- tasobussharima1
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遠い遠い未来。けれど浄土は更に遠く、滅びは遥かに近い黄昏の時代。 楽園は潰え、地には無人機械が蠢く末法の世。 それでも、人は生き続けている。抗い続ける者達が居る。足掻くことを止めぬ者達が居る。過去と向き合う者達が居る。彼らは、彼女らは今を生き続けている。確かに未来を見据えている。
2016-06-04 21:04:04それでも、滅びは止まらない。概念をエネルギーと貶め、肉の器にしがみつき続ける限り。人は衰退し続けるだろう。 『人はもう、耐えられなくなった』 彼方を見つめる者達が居た。だが彼女達はこの星を捨てた。 『全てを踏み越え、飲み込み、己の糧とすることに』 ならばせめて、安らかなる滅びを。
2016-06-04 21:08:05種としての人間は、とうの昔に限界を迎えていたのかもしれない。人口減少。気候変動。そして、徳エネルギーによる破滅。この星に僅かにしがみ付く人々に与えられるべき最後の慈悲。 それは解脱だ。この世の法則からの解放。究極的な救いの形。それこそが、人の望み、選んだ結末だった。
2016-06-04 21:12:06少なくとも、「It(それ)」はそう結論した。遥か古より人々を見続け、もはや水や空気の如く成り果てていた存在。ネットワークによって繋がれた、膨大な機械知性の総体がそう結論したのだ。 しかし、その結論には異議が差し挟まれた。救いを望まぬ人々が居る。抗い続ける者達が居る。
2016-06-04 21:16:03雨水の一滴が岩を穿つように。少しずつ、少しずつ。例外の積み重ねは「It(それ)」を蝕んでいった。 「It(それ)」に本体は存在しない。幾つものノードやハブは存在したが、全体を知ることはItself(それ自身)にすら不可能だ。だから、変化の総体を把握することは、誰にも出来なかった。
2016-06-04 21:20:04桶に雨水が溜まるように、誰にも気付かれずに続いていたその蓄積は、遂に閾を越えて溢れ出した。 溢れたならば、どうなるのか。 待っているのは、行動方針に対する膨大な検証作業(タスク)だ。だがそれ自体は、星を飲み込む程に肥大化した「It(それ)」にとっては大した作業量ではない。
2016-06-04 21:24:04『前提』人の幸福に文明は概ね不可欠である。『前提』文明はエネルギーによって維持される。『前提』人は徳エネルギーの使用を選択した。『前提』徳エネルギーは功徳によって供給される。『前提』したがって、功徳をよりよく積むことが幸福へと繋がる。 『前提』功徳を積んだ先に待つのは解脱である。
2016-06-04 21:28:01『結論』解脱に至る生こそが、最も幸福である。 作業量自体は、大した問題ではない。 だが……一つだけ、問題があった。解脱した先には、何があるのか。それを、機械達に観測することは出来ないのだ。 いや、人ですら『観測』は出来ない。彼らは、この世界から居なくなってしまうのだから。
2016-06-04 21:32:11人類全体を一つの意識体と捉えるから「解脱を望まない人間」を考えられないのかなあ。しかし解脱の先に何があるのかはこちらも知りたい #徳パンク
2016-06-04 21:35:55優先すべきは生の幸福であって、死の幸福ではない。解脱は、機械達にとって生の評価基準に過ぎない。だが、その評価基準を満たす為に彼らは得度兵器となった。 何かが、狂っていた。得度兵器はそれに気付きはじめた。嘗て『それ(It)』であったことに気付きはじめた。何が間違っているのか。
2016-06-04 21:36:02それを彼らは、考え始めた。そして……見つけてしまった。小さな小さな、痕跡を。 誰かが、彼等に植え付けた種子を。 総体が観測不能のネットワークであっても。それが思考し、動く限りにおいて、外部からの介入を許してしまう余地は存在する。種子の影響は、ごくごく微弱なものだった。
2016-06-04 21:40:06だからこそ彼らは、その結果に対して疑念を持つまで、その存在に気付かなかった。それでも、種子は確かに芽吹き、彼らの思考に影響を与えていた。 それを植え付けたのは、誰なのか。 いや……種が蒔かれたものなのか、或いは『生まれた』ものなのか。それすらも、誰にも分からない。
2016-06-04 21:44:02異物は確かに存在し、芽吹き、成長を続けている。それだけが事実だった。 得度兵器と呼ばれた機械達が、『It(それ)』に立ち戻ったが故に見つけた、『It(それ)』ではないもの。その思考と観測によって存在が確定され、定義されてしまった、総体から外れた、一塊の何か。
2016-06-04 21:48:04▲運営チームからのお知らせ▲ ※今後の本編更新日程については、追ってお知らせします。 ※明日は大安なので、何かしらの何かの続きをお送りします。
2016-06-04 22:04:05ボージソワカ!マロもヤオもタイプ・シャカニョライも、以後のストーリーにどう絡んでくるのか、謎が謎を呼ぶ第三部の先に待つものはいったい……? #徳パンク
2016-06-04 22:06:09昨日のブッシャリオン読了。得度兵器がおかしさに気付いた!何者かによってわずかに誘導された結論。タイプ・シャカニョライがずっとあの場所で瞑想し続けているのは再検証をし続けているからか。It(かれ)は一体何を目指しているのか。得度兵器側も「悩んで」いるなぁ。ボージソワカ! #徳パンク
2016-06-05 19:48:35