- sweetblue83
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・・テンキアメ・・ 1. 「何で雨やねん!」 珍しく不機嫌な声。 「せっかく休みやのに」 「仕方ないよ」 「いろいろやりたいことあってんて」 「雨だとできないの?」 「気持ちが滅入る。太陽ないと元気出-へん」 「そっか…」 (今日の雨、キレイだよ)
2016-04-15 21:06:102. 章ちゃんは、 太陽が好き。夏が好き。身体を動かすことが好きで、激しい音楽も好き。 わたしは、 雨が好き。冬が好き。静かに過ごすのが好きで、クラシックが好き。 違うことが多すぎて 何となく好きなものが言えずにいる。 「もおー今日はゴロゴロしよ」 大きなため息。
2016-04-15 21:07:183. 「…早く雨上がるといいね」 ** 「なぁ、ビール飲んでええ?」 「お昼だよ?」 「することないもん」 「あ、お昼、カフェにいかない?素敵なとこあるんだ」 「どんなとこー?」 「えと…、章ちゃんは好きかどうかわかんないけど」 ちょっと弱気になる。
2016-04-15 21:07:434. 「なぁんそれ。あ、俺もおもしろいとこ見つけてん。今度晴れた日行こ。今日はビール!」 「ん(笑)」 時々。わたしの胸がチクっとするのは、 (わたしなんかといて楽しいのかな) って思うから。 一人で弱って、ヤな想像ばかりしちゃって。不安になるのも事実。
2016-04-15 21:08:255. 「ちょっと出かけてくる」 ビールを傍において、ギターに夢中になる背中に声をかけた。 ** わたしの大好きなカフェ。大きな窓があって雨の日にはいっぱいに雨景色が楽しめる。雨音をBGMに、キラキラ輝く滴を見ながら何時間でも過ごせるお気に入りの場所。
2016-04-15 21:08:586. (やっぱり章ちゃんには退屈な場所かも) あ、何時っ?!慌ててカフェを出た。 ** 「遅い」 「!!」 カフェを出た角から聞こえる声。 「どうしたの?!」 今来たんじゃない。服も靴も濡れてる。
2016-04-15 21:09:457. 「どうしたのちゃうやん。“ちょっと”言うてなかなか帰って来-へんからやろ!」 「探してくれたの?」 ブスッとして目を逸らす。 「入ってくれば良かったのに」 「邪魔やろ、俺がおったら」 「なんやねん。楽しそうにさ。あんな嬉しそうな、気持ちよさそうな顔して」
2016-04-15 21:10:428. 「章ちゃん」 「誘ってくれてもええやんか。」 「…ごめん」 傘に雨音が響く。 ** 「今度の日曜空けとって」 「え?」 「これ」 行こ、差し出されたチケット。 ピアノリサイタル。 「行きたかったんやろ」 テレビで流れるたびにずっと見てた。
2016-04-15 21:12:359. 「章ちゃん興味ある?」 「ない。せやけどお前が興味あることに興味ある」 「え、」 「その日も雨降ったらええなぁ」 「章ちゃん」 「雨降りの中クラシック聞きながら静かに過ごす休日。ええやんか」 「知ってたの?」 「当たり前やろ、付き合うてんねんから」
2016-04-15 21:13:3810. そっぽを向いた頬が赤い? 「章ちゃん…」 ** 「なぁ、ええやんか。違うことばっかりでも」 こっちも向いた章ちゃんはちょっと本気で怒ってた。 「俺は、いろんな“違うとこ”知りたい。あぁ、こんなふうに感じんねやって、もっとわかりたい。せやのに。お前はさ、」
2016-04-15 21:15:2211. 怒ってた瞳がちょっと寂しげになった。 「なんでもかんでもおんなじやったら、“俺一人”でええんちゃう?」 「もうちょっと、伝えようとしてや」 ** 「雨に濡れんの嫌いやけど、こーゆー濡れ方ならええな」 わたしの傘をたたんで、章ちゃんの傘に二人で入る。
2016-04-15 22:44:4212. 「わたし、毎日雨でもいい」 「イヤや!絶対イヤ。太陽キラキラしてるほうがええ! 「疲れるもん。雨の日のほうが落ち着く」 「頭痛なる!」 「天気雨なら?」 「ギリで許す」 「じゃあ、そうしよう(笑)」
2016-04-15 22:45:0313. 「ちょ待って」 誰もいない公園。 立ち止まった章ちゃんは傘を低く下げた。 pic.twitter.com/VH8EPzmT0w
2016-04-15 22:46:41