ホロリ番外編×幸せの集う庭

はち公。 @funkastic_8er

26 「･･･だってさっき 他の人とキスしてたでしょ？ そんな唇で私にキスしないで」 え･･･ 『み、見てたん？』 小さく頷く 『や･･･あれはその･･･付き合いで！』 「･･･付き合いでキスする」 『あれは向こうから･･･』 #幸せの集う庭

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27 普段お前は 愚痴も弱音も言わないから 問い詰められる この空気に俺は慣れてなくて 『だってしゃーないやん！ 医局長から頼まれてんで！？ 断ったらお先真っ暗やねん！』 思わず開き直る そんな俺をお前は 悲しそうに見つめて 「出世･･･ね」 #幸せの集う庭

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28 「大事だよね。 だって･･･仕事だもん」 そう呟くと立ち上がって お前は玄関に向かった 『ちょ･･･待ってや･･･』 追いかけようとする俺 それをお前はまた拒否する 「あのね･･･隆平 私はあなたをずっと 応援したいし支えたい ･･･でも」 #幸せの集う庭

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29 「都合のいい どうでもいい子になるのは嫌。 あなたの将来の邪魔になったり 適当な存在に成り下がるくらいなら あなたから･･･離れるわ」 ･･･そう告げるとお前は 部屋を出ていって 『そんな･･･』 残された俺には 引き止める言葉が浮かばなかった #幸せの集う庭

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30 その場にしゃがみこんだ俺には 言い訳ばかり浮かぶ 『しゃあないやんか！ 医局長に目ぇつけられたら どうなるか！！ 今まで文句言わんかったくせに･･･ なんやねん今更！！』 イライラして 手近にあったお前のスリッパを 思いっきり投げつける #幸せの集う庭

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31 ･･･だけど 何も返って来なくて 部屋は静まり返るばかり 『なんやねん･･･』 どんなに忙しくても この部屋に帰ってきて お前がいたら笑顔がそこにあって お前がいなくても メモとかお前の作り置いてくれた ご飯があって そんな当たり前に甘えて #幸せの集う庭

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32 『なんやねん･･･』 甘えて 依存してたのは俺の方 なのに 『最低やんか･･･俺』 忙しいとか 付き合いとかで 『お前に･･･謝ってもなかった』 このままはあかん そう思った次の瞬間 『待って･･･』 俺は部屋を飛び出した #幸せの集う庭

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33 追いかけて 全力ダッシュして･･･ 大通りの向こうにお前を見つける 『待って！！！』 大声で呼びかけると 「隆平･･･」 泣き顔のお前が こっちを向いた 「隆平･･･」 お前はもう 泣きまくったせいかフラフラで でもこっちに向かってくる #幸せの集う庭

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34 それを迎えに行こうと 俺も向かうのだけど･･･ 視界に飛び込む 黄色点滅の信号 『おい･･･』 見えてへんのか？ お前の目の前の信号 もう赤になるで 『あかん･･･』 車ももう動き出す 『あかん！来たらあかん！！』 だけどその声は遅くて #幸せの集う庭

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35 「隆平･･･っ」 俺しか見えないお前は そのまま･･･ 『あかん！あかんて！！！』 車の波の中に ────────ﾄﾞﾝ 『あ･･･』 吸い込まれて 『ああ･･･』 俺は 『ああああああ！！！』 ────発狂した #幸せの集う庭

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36 途絶えた車の流れの間に お前を中心にした 人だかりができる それを少し離れた所で 崩れ落ちた俺が眺めていた･･･ ［救急車！！誰か！！！］ わかってるけど 手が震えて動かへん ［誰か･･･お医者様いないの！！？］ 俺･･･医者･･･です #幸せの集う庭

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37 なのに 合間から見える赤色に 身体が動かなくて 声も出なくて ただただ 崩れ落ちた･･･ #幸せの集う庭

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38 ［･･･先生！丸山先生！］ 『へ･･･』 ［起きてください！ 休憩終わりですよ！！］ 『あ･･･はい。すんません』 目を擦ってあたりを見回す ･･･あ 現在や 『夢･･･か』 アイツと話したせいで 思い出してもうた 『気分悪･･･』 #幸せの集う庭

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39 ･･･あの後お前は 運ばれた病院で一命はとりとめた だけど 初期対応の遅れのせいか 致命的な怪我でも無かったのに 今も眠ったまま･･･ ［心因性のものかもしれませんね］ そう言った 無表情な医者の台詞が 胸を刺した ･･･心因性 俺･･･か #幸せの集う庭

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40 その日以来俺は 不甲斐ない自分が嫌で ますます仕事に没頭した 仕事に打ち込むほど 小バエが集ってきて また見合いだの･･･ 可愛そうだから 付き合ってあげるだの･･･ 切れ間ない雑音にうんざりしてた頃 ────アイツに出会った #幸せの集う庭

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41 担当した女性の娘さん 母親思いで どこか･･･ 俺と同じ目をしている その理由が 俺と同じで 最愛の人と一緒に居られないから だと知った時･･･ この子なら 共感しあえる この子なら お互い都合よく 世間からの隠れ蓑になれる そう思った #幸せの集う庭

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42 午後の仕事も終わり 珍しくほぼ定時で病院を後にする 『なんしよ･･･』 ぼんやり考えながら なんとなく アイツが好きだった マンション近くのカフェに立ち寄った 座った座席からは あの日 あの男が 事故に遭った場所が見える #幸せの集う庭

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43 俺とアイツ 寂しそうな目が似てる そう思ってたけど 『恋人が事故るとか･･･ そんな所まで似るとは 思わへんかったな』 まぁ･･･あの男は目覚めて お前はまだ 眠ったままやけど 《アンタが的確な 処置をせんかったら･･･》 あの男の言葉 #幸せの集う庭

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44 『一応俺も･･･成長したんかな』 うっすら笑って 空いた手のひらを見つめた ────♪♪ 次の瞬間 スマホが鳴って ゆっくりとディスプレイを見ると 『あ･･･』 アイツからの着信 応答して 『なんすか？主演女優？』 皮肉を込めて挨拶する #幸せの集う庭

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45 《え？主演女優？》 『www 何でもない。こっちの事。 で？久しぶりに何？』 《あ･･･うん 今日、章ちゃん 仕事場行ったみたいで･･･ 診察時間中にごめんね？》 ────ふーん 旦那の不備を謝る すっかり出来た妻やな･･･ #幸せの集う庭

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46 『そんだけ？なら切るで･･･』 そのまま会話は終わると思った だけど 《あ、ちょっと待って 少し･･･話せる？》 『･･･ん？』 なんやろ･･･ 《前から気になってたの･･･ ほら、隠れ蓑って 私の事言ったでしょ？》 『あぁ･･･』 #幸せの集う庭

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47 《あれ聞いて何から隠れてるのか 気になってたけど･･･ 今日章ちゃんから隆平の様子聞いて なんとなくわかった気が･･･》 『へぇ？どんな風に？』 《私にとって 章ちゃんがそうだったように 誰か最愛の人が別にいて だけどその人と一緒にいられなくて》 #幸せの集う庭

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48 『ほんとはゆっくり その人だけを思いたいのに 世間がそれを邪魔するから･･･ だから 似たような相手見つけて 隠れ蓑にしたのかな･･･なんて』 ────心が 冷や汗かいた気がした･･･ やっぱりな 似てるとは思ったんよ だけどこうもバレるかねw #幸せの集う庭

はち公。 @funkastic_8er

49 《ねぇ･･･隆平？》 『･･･はーい？』 《ひとつ･･･ 余計なお世話焼いていい？》 『なんやろwww』 コイツとの会話に こんな緊張するの初めてかも･･･ 《周りからの雑音から 隠れてるフリして 大事な隆平の気持ちも 隠して見失ってない？》 #幸せの集う庭

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50 俺の･･･気持ち？ 《隆平がそうまでして隠して 守りたい何かを･･･ 根掘り葉掘り聞こうとは思わないし 私には聞く権利ないと思う でも･･･隆平が抱えてる感情 隠しすぎて誰にも言えなくて いつか暴発するんじゃないか･･･ そんな不安がよぎるよ》 #幸せの集う庭