『ツイストーリー』まとめ+

渡辺浩弐さん(@kozysan)のショートショート『ツイストーリー』のまとめ+。
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渡辺浩弐 @kozysan

そんなわけで、始めます。ツイストーリー01「サヤカの謎」今日もサヤカは平気で僕の部屋までついて来た。怖くないのと聞いたら笑っていた。今日もサヤカは裸になった。恥ずかしくないのと聞いたら黙って笑ってた。僕は今日もサヤカを絞め殺した。僕は首をかしげながら、次のサヤカを探しに出かけた。

2009-10-01 01:17:01
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー02「ひきこもりの息子」ドア越しに「なあ、いいかげんに出てこないか」と声をかけてみた。そしたら「お前が出てこい」と言い返してきやがった。さすがに切れて「ばかやろう」とどなったら「ばかやろう、ひきこもってるのはお前の方だろうが」と返ってきた。何を言ってるんだ父さんは。

2009-10-02 03:37:10
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー03「相対性理論」時計2個の時刻をぴったり合わせてから別々の飛行機に乗せる。地球を反対方向にそれぞれ一周移動させてから照合する。と、時刻が僅かにずれている。この実験で相対性理論が証明されたそうだ。私達も、もうあの頃の二人じゃない。あの日、反対方向に歩き始めたせいで。

2009-10-05 16:17:45
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー04「世界で一番短い物語、よりもさらに短い物語」その男は間抜けではなかったから、だまされなかった。その女は用心深かったから、襲われなかった。その男は賢明だったから、浮気などしなかった。その女は心優しかったから、殺したりしなかった。だから、物語は、始まらなかった……。

2009-10-05 22:42:44
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー05「しょうせつのかきかた」ひらがなだけなら、もじのしゅるいは、せいぜい、ごじゅう。それを、ひゃくよんじっこならべる。ぱたーんは、ごじゅうのひゃくよんじゅうじょうしか、ない。ぜんぶかいてみて、そのなかから、おもしろいものを、えらべばいい。これも、そうやって、かいた。

2009-10-07 01:34:50
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー06「あがり」ぼんやりと歩いている時、ふと、路上の文字に気付いた。そこに大きく「ゴール」と書いてあった。しばらく考え、理解した。今まで歩いてきた道の全ては、複雑な迷路だったのだと。その文字を踏みしめるべきかどうか決められず、僕は、いつまでもそこで、立ちすくんでいた。

2009-10-07 02:23:32
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー07「完全密室殺人事件」死ぬのが怖くて怖くてたまらなくて、僕は悩んだ。悩んで悩んで悩んだ末に、僕はとうとう、自殺することにした。食事の中に、僕に知られないように、僕は、毒を入れた。朝起きたら、僕は死んでいた。僕は急いで警察に電話して、僕が殺されています、と、伝えた。

2009-10-09 01:19:50
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー08「誤配信」メールソフトが壊れていたようだ。「実は俺、浮気してるんだ」と書いて親友に送ったつもりのメールが、なぜか妻に届いてしまっていた。妻に「別れよう」と書いたメールが愛人に、愛人に「愛してる」と書いたメールは親友に届いていた。それらの結果、全てがうまくいった。

2009-10-12 04:16:35
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー09「ノンアルコール」酒乱の夫に手を焼いた妻は、ある日、一計を案じた。酒瓶の中身を入れ替えておいたのだ。見た目も味も酒にそっくりで、アルコール分ゼロの液体と。その夜、いくら飲んでも夫は酔っぱらうことがなかった。だから、いつになく正確にナイフをふるった。妻は、死んだ。

2009-10-14 23:11:14
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー10「名探偵はコンピュータ」彼を殺した犯人は君だ。と、探偵はモニターの中から私を指さした。観念するしかなかった。さすがは超高性能AI、さすがはコンピュータ探偵。でもどうしてわかったんだと私は聞いた。探偵は答えた。消去法だ。彼が死んだ今、君は、地球最後の人間だからね。

2009-10-15 01:01:40
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー11「有限の世界」二桁になったら使える文字の数がいっこ減ってしまった。物語にナンバリングして制限文字数内で書くことの限界を早くも知ってしまった。ツイストーリー999999999999999999999999999999999回になったら本文に100文字しか使えない。

2009-10-16 02:02:52
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー12「ひきこもり歴十年」彼は疑心暗鬼になっていた。親が自分を殺そうとしている。しまいこんでいるあの箱の中に、きっと毒薬を隠している。ある日、隙をみてその箱を開けてみた。あったのはただの豆。笑いながらそれをほうばった2時間後、彼は死んだ。彼はピーナツアレルギーだった。

2009-10-16 23:45:29
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー13「モンスターペアレント」私は新米教師の胸ぐらを掴み、激しく叱責した。校長として体罰だけは見逃せない。父兄が怒鳴り込んできたら一大事だ。最近の親はうるさいのである。しかし翌日、やはり、やってきた。そのご婦人は私を指さし叫んだ。あなた、うちの子の胸ぐらを掴んだわね!

2009-10-18 23:43:09
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー14「電算男」その冴えない男は、初対面でこう切り出してきた。「僕が君と付き合える可能性は、何%ですか」あたしはこう返した「0.1%ってとこね」男はじっとあたしの顔を見て、言った。「0.1%なら、かけてみる価値がある」。あたしは言った「あら、今50%まで上がったわよ」

2009-10-21 01:36:46
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー15「双子通信」双生児の片方が死んだ瞬間、離れた場所にいても、もう片方にショック反応が出るという研究結果が出ている。これを利用して光速を超える通信が実現している。双子65億組を惑星Aと惑星Bに分けて置き、通信内容に応じて順次、殺していく。惑星Aは別名で地球とも呼ぶ。

2009-10-22 03:19:45
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー16「裏切り」ネコをかぶっているんだろうと思っていたが、つきあってみると本当に質素で清楚な娘だった。知れば知るほどいい娘で、俺は本気でほれてしまった。しかしすぐに俺は幻滅した。そして別れることにした。ひどい、ひどすぎる。こんな、俺みたいな男に体を許す女だったなんて!

2009-10-23 00:33:45
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー17「カラスと話す」カラスの知能には定評がある。ある学者が、1羽のカラスに外科的改造手術を施した。全身の筋肉を、発声装置に接続した。空を飛ぶために使っている複雑なメカニズムを、声を制御するための用途に置き換えたのだ。訓練の末、そのカラスは遂に喋った。「飛びたい」と。

2009-10-24 01:00:39
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー18「別れた女」『別れの記念に何かプレゼントするよ』『じゃあデートの回数券がいいわ』……彼女は翌日、その1枚を持ってやってきた。翌々日も。そのまた翌日も。もう面倒なので一緒に暮らすことにした。つきあってもないのに同棲してるのは世間体が悪いから、籍を入れることにした。

2009-10-27 00:44:42
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー19「元気スイッチ」ある日、自分の首筋にホクロを見つけた。指でカチッと押したら、全身に力がみなぎってきた。僕はモテるようになり、恋人ができた。しかし、すぐにふられた。数ヶ月後、町で彼女を見かけた。その首筋にホクロがあった。そのスイッチを、僕はもう押すことができない。

2009-10-27 01:01:47
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー20「長生きの家系」あなたの守護霊はひいおじいさんですとほざいた霊媒師のところに僕は父方母方合計4人の曽祖父を連れて行った。「ひいおじいちゃんはこれで全部です。一人も幽霊になんかなってないよ」と言ってやった。霊媒師は平然と答えた「どなたかの奥様が浮気したんですよ」。

2009-10-27 01:35:27
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー21「水の底から」口から激しく液体を噴き出しながら俺は意識を取り戻した。新鮮な酸素が肺を満たす。見知らぬ人々が俺を見下ろしている。皆とても巨大で、皆異様な服で身を包んでいる。ここは異国、いや異界なのだ。巨大な女の一人が、俺の知らない言葉で告げた。「元気な男の子です」

2009-10-27 01:46:42
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー22「21世紀の女王様」 『世界で一番美しい女は誰かしら』鏡にそう聞いたのは遠い昔。今は魔法はいらない。検索すれば、いいから。やってみた。ほら、やっぱり出てきた。あたしの顔が。顔写真が。あたしの日記が。「世界で一番美しい女は誰かしら」毎日そればかり書いてるブログが。

2009-10-30 03:15:06
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー23「それぞれの用途」君のカミソリは良く切れると夫が言った。ごめん勝手に借りちゃったよと。私はそれを夫のものと思いこんでいた。里帰りして戻ってきたらバスルームに置いてあったのだ。改めてよく見ると女用だ。見知らぬ女の企みに私は感心した。早速それを持ち夫の背後に立った。

2009-11-03 20:51:54
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー24「無駄」「お祈りなんか無駄だよ、おばあさん。酒飲んだって無駄だよ、お兄さん。泣いたって無駄だよ、お嬢さん。全ては無駄なんだ。どうせ皆いつかは必ず死ぬ。なぜそれを忘れていられるんだい」周囲に無視されながら彼はしゃべり続ける。窓の下には地上の街並みが急接近している。

2009-11-03 21:35:16
渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー25「備え」食糧危機が心配になった。試しに身近な野生動物を捕まえて食べてみた。スズメ、ハト、ザリガニ…食えるじゃないか。僕はほっとした。これで生き延びることができる。念には念を入れ実験を続けた。都会にも動物は沢山いて、どれもおいしかった。カラス、ネズミ、ネコ、ニンゲ

2009-11-03 23:43:06