忍殺二次創作【ビー・ケアフル、ザット・ジュエル・ハッド・スティング】
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ネオサイタマのサラリマンたちは今日もグンタイアリめいてビルが見下ろす路上を往く。誰も彼もが倦み疲れた表情を浮かべ、そこには隣を歩く同類を気にする余裕すらない。「アッ」たとえば突如道に屈み込んだオーエルめいた女に、手を貸すような物好きもいないのだ。1 #4215tk
2016-05-09 21:16:40「ハァ、ハァ……!」女は胸を押さえ、荒い息を吐く。持病だろうか?しかし、手を差し伸べるものはいない。わずかに良心を残した通行人でさえ、下手に触りでもしたらセクシャル・ハラスメントの疑惑をかけられるのではないかという恐れから彼女を見捨てていく。2 #4215tk
2016-05-09 21:18:13おおブッダよ、寝ているのですか?このまま女を打ち捨て、さして珍しくもない三面記事のマテリアルにしてしまうのか?……現実は少しだけ優しかった。「あの、ダイジョブですか?」うずくまる女に声をかけたのは、一人のオイランであった。「スイマセン……スイマセン」3 #4215tk
2016-05-09 21:22:26オーエルめいた女は、小声で謝罪の言葉をつぶやく。オイランは慈愛の笑みを浮かべ、彼女のそばに屈み込んだ。「立てますか?手を貸しましょうか?」「ハァ……ハァ。スイマセン。ええ」女がオイランの肩に手をかける。……その目がぎらりと輝いた。目撃者はいない。4 #4215tk
2016-05-09 21:24:03「アッ!?」女の手が触れた途端、オイランの体がわずかに跳ね上がった。崩れ落ちそうになるその体を、立ち上がった女が支える。「スイマセン。アリガトゴザイマス」その声には、もう先ほどの苦しげな様子はない。「近くの裏路地まで連れてってください」「……ハイ」5 #4215tk
2016-05-09 21:28:41オイランがジョルリめいて頷き、女に肩を貸しながら人波を横切る。それを怪訝に思う者はいない。誰も彼もが自分のことにかかりきりだからだ。「きっと人の多さに当たったんです」「ハイ」「だから、ひとけのないところに行けば治りますよ……フィ、ヒ」「ハイ」6 #4215tk
2016-05-09 21:32:05オイランの目は虚ろだ。支えられている女が笑った。とても先ほどの弱者とは思えない、邪悪極まりない笑み。「あなたも疲れています。ですよね?」「ハイ」「スイマセン。フィヒ、ヒ!奥まで行ったら楽しみましょう……医療行為!」「ハイ」二人の姿が路地裏へと消えた。7 #4215tk
2016-05-09 21:36:15路地裏。ヤクザやヨタモノの溜まり場。粋がった無軌道大学生でさえ足を踏み入れぬ荒涼とした場所。そこに一つの影がある……否、二つだ。大の字に倒れた。その上に覆いかぶさり、前後するもう一つの影。ナムアミダブツ!あからさまなファック・アンド・サヨナラ案件なのだ!9 #4215tk
2016-05-09 21:40:18「ハァー……スイマセン。本当。けどしかたないんです」オイランを前後していた女が、恍惚の笑みを浮かべる。「生きている以上、こうした衝動からは逃げられない……わかってくれますよね?私は生きていますし、あなたオイランですから。しかたない」なんたる身勝手!10 #4215tk
2016-05-09 21:44:46大きく肩をついていた女が、前後を再開しようとした。そのとき!「ザッケンナコラー!」「スッゾオラー!」突如路地裏に響き渡るヤクザスラング!「……ア?」惚けたように顔を上げる女の周囲を、双子めいてそっくりなヤクザたちが取り囲む!「テメッコラー!」11 #4215tk
2016-05-09 21:48:08状況がわからぬように首をかしげる女からタタミ五枚分ほど離れた位置。黒いヤクザスーツ姿の男たちを掻き分け、白のヤクザスーツを着込んだグレーターヤクザが現れる。「ザッケンナコラースッゾコラードグサレッガー……!テメエ、オヤブンの女になにしてやがる!」12 #4215tk
2016-05-09 21:52:16「オヤブンの……?」女はぼんやりとつぶやき、ぐったりと倒れた女を見た。そしてグレーターヤクザに視線を戻し、へらへらと笑う。「ア、ハ。スイマセン。この人、もう私のものですから。あきらめてください」グレーターヤクザの顔が朱に染まる!「ヤッチマエーッ!」13 #4215tk
2016-05-09 21:56:30「「「スッゾコラーッ!」」」BLAMBLAMBLAMBLAM!一糸乱れぬ一斉射撃!インガオホー!?「……ハーアア」しかし女は自分めがけ飛来する弾丸の雨に、つまらなさそうに溜息をついただけだった。「イヤーッ!」その姿が、地に倒れたオイランとともに搔き消える!14 #4215tk
2016-05-09 22:01:20「アイエッ!?」グレーターヤクザは目を疑った。どこに消えた?「「アバーッ!?」」そこに響くヤクザの悲鳴!そちらへ視線をやった彼は目を剥く。いつの間にかエメラルド色のニンジャ装束に身を包んだ女が、二人のヤクザに両の掌を押し付けているではないか!?15 #4215tk
2016-05-09 22:04:08昆虫めいて無感情に犠牲者を一瞥した女は手を離す。その手首から目を凝らさねば見えぬほど細い針が伸びていた。サイバネティクスではない。生体に近い、バイオサイバネニードル。その先端から透明な液体が滴り落ちた。「ハイ、やっちゃってください」「「アバーッ!」」16 #4215tk
2016-05-09 22:08:05