【神は空名なれど…③】日本教では神が被造物／「空名の神といえども敬わなければいけないことは知っている」という絶対に相手を受け入れない非寛容な言葉を「寛容で理解を示す態度だ」と信じ切っている日本人

山本七平bot @yamamoto7hei

①【空名の神といえども……】「日本人は全員が無神論者である」が「日本教は宗教でありうる」のは、一言にしていえば、日本教では「人間は被造物」でなく「神が被造物」であり、かつ「空名」だからです。 そこで必要に応じていつでも「神という空名」を創出できます。＜『日本教について』

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②従って『心学奥の桟』の著者はいとも平然と 「木を刻んでそれを親とすればこれがすなわち親である。紙に画いてそれを主君とすれば、これがすなわち主君である。たとえ紙とか木という形がなくとも、空に向ってその名を呼べばその神を来たらせることができる」 と、はっきりのべております。

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③これにつづいてさらに、彼は、非常に面白いことを言っております。 次に少し引用してみましょう。 全文を訳すとかえってわからなくなりますので、摘記抄訳します。

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④【だがここにもう一つ別の道理がある。よくよく考うべきことである。 今ここに死んだ父母があるとする。 その子孫にとっては父母の霊であるから、これをあなどれば不敬の罪をまぬかれない。 だが他人にとっては父母でも何でもないのだから、これをあなどっても何の罪ともなる筈がない。】

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⑤【そのように、この父母が「神」であるゆえんは、ただその一家の子孫にとってのみであって、他人は全く関係がない。 この点でも「神」とは「理」が本質であることを知るべきである。 そうであるから、仏教徒の神は仏教徒にとってのみ神であって、神道にとっては神でない。】

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⑥【神道の神は神道の者にとってのみ神であって、仏教徒にとっては神でない。 既に神でないのだから、どうして何かの「応」があるであろうか。 従って神道の者が仏教の神を敬わず、仏教徒か神道の神を敬わずとも祟りがある筈がない。 私のような儒教の者にはこういった「空名の神」さえない。】

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⑦【とはいえ私達はこの神国に生まれているのだから「空名の神といえども敬わなければいけない」。また仏教など…学ぶべきものではないけれども、現代はこの教えが盛んで先祖代々…これを尊び信じて大きな益をうけてきたのだから、例え「空名の仏」といえども、どうしてこれを敬わないで良いだろうか】

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⑧何という驚くべき言葉でしょうか。 そして日本人は何と変らないことでしょう。 西欧的教養の豊かな知識人と宗教について話してごらんなさい。 以上の一文と全く同じことを言いますから。

山本七平bot @yamamoto7hei

⑨違うといえば「父母が『神』であるゆえんは、ただその一家の子孫にとってのみ」というところを「イエス・キリストが『神』であるゆえんは、ただキリスト教徒にとってのみ」といいかえるぐらいでしょう。

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⑩そして「私のような知識人には、こういった『空名の神』さえないが、私達は二十世紀という西欧化の時代に生まれているのだから、また彼らが『尊び信じて大きな益をうけてきた』のは事実なのだから、彼らの神がたとえ『空名の神なりといえども、敬わなければいけない』ことは知っている。」

山本七平bot @yamamoto7hei

⑪「だから私はそれなりの尊敬を払っているし、それなりの評価もしている」というのでしょう。 ラジオを聞き新聞を読めば一日に十度ぐらいは、こういった言葉に出くわします。 そしてこれが「人間」としてとるべき最も立派な態度である事を日本人は『心学奥の桟』の時代から全然疑っておりません。

山本七平bot @yamamoto7hei

⑫もちろんこういった言葉は、最高の「非寛容」の言葉であり、絶対に相手を受け入れない言葉ですが、日本人は逆にこれが寛容で理解を示す態度だと信じ切っています。

山本七平bot @yamamoto7hei

⑬従って私が 「これは一つの宣言だ、すなわち『我々は徳川時代の日本教徒と同様に断固として日本教徒であり、絶対にコンヴァージョン（回心または転向）はないぞ』という決定的な妥協なき宣言だ」 といえば、（続

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⑭続＞また 「われらは無神論者なれば、われらにとって神は空名なり、されど空名としての理あり、理あれば応あり、従ってその応は認め評価する」 という一種の信仰告白だといえば、驚くのは彼ら自身でしょう。