1部　7章　4節【レムリア計画第一号】

えみゅう提督 @emyuteitoku

姫が住まう土地では、その場所に属する物が見る見るうちに修復される。少女はそれに疑問を持たない、自分の一挙一動に意義を見出すことなく、あるがままに振舞うだけだ。彼女は目的のドアを精いっぱいの力を込めてトントンと叩く。「マスター！電話だよ！レムリアからだって！」　25

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会議室と表札がかけられたドアの奥で休憩していたバックマスターが目を覚ました。「レムリア…？アイリス、嘘だったらげんこつだぞ」「ほんとだよ！繋がってるから電話どーぞ！」二人は扉越しに会話する。マスターは電話口では見えないはずの服装を整え、軍帽を深くかぶりドアを静かに開けた。　26

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「アイリス、もう一度言うが…」「ほんとにレムリア！私達のこと、忘れてなかったんだよ！」マスターは必死に感情を押し殺した。目の前の無邪気で純粋な思いを傷つけないように、必死に耐えた。マスターの思いを知らずにアイリスと呼ばれた少女はマスターに黒電話を差し出す。「はい、どーぞ！」　27

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その黒電話はコードが千切れどこにも接続されていない。だが、本来の機能は関係ない、姫が願うだけで機能などいくらでも取り繕える。マスターは黒電話を受け取り、受話器を耳に当てた。「こちらウナラスカ泊地…」『あ、聞こえる？相変わらず疲れた声してるねー』受話器から軽快な声が響く。　28

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『いやはや、また声が聞けて嬉しいよ』「要件を言え、10秒後に切る。簡潔に伝えろ」マスターはレムリアに時間を与えない。レムリアもマスターが十分な時間を許さないことを承知していた。『じゃ、簡潔に。中部海域中枢に通信を繋いでくれ。戦艦棲姫の研究がしたい』「深海側の利益は何だ」　29

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『海軍本土防衛網通信の全記録、見合うだろう？ハーハーハァ！』「時間だ」マスターは受話器を置き通信を切った。電話を抱えるアイリスがマスターを見上げる。「レムリアなんて言ってた？」「ああ、皆の心配をしていたよ。アイリスは元気か、とな」マスターは嘘をついた、それが彼女の癖だ。　30

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アイリスは小さく幼いが、心はよく成長していた。彼女はすぐに嘘だと気づいて、騙されたふりをする。「そっか…元気だよって言っておいて！」アイリスは黒電話をマスターに渡しぺたぺたと床を蹴って会議室から去った。マスターは眉を下げ眉間に皺を作る。「今度は何をするつもりだ、ハルカ…」　31

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【レムリア計画第一号　了】

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北方中枢ウナラスカ泊地副官ファラガット 深海棲艦の発生と同時期から戦い続けている【バックマスター】の異名を持つ防衛戦、反攻戦、後方支援の天才。まだ幼い長官のアイリス・ダッチハーバーに代わり北方深海棲艦の指揮を執る。北方艦娘前線の幌筵島に妹が所属している事を日頃から心配している。

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階級は、元帥への推薦を拒否したことで上級大将に封じられている。かつては敗北主義者であったが、気紛れで助けた人間に戦争論を吹き込まれてから、仲間を守るために指揮を執ることを決意する。現在はその助けた人間に対し強い敵意を抱いている。 pic.twitter.com/R8IvfGL6Zh

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泊地防衛施設ヒュウガ 幌筵島に根を張る旧時代の深海棲艦。現代の常識では考えられない様々な現象を自在に引き起こす。多彩な戦略を取れる航空戦艦に近いとしてヒュウガと呼ばれる。島に属する物ならば全てが自由、陣地内ならばあらゆる願いが叶う、【姫】の名に恥じない江見悠隷下最高戦力。

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――が、強い衝撃を受けた上に、お勉強と称して江見が渡した特撮作品の影響で色々と変。言葉選びがテキストバグ。挙動はアレだが、姫級の機能は損なわれていないため、居るだけで圧倒的な戦術的優位性をもたらす。六甲第一位。異名は『十支の日向』。 pic.twitter.com/7Z9S92cp9c

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