよく見えない。ときどきその奥からかすかな泣き声のようなものが聞こえてくる。もちろん、独り暮らしのうちに赤ん坊なんかいやしない。そのたびに覗きこんでみるけれど、ただ暗がりがあるだけだ。僕はただその泣き声と暮らし続ける

2016-04-09 02:45:18
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[百合小説] 彼女はいつももの問いたげな目であたしを見つめる。それが眩しすぎて、つい目を伏せてしまう。彼女の首に光るものに今はじめて気づいたような素振りで、あたしは口を開く。「ね、そのネックレス」 彼女は少し躊躇って、それから「これはね」と言う。「あなたに見てほしかったの」

2016-04-09 12:54:33
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[童話] あのね、きょうね、さくらぐみにあたらしいこがはいったんだ。おゆうぎのじかんにおはなししたよ。なまえがむずかしかったから、マーくんってよぶことにしたんだ。とおいところからきたんだよ。おとうさんはかためがみえないって。せんそうのせいなんだって。いっしょにおひるをたべたよ

2016-04-09 13:03:24
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[書評] 誰もが目にしていながら、気にも留めていなかった存在。本書は彼らに光を当てる。見なれたはずのこの世界が彼らの言葉によって語られる時、世界は我々に思いもよらぬ貌を見せ、それが我々の内面を逆照射する。そこに著者の企みがあるのだ。彼らが実在するのかどうか、それは本質ではない

2016-04-09 13:22:49
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[少女小説] 「今日、電車の中であのかたをお見かけしたの」由紀子からの手紙はそう始まっていた。帰り際に「帰ってから読んでね」と私に押し付けたのだ。私は手紙の続きを読む。「久しぶりでうれしかった。でも、あのかた、同じ学校の女生徒と楽しそうに話してらしたのよ」 私は便箋を取り出した

2016-04-09 13:28:14
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[倒叙アンチミステリ] 最後に探偵は読者に語りかける。「皆さん、安田を殺したのは片岡でした。トリックは今お話した通りです」そして、探偵は溜息をついた。「でもね、皆さんは片岡が安田を殺すところを見ていたはずなんだ。なぜ止めなかったんです。犯人は片岡だ。でも皆さんが共犯者なんです」

2016-04-09 13:49:48
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[ゴシック・ホラー] 風が強くなってきた。嵐が来る。暖炉に薪を足さなくちゃならないわ。待って、なにか聴こえる気がする。外よ、外で誰かが叫んでる。どうしてこんな時にあの人はわたしを残してでかけていったの。叫び声が近づいてくるのは、気のせい?あれは風の音なの?誰なの、扉を叩くのは

2016-04-09 17:50:12
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実は日本語の文章にクエスチョンマークやビックリマークを使うのが嫌い。ツイッターくらいならいいけどね。さっき、ツイッターでゴシックホラーを書いてて、クエスチョンマークを使わずになんとかできないかと考えたんだけど、結局使っちゃって、負けた気分

2016-04-09 18:56:40
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[剣と魔法] 喰われる!だが、何も起こらない。恐る恐る目を開けてみると、そこにいたのは首を切り落とされたドラゴンと剣を持つ男。 「危ないところだったな」男が振り向いて僕に声をかけた。 「礼を言うよ」と僕は答える。 「女・・だったのか」男がつぶやいた。これがレイとの出会いだった。

2016-04-09 23:34:33
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[サイバーパンク] 深く深く、どこまでも深く。薄っすら刻まれた痕跡をたどって、ひたすら潜り続ける。AIだって侵入の痕跡は残す。俺はそれを見逃さない。書き換えられたアドレス、破棄され損なったガベージ。俺はAIが通過したノードを丹念に潰していく。その先に待っているのは、お宝のデータだ

2016-04-09 23:59:17
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[吸血鬼小説] 伯爵の力強い腕で抱きしめられた。「怖がらなくていい」耳もとで彼が囁く。掌で私の首筋をなでる。「綺麗な首だ。美しい」彼の唇が首筋に近づく。私は思わず首をすくめて、避けようとしてしまった。「怖がらなくていいんだよ」伯爵がまた囁いた。 私は彼の首に歯を立てた。

2016-04-11 01:37:25
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[落語] 「てえへんだ」「何を慌ててるんだ、八っつぁん。落ち着いてお話しよ」「おいらが帰ったら、かかあが眠るように死んでたんでさあ」「それはてえへんだ」と二人は八っつあんの長屋に向かいます。「まったくお前は慌て者だね。眠るように死んでるんじゃない。死んだように眠ってるだけだ」

2016-04-11 01:47:39
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[酔いどれ小説] 俺はさあ、このくそったれな世界に、ばかやろうって言いたいわけだよ。な、わかるよな。わかるだろ。でっかいことをさあ、やろうぜ。しょぼくれてないでさあ。世界はくそったれだ。そう思うだろ。思うよな。俺はでっかいことをやりたいんだ。わかるだろ。なあ、なんとか言えよお

2016-04-12 01:37:06
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[ストーカー小説] 彼女が帰ってきた。足音でわかる。鍵を開けて、部屋にはいった。あの音は、何かを置いて、コートを脱いだんだな。バスルームのドアが開いた。湯を張る音がする。電話だ。彼女の声が聞こえる。いつもの男か。彼女が嫌がってるのがわからないのか。お前には彼女と話す資格はない。

2016-04-12 01:48:25
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[学園小説] 「なあ、相談があるんだ」帰り際に真二がやって来て言った。 「なにを改まって。変なの」とあたし。 「2組の小西さんさ、彼氏とかいるかな」 「なに、真二、小西さんが好きなんだ」自分の声がちょっと震えるのを感じる。 「いや、僕じゃなく、山下がね」 心がすっと落ち着いた。

2016-04-12 02:00:33
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[夜道小説] 夜道を歩く 自分の足音だけが響く そう、これは自分の足音だ そう自分に言い聞かせながら 自然と足早になる いくつもの自分の影が動いていく どこかの家からテレビの音が聞こえてくる 笑い声が通りすぎる 僕はただ夜を歩き続ける ただ足早に歩き続ける 風が吹いてきた

2016-05-25 02:07:21