若冲展待機列SFという新ジャンルが爆誕 #若冲展SF

尻P(野尻抱介) @nojiri_h

「この列はもっと古いの。宇宙が始まってすぐにできたの」 関東平野はすでにブラックアウトしており、夜空に星が戻っていた。少女は北天を指差し、その手は南へと弧を描き、天の川を示した。「知ってた？ 星々のさだめは待つこと。そしてオリオン腕が待機列だってこと」 #若冲展SF

TheCheshireCat @laughingtat

質量の限界を超えて人を飲み込み続けた都美術館からは一切の音も光も観測されなくなり、そしてゆっくりと始まった回転は周囲のものを呑み込みながら速度をあげてゆく。 そしてこここそが若冲という宇宙の始まりとなるのだ。 #若冲展SF

CHA @chi_summer

荒れ果てた大地には、草一つ生えていない。瓦礫の山は、昔ここに巨大な建造物があったことを忍ばせる。人々は花を愛で、美術館で作品を見ることを楽しみとする、そんな豊かな時代があったのだ。『若冲展待機列之碑』#若冲展SF

かぞまぐ＠"佐伯武久"と呼ばれた子 @kazomag

あの日、彼女は若冲展へ出かけていった… 寝ている俺を慮ったのか、何も告げずに始発電車で旅立った… 「着いたよ。もう沢山並んでる」 これが最後のメールだった… いよいよ今年は東京五輪 日本人選手初の100mファイナリストの勇姿を彼女は今も上野で見ているのだろうか… #若冲展SF

Tuscan Blue @tuscanblue2015

「私が若冲展の神だ」と白鳳は羽を広げた。 「いや私こそが神だ」と孔雀も羽を広げた。 二柱は争ったのち、人間に決めさせることにした。 「試練に耐え、若冲展を最もこいねがった者に決めさせよう」 このようにして行列は生まれた…#若冲展SF pic.twitter.com/ZpLWDNIQgG

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梢子 @show_c0

そののち、「決意と覚悟をもって並ぶこと」をジャクチュウと言うようになり、今では「この間メッカに巡礼に言ったんだって？」「どれくらいジャクチューした？」「うーん、84時間くらいかな」「まだまだジャクチュー甘いな！」のように、世界中で使われている。#若冲展SF

Ryojin Sasaki @ryojin_s

人々はドットのように、美術館の表にも裏にも列をなしていた。涙をにじませて列を離れる者もいた。人々は赤や緑、白や黄土色の服を着ていた。そう、行列こそが絵画だったのだ。升目描き、裏彩色、筋目描きを駆使した鶏の姿。一幅の傑作が、五月の上野公園に広がっていた。 #若冲展SF

風のハルキゲニア @hkazano

ねえ、あの群鶏図の鶏、一羽増えてると思わない？あの絵の動物も。虫も。あれは長蛇の列に恐れをなして断念した人の思い。見たいという渇望、見られなかった無念が凝り固まって若冲になっていくの。こうして若冲は人々の怨念を取り込んでいくの。だから若冲の絵はあんなに華麗なのよ。#若冲展SF

シギサワカヤ @ktos_tw

#若冲展SF 日が暮れて周囲は彩度を失った。逢魔が時だからか、そこかしこに蠢くものがある。目を凝らせばそれらは全て絵である気もした。私が何であるのかの自信などとうに無いし、いつから此処にいたのも皆目解らぬ。手慰みに傍らの虎を撫でる。愛嬌のある目が此方を見た。我々は、紙の上のーー。

Ryojin Sasaki @ryojin_s

「これは一体何の列です」 「若冲のサイン会よ」 「なぜ鶏を連れているのですか」 「これにサインをしてもらうの」 「美術館から煙が出ているのはどうしてですか」 「若冲は彼岸にいるでしょう、だから」 「だから」 「あれは美術館ではなくて、火葬場よ」 　#若冲展SF

Ryojin Sasaki @ryojin_s

少年は奇怪な装いの男にさらわれた。飛脚のように速い籠で、妙な国へと連れていかれた。彼はそこで素晴らしい鶏の絵を見た。男は少年を虎や象のいる園へも連れて行った。聞くとその国は上野といい、江戸の行く末だという。少年は帰ると絵師になり、若冲と名乗った。 #若冲展SF

Ryojin Sasaki @ryojin_s

待ち時間、本でも読もうか。 江戸時代、京都の絵師のもとでポージングモデルを務めた後、出島から欧州へ。アントワープ郊外の農村で出会ったのは、大聖堂の絵を見たいと願う一人の少年だった。近世を駆け抜けるヒャッケン・Z・パトラッシュ新作『我輩は犬である』 #若冲展SF