時限式殺害トリック

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めいあん @meian___

@_10______ 「わかった」僕はそこで閃いた。「審判役もやるから、勝ったほうが今日の夕食を好きに決められるというのはどう?」「おっ!気合入るね、賛成だ」「腕によりをかけるよ。負けたほうはもちろん、買い出しに付き合ってもらうからね」「手合わせの後の買い出しは避けたいなあ」

2016-06-05 00:04:04
めいあん @meian___

@_10______ 朝早くの浜辺は誰もいない。「一本勝負で、先に膝か掌、背中がついたほうが負け。いいよね」「おう」「ええ」「――始め」僕が上げた手を下すと同時に、斧の柄同士が鈍い音を立ててぶつかり合う。膠着したのち互いに後ろに跳び、そこからはまるで演舞のような斧のひらめき。

2016-06-05 00:06:15
めいあん @meian___

@_10______ 二人とも長く斧一本を扱ってきただけある。僕の予想だにしない斬り込み方や躱し方ばかりが次々と繰り出されていく。僕はそれを食い入るように見つめた。時間の経過も忘れ始めたころ、がいん、と、一際大きな金属音がして、空を舞って寄せる波に落ちたのはパラドさんの斧だった。

2016-06-05 00:08:05
めいあん @meian___

@_10______ 「……重たい!」パラドさんはそのまま体を白い砂浜に仰向けに投げだした。「勝負あり!」「ゲロルトの野郎、いい金属を使ったとは言ったけど、これは防具を軽くしないと動けないわよ……」「私があんたに勝つことがあるなんてねえ……」「謙遜しないで。それはそれよ」

2016-06-05 00:10:06
めいあん @meian___

@_10______ 肩で息をする二人を眺めながら、僕は一生懸命さっきの手合わせを忘れないように頭の中で巡らせていた。強さとは鮮やかさで、美しさなのだとしみじみと思った。「よし。じゃあ今晩はあれだな、フリカデレとカイザーゼンメルがいいなあ」「開き直った好物押しだ」「ハハハ」

2016-06-05 00:12:07
めいあん @meian___

@_10______ #05 パラドさんとタンドさんとぼく

2016-06-05 00:13:05
noon🐥 @noonworks

人数が増えるととたんに遅筆になることがばれた pic.twitter.com/3NfZ4TF9NK

2016-06-05 18:01:43
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めいあん @meian___

@_10______ 「ヌゥーッ」ケンジがミニくじテンダーのスクラッチを削りながら唸った。「評判がよかったようだな。俺もできたてのフリカデレを食いたかったが……む、789だな」「お、よかったじゃない。あとケンジはアレキサンダー討伐しに行ってたでしょ」「ヌゥーッ……689か」

2016-06-06 00:00:08
めいあん @meian___

@_10______ 本気で悔しそうにするケンジを見て僕はけらけら笑った。ゴールドソーサーのキャンペーンは絶好調といってよく、休日明けの夜にもかかわらず受付は人でごった返していた。いつもの大道芸人を囲む人垣も見える。「そういえば近々、ポイントの景品が増えると聞いたな。123」

2016-06-06 00:02:13
めいあん @meian___

@_10______ 「何が来るんだろう。というか当てすぎ」「たまの得だ。料理の乗った帽子でなければ何でもいいが」「あはは」3枚削った分のポイントを受けとり、カウンターで軽食を注文する。「しかし。フラットブレッドも焼けなかったテンが他人に料理を振る舞うとは」

2016-06-06 00:04:04
めいあん @meian___

@_10______ 「失礼な。僕だってやるときはやるの」「それは済まなかった。炭と化したエフトステーキのことが忘れられん。具がどろどろのワイン煮もあったか」「もう!」ケンジの頬を強くつねって仕返しをした。しかし確かにおぼつかなかった料理は、この1年と少しで見違えるようになった。

2016-06-06 00:06:12
めいあん @meian___

@_10______ 「そう言われると、大事な人っていう原動力はすごいね」「急にどうした」ケンジがラビットパイを頬張りながらこちらを見た。「いや、ケンジも、好きな人のために力を尽くすからこそ冒険者稼業が続けられたのかなって」……露骨に明後日の方向を見る彼は、大の男と思えなかった。

2016-06-06 00:08:05
めいあん @meian___

@_10______ 「あ、テンちゃん」さる弓術士へ届け物をした帰りだった。「こんばんは、テンさん。こちらにいるのは珍しいですね」黒檀商店街で会ったのはナズナくんとミコスキさんだった。「二人とも随分大荷物だね」「ロウェナ女史が秘伝書をあらためたようで、試しに依頼に使う材料を」

2016-06-07 00:00:07
めいあん @meian___

@_10______ 「そうか、またしばらく賑やかになるね」「僕も今からナズナくんに何を贈るか、新しい家具のどれを注文するか楽しみで」「さらっと恥ずかしいことを言わないでくださいよ……」ナズナくんは抱えた手荷物に顔を埋めた。「ちょっと重そう、運ぶの手伝うよ」

2016-06-07 00:02:12
めいあん @meian___

@_10______ ナズナくんとミコスキさんの荷物を少しずつ取り、一緒にラベンダーベッドに向かう。最近ここにみんな自分の家を持ち始めたのもあって、道も覚えたし風景も見慣れてきた。冴えた大輪の熱帯睡蓮が咲き並んでいる。世話が要らなくて助かると園芸ギルドの庭師は言っていた。

2016-06-07 00:04:05
めいあん @meian___

@_10______ エーテライトで飛んで数分。ルピナスの咲く庭が美しいので、二人の家はすぐ分かる。「ありがとう、テンちゃん」「いや、これくらい気にしないで」邪魔をしないように軽く挨拶して別れた。先輩カップルの暮らしぶりはどれも理想的だ。「家、欲しいかもなあ……。」

2016-06-07 00:06:09
めいあん @meian___

@_10______ #07 ナズナくんとミコスキさんとぼく

2016-06-07 00:07:07