- J_H_kikaku
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夜――暗く、深く、どうしようもなく深く、暗い、闇があった。誰も居ない、何もいない、何も守れない。零れては消え、零れては消えていく暗く深い憧憬の中で、ただ一人だけ、そこに居た。 #JH_02
2016-07-01 21:07:35スタートラインに立つ事も無く、タツミの前に立つ事も無く――何も見えない真っ暗闇の中でただ一人遊び!…足掻いてるふりをしていただけだ。くはッ、なんっつーお笑い種だよなぁジキルちゃん?#JH_02
2016-07-01 21:15:14あぁ、うっ、ガ、ああ……違う……違う!!僕は、ただ君を……!!正義の味方に……正義の……!!美しくなんて無い、求める夢の色なんて、あの日の霧の様に暗くて良い――――ただ、ただ君が居れば、君と向き合っていれば僕は……!! #JH_02
2016-07-01 21:16:10バッカじゃねえの?テメエが向き合ってきたものも全部『嘘』なんだっつの、何も成せず、何も守れず、何も残せなかった時点で、テメエは負けて、死んで、消えてくんだよ。#JH_02
2016-07-01 21:17:55僕の視界が大きく揺れる……という表現は僕の身体に伝わる振動と痛みから弾き出される推測でしかないが――頬が痛む、どうやら相当な力で殴られたらしい、口腔に鉄の味が拡がる、温度を持たない屍の血――血? #JH_02
2016-07-01 21:24:11何も守れなかった事への代償なのだろうか――倒れた僕の首元に添えられた手から、とても大きな、しかし確実に刺すように痛みが襲ってくる。気道を潰しに来ているその力は、僕の呼吸も、言葉も、懺悔の想いすらも。まるで脆い硝子細工を砕き磨り潰すように、絞め上げられ――… #JH_02
2016-07-01 21:24:55――コイツは、コイツは一体何を見てやがる!!こんな場所に至ってまで英雄ごっこでもやってんのか、それとも俺がおかしくなってやがんのかァ!?――不意に、自身の所持する得物の存在が頭を過る。ああそうだ、コイツのナカ、ナカのナニかがとち狂いやガったんだ。ああ――!#JH_02
2016-07-01 21:27:42――服を裂いた下に見える肌色の嘘にナイフを突き立てる。テメエが、テメエがアイツを、僕をおかしくしやがった!!!――突き立てたナイフが其の門を開け、中から柘榴色の肉が、腸が、臓器が顔を出す。#JH_02
2016-07-01 21:33:31聞き慣れた声から、聞き慣れない断末魔が鼓膜を刺して、破って。五月蠅ぇ……ウルセエ……テメエがその声を出すな、テメエは、テメエは、僕で、俺は俺で!!『君』なんざもう何処にも居ねえんだよ!!!#JH_02
2016-07-01 21:33:52ああ、ごめんよ、ごめんよ、ごめんよ――本当に、本当にすまないと思っているんだ。マスターを勝利に導くのは、僕……俺……ボクの役割なのにね。そりゃあこんな風にされても仕方ないか。いや、むしろ優しすぎるくらいなのかも知れない、君は、いつも―――、 #JH_02
2016-07-01 21:35:13――ジキルの手が頬に触れる。血に塗れ、それでも変わらず貼りつく薄気味悪いその笑顔は、何処か優しくあたたかく、懐かしく、吐き気を催す程に嫌悪する、どうしようもない程の僕――俺の顔だった。#JH_02
2016-07-01 21:38:44…ぇ、……ねえ、巽。僕は君の……君の姿に憧れてい……たん……だ。何処に、何処に……ああ、良かった。其処に……いたんだね、タツミ。良かった。良かった。良かっ……た…… #JH_02
2016-07-01 21:39:21身体が、内側から少しずつ染まっていく、醜く、汚く、心地が良い。悔悛も、慙愧も、悪意もひっくり返して混ぜ込んだような薄暗い籠のナカへ堕ちていきながら…… #JH_02
2016-07-01 21:40:33……嗚呼、或いは僕にはこれくらいが一番お似合いなのかも知れないな。それでも、それでも俺は、僕は……、俺で在って欲しかった。僕が、俺を――… #JH_02
2016-07-01 21:40:40