亡国の王子Kr×軍神K

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あい@如月 @nanl_hshs

かりゅうは走っていた。 長くきりとの屋敷のごく狭い許された範囲で暮らしていたため走り方すら忘れかけていて何度も足がもつれ、転んであちこち擦りむいたがそれでも走った。 きりとさん、きりとさん、きりとさん…

2016-06-30 20:22:44
あい@如月 @nanl_hshs

かりゅうを走らせたのは複雑な感情ではなかった。 損得勘定の末、逃げたところで遊び歩く以外ロクに王宮から出た事もなく生活力のない自分では野垂れ死ぬのが関の山と悟った訳でもなく、突然降って湧いた自由の可能性に怖気づいた訳でもない。 ただ、きりとに会いたい。 その一心からであった

2016-06-30 22:07:24
あい@如月 @nanl_hshs

逃げられるかも知れないという状況がかりゅうを外の世界と向き合わせたのだろうか。 この世界のどこにも、もう自分が帰る国も待つ人も存在しないという現実… かりゅうは元来後ろ向きな性格であった。どこかへ行きさえすればきっと何かがどうにかなるなどという無鉄砲な希望を抱くことはできなかった

2016-06-30 22:17:07
あい@如月 @nanl_hshs

ひとりぼっちの世界… 以前のかりゅうなら或いは何も感じなかったかも知れない。 しかしきりとと過ごす日々で、褒められ受け入れられる。承認される喜びを知ってしまったかりゅうにとって孤独な世界は地獄でしかなかった。 早くきりとさんに会いたい。 きっと「おかえり」って撫でてくれる

2016-06-30 22:23:27
あい@如月 @nanl_hshs

息を切らして帰ってきたかりゅうを見て門衛は驚いた様子だった。 かりゅうを迎え入れた後、2人の門衛の内の片方が笑いながら手を差し出し、もう片方が悔しそうに賭けていたコイン数枚を渡したがそんな光景は屋敷に駆け込んだかりゅうの目には映らなかった。 一刻も早く、きりとの部屋へ

2016-06-30 22:29:20
あい@如月 @nanl_hshs

かりゅうがきりとの部屋に駆け込んだ時、タケオは既に帰った後だった。 干からびた食事はまだ下げられておらず、部屋には灯りもともされていなかった。 きりとは窓辺に佇んでいた。背後から夕陽に照らされたきりとの表情はかりゅうから窺い知る事はできない。 「き、きりとさん…っただいま!!」

2016-06-30 22:34:07
あい@如月 @nanl_hshs

黙ったままきりとが歩み寄ってくる。 もしかして遅くなってしまった事を咎められるだろうか… 一抹の不安がよぎり身を硬くするかりゅうに訪れたのは 柔らかい抱擁だった。 「おかえり、かりゅう」 優しく抱き寄せられ、髪を撫でられる。 あぁ、これが求めていたものだ!!

2016-06-30 22:37:21
あい@如月 @nanl_hshs

「ただいま…きりとさん、ただいま…ただいま」 きりとの背に腕を回し、キツく抱きしめてただいまと繰り返すかりゅうの髪をきりとはいつまでも撫でていた。 この手だ。この手さえあればオレはこの先どんな扱いをされたって生きていける。

2016-06-30 22:41:04
あい@如月 @nanl_hshs

あらん限りの力でぎゅうぎゅうと抱きしめてくるかりゅうの肩を軽く叩き、顔を上げさせるきりと。 その頬を両手で包み込むと、柔らかく微笑んで 唇を重ねた。 何をされたか理解したかりゅうは、今度こそボロボロと涙を溢れさせて、愛する人に口付けを返した。

2016-06-30 22:46:25
あい@如月 @nanl_hshs

夕闇に紛れてひとつに重なったシルエットがベッドにもつれ込み 夜は更けていった。

2016-06-30 22:47:42
あい@如月 @nanl_hshs

よっしゃ終わったぞ!! え?ギル?? あいつなら多分かりゅうを追っかけてかりゅきりの部屋の前まできてシャウアプフみたいに泣き喚いてるよヾ(:3ノシヾ)ノシ 明日からは何かを失ったゲッソリ顔で生きてくんだよ!! かりゅきりはこれからめちゃくちゃセクロスするんだよヾ(:3ノシヾ)ノシ

2016-06-30 22:51:11