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「放火か」全く物騒な世の中です。『燃やされたのは卒業生から寄贈された「女生徒」という絵画でした。男子生徒は一度この燃やされた絵を盗もうとしたとの証言もあります。男子生徒は容疑を否認しており、捜査は慎重に進められています』そこでテレビの電源が切れ、画面が暗くなりました。
2016-05-08 22:01:16「あぁ、よっこぉいしょ……」間の抜けた声を出して、リモコンを操作した老婆はその場を離れました。既にニュースから興味を無くしたのか、イッシンは端末に目を落としております。また、ガチャと言うものにお金を使おうか悩んでいるようです。やれやれ。見事に散財したイッシンは部屋に戻りました。
2016-05-08 22:02:02―― 夜。深夜。アプリを起動し、書き込みをしてから三日目の夜。イッシンは闇の中、目を覚ましました。特に何があったわけでもありません。イッシンはバッと振り返ると、枕を真っ先に確認します。しかしながら、枕は裏返っておりません。「……なんか、目が冴えちゃったな」安堵の息と共に呟きます。
2016-05-08 22:02:15イッシンはしばらく、ぼぅと天井を眺めていましたが、飽きたのか端末を起動しました。「変な夢だったな……」呟くイッシンの顔色は優れません。「小さい頃の夢……だった」病室に声が響きます。「田舎の歩道を歩いてて……アスファルト道で……」そこで、声が止まりました。「……あれ?」
2016-05-08 22:02:34「――あんな田舎道、俺、知らないぞ……?」首を傾げております、何か得心できないような表情です。「歩いてて、歩いて――いや、歩いてる俺と母さんが見えて……」そこでイッシンは言葉を切りました。嫌々するように首を振ると、震えながらゲームを起動します。音量も最大にして、です。
2016-05-08 22:02:51何故か不可思議な出来事が続く。不気味で、説明ができず、掴みどころがない。「恐れ」。しかしイッシンは大音量のゲームでそれを無かったものとしようとしています。しかしながらその判断は功を奏したようで、ゲームを遊びつくす頃にはすっかり落ち着いておりました。なんと単純な事でしょう。
2016-05-08 22:03:10イッシンはゲームを終えると、やや発熱した端末を枕の傍に置き、思い出したようにもういちど手を伸ばしました。そしてWhisperを起動し――「あ」不気味なアプリの事を思い出したのでしょう。イッシン自身は、ついいつもの癖で起動したようですが、ゲームで得た昂揚は見事に吹き飛んだようです。
2016-05-08 22:03:55しかし良くも悪くも高速化した端末。イッシンがアプリを中断するより早くアプリが起動してしまいました。“目”の赤と黒のアイコンが一瞬映り、イッシンは慌ててアプリを停止しました。冷や汗を拭い、イッシンは端末を枕元に放り投げ、寝る事にしたようです。
2016-05-08 22:04:19……どんよりとした空模様。恐らく、明日は雨になるでしょう。 【広がる囁き】 レイニーデビル 第二夜 了 次のアプリ更新タイミングをお待ちください。ィ……イネガい……ジジジジザザザザブヅッ
2016-05-08 22:07:14レイニーデビル第三夜 「アプリを起動しました」 利用規約:こちらへのリプライが物語に反映されます。 注意点 :次回第三夜呟き後、こちらは使用できなくなります。 遊び方 :身の回りで起こった怪現象や体験談、虚も実も織り交ぜて呟きましょう。ただし、一人一回が望ましいですね。
2016-05-10 08:22:40ぽつぽつと窓を叩くは雨の音。あゝ、やはり降り出してしまいましたか。今日はイッシンの退院日でございます。本来ならば喜ばしいと言うところ。/…
2016-05-18 01:22:21けれど彼は上の空、ぼんやりとしていました。空を覆う厚い雲、雨が窓を打つ音が病室に響きます。彼に体温を測るよう促す看護師は来ず、迎えに来る母もなく。/…
2016-05-18 01:22:48「……あ」光の無い瞳にイッシンは端末を捉えました。彼はそれに手を伸ばすと、いつもよりも緩慢な動作で電源を入れました。薄暗がりに一つの光源が生まれます。/…
2016-05-18 01:23:12語るべきことはない。ええ。語るべきことはありませんでした。あなた方には何を語っているかは分からないでしょう。間一信と言う少年は語るべきことが無い程度の少年でございました。友も少なく、やや過保護気味な母親から端末を小学生の頃から持たされました。内向的な少年でした。
2016-05-18 01:23:56外で遊ぶ同学年の子どもを眺めながらも溶け込めず、一人遊びに興じ、空想の世界に浸っておりました。とは言え、暗い子ども、と言うほどでもありません。どこにでもいる、そう、語る事が無い、という事が正しいでしょう。正しかったのでしょう。しかし、今の彼はそうではありません。彼を、語れない。
2016-05-18 01:24:15