『ツイストーリー』まとめ+

渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー26「上っ面」あなたは私のどこが好きなのと聞かれて、考えた。そう言えば君のどこが好きかな。手足には興味がない。顔。あとおっぱい。それもつるつるした表面だけでいい。内臓とか気持ち悪いし、いらない。だからこうすることにしたんだ。おいおい、いらないってば、その金切り声も。

渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー27「クスリのリスク」睡眠薬のおかげで熟睡できるようになった。規則正しく12時に寝て6時に起きる。6時間眠りぱっちりと目が覚める。仕事にも身が入る。なのにクビを言い渡されてしまった。1日おきにサボるような奴はいらないと言われた。6時間ではなく30時間眠っていたのだ。

渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー28「裏切り」別れましょうと彼女は言った。理由を聞くと、飽きたからと、それだけ。ひどい女。遊びだったんだ。僕は本気だったのに。これからどう生きていけばいいというんだろう。僕は肩を落として夜道をとぼとぼ歩いた。そしてなんとか家に帰り着いた。最愛の女房が待っている家に。

渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー29「彼女の計画」彼女がゲーム機をプレゼントしてくれた。僕はすっかりハマってしまった。彼女が僕をほったらかしにして出かけるようになっても、どうでもよくなった。それが狙いだったのかもしれない。そして10年。僕はひきこもりになった。彼女……母は、今さら後悔してるようだ。

渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー30「最後のコンピュータ」第19世代量子コンピュータは、起動後5分で停止した。故障ではない。ある事実を証明するまでにそれだけの時間があれば十分だったのだ。「宇宙は必ず終了を迎える」という事実を。それを知ってなお生き続ける人類の方が、故障しているといえるかもしれない。

渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー31「コストパフォーマンス」画像検索で、恋人とうりふたつの娼婦を見つけた。とある街頭に立つ女だったが、交通費と一回分の料金を足しても、値段は3万円。結婚式にかかる費用の1/500だ。僕は婚約を破棄することにした。だって君、女房と500回も愛し合うわけが、ないだろう?

渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー32「通信」山にこもって10年、彼は遂にその波動を会得した。それで”神”に話しかけることができるはずだった。意識を集中している時、ふと足元の音に気付いた。一匹の蟻が全身を震わせ、ぁぁぁと人の声に似た音を立てていた。ぁぁぁぁぃぅぇぉ。彼はその蟻を足で潰し、山を下りた。

渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー33「バレンタインデーの翌日」彼の顔がチョコレート色になっていた。イラっとしながらキスしてみたらやっぱり甘い。誰にもらったチョコよ? 舌を入れたら唇がどろどろ溶け出した。叫ぼうとするその口をアタシは一気に食べ尽くした。鼻を食べ目を食べそのまま全身食べ尽くしてやった!

渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー34「20 x5のラブレター」嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌いいいい嫌いいいいいいいいいいいいい嫌いいいい嫌嫌嫌嫌嫌嫌いいいいいいい嫌いいいいいいいいい嫌いいいいいいいい嫌い嫌嫌いいいい嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌いいいい嫌嫌いいいいいいい嫌いい…ちょっと離れてみたほうがいいかな。

渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー35「血液型占い」恋人に「血液型占いなんて信じない」って言われて、驚いた。「僕が何型か最初に聞いたじゃん。O型としか付き合えないって」「O型どうしの子なら絶対O型だから安心なの」どういうことかわからなくて黙っていたら彼女は続けた。「だってO型なんだもんわたしの旦那」

渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー36「確率論的選択」マンガ家になれる確率は、そして、ヒット作を出して億を稼げる確率は、計算してみると、それまでにかかる費用で宝くじを買って1億円以上を当てる確率の方が、高いのだった。だから僕は専門学校をやめて、宝くじを買った。そして1億円当てた。めでたし、めでたし。

渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー37「完全犯罪のすすめ」完全犯罪のコツは、待つことだ。感情に流されて慌てて行動したりしてはいけない。きっとチャンスは訪れる。奴が一人で無防備になる時が。俺は体を鍛えながらひたすら待った。そして遂に彼を殺すことに成功した。教えてあげよう。凶器は「寿命」死因は「老衰」。

渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー38「綺麗好き」もう! あたしがどんだけ几帳面な女か、わかってないわね! !　またこんなに散らかして。今日という今日は我慢の限界だわ。どうしてやろうかしら……ああ、もうどうすることもできないんだった。あたしは手に拳銃を握っていた。散らかったものは、彼の脳みそだった。

渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー39「診察」「体がだるくて」と男は言った。「ただの食い過ぎだよデブ」と医者は答えた。驚きながら男が「頭も痛いんです」と言うと「飲みすぎなんだよこのアル中野郎」そう言って医者は立ち上がった。「死ね、クズ」医者は仕事に向かった。甲斐性なしの夫を相手している暇はないのだ。

渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー40「捕鯨問題」鯨肉って人間の肉の味するわよね。と、彼女。だから欧米人は嫌がるんだな鯨食べること、と、僕。じゃあ欧米人って人を食べたことあるってことじゃん、あははきもいわー。ところでこの鯨肉ほんとにおいしいね、今どきよく手に入ったね　…どこで買ったの?　うふふ内緒。

渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー41「ファザコンVSロリコン」彼女のことが大好きだから、ファザコンだと聞いて嬉しかった。母親にうりふたつの彼女は、自分の父親とそっくりな人を好きになって結婚して、その結果、自分に良く似た娘を産むだろう。彼女が年老いたら、僕はその娘のことを好きになればいいってわけだ。

渡辺浩弐 @kozysan

ツイストーリー42「夏の終わり」終電。窓から一匹のセミが飛び込んできて、床に落ちた。初老のサラリーマンがそれを拾い上げ、スーツの内ポケットにしまった。しばらくするとそこからジジジジ…と鳴き声。サラリーマンはおもむろにセミを取り出すと、耳に当てた。「もしもし。今年はもう、終了です」

渡辺浩弐 @kozysan

ちょうど10年前に、最初のノベライブ(@ニコ生)で書いた超短編小説↓ 「気がつくと俺は東京タワーのてっぺんに立っていた。しかも全裸。落ちたら即死だ。いったい誰がこんな完全犯罪を仕掛けたのか。強い風で体が揺れる。もうだめだ。その時思い出した。俺は鳥だった。俺は飛び立った」

渡辺浩弐 @kozysan

ちょうど10年前に、最初のノベライブ(@イベント)で書いた超短編小説↓ 「ちょっと待ってと彼女は言った。嫌いなのかと僕。嫌いじゃないわただ暗くなるまで待ってほしいのと、彼女。僕は待った。なかなか暗くならなかった。僕は凍死した。彼女は北極に住んでいた。白夜の時期だった」