ラストバレット―Keep under―『尊厳―Dignity―』

貧富の差が拡大した近未来。 選ばれた富裕層は自らの安全と権利を守るため『オーバー』と呼ばれる特区を形成。 それ以外の地区を『アンダー』と呼び、管理するようになる――。 続きを読む
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ニンジャカタナ! @NJkatana

それでは、ただ今の時間より@NJkatanaにて、自作『ラストバレット』のツイッター投稿を行います!しばしの間TLをお借り致しますが、どうかラジオやテレビの流し見感覚でお楽しみ頂ければ幸いです!

2016-07-03 16:57:39
ニンジャカタナ! @NJkatana

連載は@NJkatanaにて行いますが、冒頭数ツイートのみ、宣伝のため作者アカウントでも投稿致します。連載はそのまま上記アカウントにて継続しますので、興味のある方はぜひフォロー、リスト入りなどしてご覧頂ければ幸いです!

2016-07-03 16:59:47
ニンジャカタナ! @NJkatana

それでは、本日も宜しくお願いします! 本作の既存連載分は下記アドレスより全て読めますので、ご興味あればぜひご覧下さいませーー! kakuyomu.jp/works/11773540…

2016-07-03 17:00:40
ニンジャカタナ! @NJkatana

ラストバレット―Keep under― 尊厳 ―Dignity― ――――――――――――――◆ pic.twitter.com/MMoyCdM0k4

2016-07-03 17:01:39
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「それでは、本日の定例会議は以上です、会長」 「うむ――」 薄暗い円形ホール中央。ネイビーのスーツに身を包んだ、白髪交じりの壮年男性が立ち上がる。 その深紅に輝く眼光は鋭く、虹彩の奥では燃えるような輝きが燻る。彼が口を開く寸前、その場にいる全ての人物が、皆一様に息を止めた。

2016-07-03 17:03:11
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「皆さんのお力添えのお陰で、我が社は今期も増収増益。本業の軍事部門に関してはギルド側とシェアを食い合ったものの、横ばいを維持しました。不安要素としては、エネミー、及びアークエネミーの活動の活発化ですが、それら不安要素への対抗策も、近日中に発表を行う予定です」

2016-07-03 17:05:01
ニンジャカタナ! @NJkatana

しんと静まりかえった薄闇の中、スポットライトを浴び、朗々と響き渡る男の声。その様子を微動だにせず見守る社員達――。 ここは、ギルドと双璧を成す民間軍事企業『DDS<ディグニティ・ディフェンス・サービス>社』の本社ビル。そして今、全社員の前で企業業績を語る人物こそ――。

2016-07-03 17:07:04
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――ジェラルド・ディグニティ。 現DDS会長にして、かつては世界最強の傭兵として、全世界のパワーバランスをたった一人で意のままにした男――。 動きの鈍い国家群に代わり、個人の傭兵と、彼らを雇用する民間軍事企業が台頭する切欠となったのも、全てはこの男の活躍によるところが大きい。

2016-07-03 17:08:33
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「――今後とも、社の発展と、オーバー・アンダー双方の安全を守るため、まい進して頂きたい」 一斉に巻き起こる拍手。ジェラルドは片手を上げ、秘書から手渡された報告書に目を通すと、そのまま一礼してホールを後にする。 拍手は続き、ジェラルドが退出してもなお、止むことは無かった――。

2016-07-03 17:10:22
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「――会長。AE27、ノエル・ウェルネスが、ギルドの傭兵に討伐されました」 「懐かしい名だ……たしか、身体能力の増強に長けた少年だったか」 ホールを抜けた先、無機質な通路の半ば、上役用のエレベーターへと入る二人。秘書はタブレット端末を片手に、ジェラルドに対し報告を行う。

2016-07-03 17:14:01
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アークエネミーの活動活発化はギルドも知るところのはず。こうして姿を現わしたとなれば、彼らも警戒を強化すると思われます」 ジェラルドの秘書を務める黒髪の女性。彼女は端末に別のデータを表示すると、ジェラルドの言葉を待つ。 「我々の計画に変更を加える必要は無い」 「承知しました」

2016-07-03 17:15:30
ニンジャカタナ! @NJkatana

エレベーターが目的の階につく。 320階。扉の開いた先には「LAB」の文字――。 純白で塗り込められた、白一色の世界。影すら存在しないそのフロアに、ジェラルドと秘書の歩く足音だけが響く。 「随分と正確に再現したものだ。これも例のデータからか?」 見渡し、ジェラルドが尋ねる。

2016-07-03 17:17:19
ニンジャカタナ! @NJkatana

「はい。破損していたとはいえ、あのデータが回収できたのは僥倖でした」  柔らかな笑みを浮かべて答える秘書の女性。彼女の持つ端末には、この場所と同様の白い空間が映し出されていた。 「さて――見せて貰おう」 「では、正面をご覧下さい」 操作に呼応し、壁面に光が投射される。

2016-07-03 17:19:19
ニンジャカタナ! @NJkatana

『妹を助けたいんだろ?』 投射される光。その先に映し出される、対峙する二人――。 『三日前に倒れた――目を覚まさない』 『当然だ。お前の妹はこの施設以外では長く生きられない。そうなるように、俺達が処置を施した』 黒いロングコートを着た男が、笑みを浮かべてそう言った――。

2016-07-03 17:21:04
ニンジャカタナ! @NJkatana

『お前らが――エアをッ!』 少年の青い瞳。その瞳孔が開く。少年の激しい怒りに、それを眺めるジェラルド達の周囲までが震え、大気が張り詰める。 『教えろ。妹を――エアを助ける方法をッ!』 『俺を倒せたら、な。一度、お前とは本気で殺し合ってみたかった――』

2016-07-03 17:22:41
ニンジャカタナ! @NJkatana

戦いが始まる。それはお互いに譲れないものを得るための、守るための戦いだった。一人は自身の存在意義を。もう一人は命よりも大切な人のため。 二人のその戦いは、一瞬でありながら、同時に永遠だった。 「素晴らしい。よくぞここまで」 ジェラルドが感嘆の声を上げる。

2016-07-03 17:24:21
ニンジャカタナ! @NJkatana

銃声が響く。それは二度。 少年の銃口から、二発の弾丸が放たれる。弾丸は完全な直列配置を成して加速。 音速を超え、一発目の弾丸が男の放った弾丸に直撃。双方はね飛ばされ虚空に消える。そして残った弾丸は、ロングコートの男を正確無比に撃ち抜いていた――。 「凄い――」 秘書が呟く。

2016-07-03 17:26:41
ニンジャカタナ! @NJkatana

見上げる男。見下ろす少年。勝負は、決した。 『――あんたが、教えてくれたことだ』  少年は死の間際にある男を見下ろして言った。 『リロード前の弾丸は二発残せ――』  その言葉を聞いたロングコートの男は笑みを浮かべ、何かを伝えるようにその手を動かそうとする。だが――。

2016-07-03 17:28:13
ニンジャカタナ! @NJkatana

「見事な腕だ。約束通り、君には君の妹を助ける方法を教えよう」 純白の世界に立つ少年の耳に、ジェラルドの声が響いた。少年の前に倒れていたはずの男の姿は――いつの間にか跡形もなく消えていた――。 『誰だ』 射貫くような少年の声。重傷にも関わらず、その闘争心は微塵も衰えていない。

2016-07-03 17:29:56
ニンジャカタナ! @NJkatana

「私はジェラルド・ディグニティ。安心したまえ。この施設の者とは元々無関係だ」 ジェラルドの言葉に少年は無言。気配は張り詰めたまま――。 「では、信じて貰えるよう、我々から先に情報を渡そう。君の妹、エアを救うには彼女と同様の血液を輸血する必要がある。君の血を使うといい」

2016-07-03 17:31:58
ニンジャカタナ! @NJkatana

「信用できないのも無理はない。実は、君に手伝って欲しいことがある。我々のビジネスに協力して欲しい」 『エアを助ける方法はもうわかった。俺が断ると言ったら?』 少年のその言葉に、ジェラルドは笑う。 「――言わない。君は、そういう男だ」 ジェラルドはどこか懐かしむように言った。

2016-07-03 17:33:58
ニンジャカタナ! @NJkatana

「まずは行くと良い。君の妹が匿われている組織の元へ。返答はその後でいい」 『――礼は言わない。けど、この借りは返す』 少年はそう言うと、踵を返して元来た方向へと歩いていく。先ほどの男と同様、重傷だったはずの彼の傷は、跡形もなく消えていた――。

2016-07-03 17:39:31
ニンジャカタナ! @NJkatana

「――茶番だが、良い余興だった」 ジェラルドが言う。 「以上で全てのVRシークエンスを完了しました。今後は実戦投入による実地訓練を行います」 「うむ。成果を期待している」 先ほどの戦闘での少年の体捌き、戦闘勘。それらを反芻しながら、ジェラルドは笑みを浮かべる。

2016-07-03 17:41:46
ニンジャカタナ! @NJkatana

「あの兄妹にはいつも手を焼かされる。だが、それもこれで終わる」 ジェラルドが呟く。 秘書は一礼し、退室。 再び白一色となった世界でジェラルドは嗤う。 「せいぜい偽りの記憶の中で踊るがいい。この私のためにな――」 その深紅の虹彩には、激しく燃えさかる炎の光が灯っていた――。

2016-07-03 17:42:52
ニンジャカタナ! @NJkatana

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2016-07-03 17:44:35