付喪神

〆 @nr_oshi

非番で、現世に行く用事があったから午後から彷徨いてたんだ。まぁ詳細は省くが。帰り足にずぶ濡れの男に出逢ったんだ。雨は降ってない。生きても、なかった。

〆 @nr_oshi

どうした、と声を掛けたら「雨の日の帰り道、車に跳ねられて死んでしまった。大事にしていた傘を探している」と恨めしそうな声で言うんだ。探して歩いているうちに遠いところまで来てしまったと。

〆 @nr_oshi

乗りかかった船から降りることは出来ない。男に手掛かりになるものはないのかと聞けば駅名を一つ。少し遠いが行けない距離じゃない。連れて行ってやる事にした。

〆 @nr_oshi

そこは廃駅でもう使われてはなく、駅舎は殆ど朽ちていた。人がいるわけもなく、誰もいない構内へと入ると小さなベンチに傘が一本置いてあった。

〆 @nr_oshi

「あぁ、見つけた」男はその一言だけ残して傘に歩みよりながら消えていった。廃駅には一本の傘と俺だけが取り残されて、…仕方ないから持ってきた。関わった以上報告しねぇといけねぇからな。

〆 @nr_oshi

もしかしたら大事にされてた傘には付喪神が宿ってたのかもしれねぇな。

〆 @nr_oshi

俺たちも付喪神なら良かったのにな。

〆 @nr_oshi

ひらはら、かえるぞ。