「この孤独な景色を与えたまえ」　～Twitter百合小説～

秋野ソラ @akinosora_

#高原の花二輪　～Twitter百合小説～ - Togetterまとめ togetter.com/li/964790 @togetter_jpから/ 蝉川夏哉先生とみかみてれん先生の力作をご覧あれ。 #narou

森田季節🥕１２月「スライム倒して３００年」３冊発売します！ @moritakisetsu

今日の夜ぐらいに書こうと思ったら、先に蝉川さん書いてるやん！

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やっぱり、なろう出身の人の速度感はすごいな。

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余裕あったら夜に百合小説、ツイッターでアップします。

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割と病んでる系百合ＳＳ　「この孤独な景色を与えたまえ」　書いた人　森田季節 小説ツイートは合計２９回です。だいたい一分おきのツイートです。一時間もすれば静かになるはずなんで、百合嫌いな人一時的にフォロー外してください。

森田季節🥕１２月「スライム倒して３００年」３冊発売します！ @moritakisetsu

①夜の何が厭わしいかといえば、暗いことではなく、寒さが身に刺し込んでくることだ。こちらはじっとしているだけなのに、この化け物は忍び寄ってくる。それで心を自然と憂鬱にさせる。使用人の私ですらそうなのだから、別棟で一人、ベッドで眠ったままのお嬢様はたいそうつらいことだろう。

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②この屋敷の一族はみんな薄情だ。お嬢様がご病気になられて、政略結婚の道具に使えないとわかると、伝染病でもないのに日もろくに当たらないところに追いやってしまった。屋敷でお嬢様に生きてほしいと願っているのは、きっと使用人の私だけだ。

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③壁にかかる時計が、別棟に行く時間を告げていた。いけない。少し遅刻している。それだけでお嬢様はずいぶんと不安になるだろう。

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④私は庭を静かに抜けて、別棟に向かう。夜の庭園を歩くと、いつも自分が死神になったかのような気分になる。それは、そこまで不快な想像ではなかった。どんなものであれ、支配する側にまわるというのは楽しいことだ。

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⑤ドアを開けると、すぐにお嬢様と目が合った。きっとずっと、私が来ることを待っていたのだろう。 「お待たせいたしました」 「もう、このまま殺されるのかと思ったわ」 「お戯れを。さあ、夜の処方ですよ」 処方と言うと、お嬢様は私を咎めるようににらんだ。

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⑥「そうね。キスなんて作業のようなものね」 「幸い、少女病のキスに恋愛感情の有無は関係ありませんので。そうでなければ、お嬢様はとっくに暗い土の底です」 お嬢様は少女病という奇病を患っている。名前の通り、少女しか発症しないこの病気は美しい女のキスで病気の進行を抑えることができる。

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⑦これでは自分を美しいと言っているようなものだけれど、どのみち大半の女はそんな役割などやろうとはしない。名家であるこの家にはほかにも美しい女はいるはずだけれど、少女病がうつらないという保証もないということで、使用人の私がやされているというわけだ。

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⑧「一日二回のキスさえ守っていれば、お嬢様はまだまだ長生きできますよ。そう気落ちなさらないでください。貴族の家に嫁ぐ話は難しいかもしれませんが、それだけが人生の楽しみではありません」 私は持ってきた水差しを机に置いて、古いほうをプレートに載せながら、言った。

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⑨「ねえ、あなた」 お嬢様は使用人風情の私の名前を決して呼ばない。おかげで私も自分の名前を忘れてしまいそうだ。 「はい、お嬢様、なんでございましょうか？」 「私、暇だから少女病について調べたの。特定の角の生えたウサギの肉を食べると、体に免疫不全が起こるもの――というもののようね」

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⑩「そういう説もございますね。なぜ、それが若い女性にしか起こらないのかはよくわかっていませんが」 「でもね、不思議なの。角の生えたウサギはこのあたりで暮らしている種ではないわ。だから、私が口に入れることもありえないはず」

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１１「原因のわからない発症もあるようですし、あまり深くお考えにならないほうがいいですよ。それに、一度かかれば治ることはないのですから」 少し言葉が意地悪なものになってしまったかと後悔した。 「ねえ、あなたに尋ねたいのだけど」 「はい、どのようなことでしょうか？」

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１２「あなた。角の生えたウサギを私に食べさせたんじゃない？」 悪を暴かんとばかりにお嬢様は強く美しい瞳をしていた。 「あなたは食事当番の日もあったわね。食材の買い付けもしていた。あなたなら私の料理に角の生えたウサギを入れることだってできるわ」

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１３「いったい、どうしてそんなことをお考えになられたんですか？」 「あなたが私に懸想していることを知っていたからよ！」 私はお嬢様の肌に久しぶりに血の赤がのぞくことに安堵した。そのきっかけになるのが私なら悪者になるのもいいと思った。

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１４「私が伯爵家の子息に嫁ぐことがあなたは嫌だったのよ。だから、あなたは私を少女病にした。この病気なら婚約は破談になるし、私がすぐに死ぬこともない。そうでしょう？」

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１５しばらく私はお嬢様を観察していた。彼女の亜麻色の髪はいつもの青白い顔とは違って、今も輝いている。その髪が彼女の養分を吸い取っているようだった。今年で十六になるのに、もっと幼く見えた。その才気と体が上手くかみ合わさっていない。 だからこそ、私はこの人がいとおしい。

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１６「どうしたのよ？　何か言いなさいよ。あなたが献身な使用人のふりをしている悪魔なのはお見通しなのよ」 「はい、そのとおりです」 今更、しらをきる必要もない。 「私はお嬢様をご病気にいたしました。私がお嬢様に触れるのに、最も効果的な方法だと思いましたので」

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１７　罪の意識も顔に出さずにそう言った私のことがお嬢様は信じられないらしかった。いよいよ、私をにらんだ。 「本当に悪魔だったなんて！　この家も私も呪われていたのね！」