サイバー・スレイヤー【五殺目・アブラクサス】後編

今更になってBGMを入れ忘れたことに気付く
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劉度 @arther456

「イヤーッ!」バック転の果てに2人が辿り着いたのは、枯れたサクラの林だった。「イヤーッ!」アブラクサスが枯れ木に手を掲げると、サクラが根本から折れ、宙に浮いた。ネンリキだ!「イヤーッ!」砕けたサクラの幹が、ニンジャスレイヤーを狙う!アブナイ!「イヤーッ!」キックで迎撃!24

2016-08-24 21:42:02
劉度 @arther456

サクラの幹は次々とニンジャスレイヤーに降り注ぐ!ニンジャスレイヤーはそれらを躱し、叩き壊し、アブラクサスへ近づいていく!「いつまでつまらぬ芸を続けるつもりだ、アブラクサス=サン」「まだ続けるさ。イヤーッ!」アブラクサスが叫ぶと、散らばった木の破片が不吉な桜色に輝いた。25

2016-08-24 21:45:02
劉度 @arther456

「ナラクを殺したジツを見よ!」無数の細かなサクラの破片がニンジャスレイヤーの体に張り付いていく!「ヌウッ、これは……!」ニンジャスレイヤーの体が拘束される!ここぞとばかりに、アブラクサスはカタナを構え、走った!「イィィヤァァーー!」心臓めがけ、紫の刃を繰り出す!26

2016-08-24 21:48:01
劉度 @arther456

ギィンッ!甲高い音は、切っ先をブレザーが受け止めたことを表していた。サクラの薄い左腕を強引に動かし、刃を防いだのだ。「……ッ!?」動揺。それはサクラ・エンハンスメントに通じ、ニンジャスレイヤーを拘束する破片が緩んだ。「イヤーッ!」死神がサクラを振り払った!27

2016-08-24 21:51:10
劉度 @arther456

「なんだ、それは……!?」アブラクサスは絶句した。サクラのフーリンカザン。かつてナラク・ニンジャを屠った連携。自身の最速の突き。死の流れに呑まれていたはずののニンジャスレイヤーからの反撃は、道理に合わなかった。「一体何をした、ニンジャスレイヤー・サン!」28

2016-08-24 21:54:05
劉度 @arther456

「イヤーッ!」「グワーッ!」返答はカラテだった。「イヤーッ!」「グワーッ!」後に続くのもカラテだった。「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」29

2016-08-24 21:57:16
劉度 @arther456

「ガ、グッ……」度重なるカラテの果てに、アブラクサスはよろめきながら後ずさった。サクラは力を失い、カタナのエンハンス光も消えていた。「バカな……そんなバカな……」鼻と口から血を流しながら、なおもアブラクサスは呻く。「俺は何も間違っていない……負ける道理が無い!」30

2016-08-24 22:00:25
劉度 @arther456

「間違える?そこまで甘いイクサは、私もオヌシもしてはおらぬ」肩の傷から流れる血は夥しく、ニンジャスレイヤーの呼吸は乱れている。無視できぬダメージだ。「何も間違えていなくとも、我々のような理不尽が時に道理を殺す。オヌシもニンジャならば、その事に気付くべきであったな」31

2016-08-24 22:04:01
劉度 @arther456

「そんなはずはない!」アブラクサスは折れたカタナを顔の横で構える。「理不尽では太刀打ちできなかったから、道理に沿った。なのに今度は理不尽に打ち倒されるだと?ふざけるな……!」ニンジャスレイヤーは、無言でカラテを構えた。32

2016-08-24 22:06:03
劉度 @arther456

「そんなことが……あってたまるかぁぁぁ!」アブラクサスが駆ける。負傷を感じさせない速さ。一瞬で間合いが詰まる。ニンジャスレイヤーは斬撃をブレーザーでいなし、カウンターの左アッパーを放つ!「イヤーッ!」アブラクサスは体を捩らせ回避!その勢いで再度斬撃を繰り出す!33

2016-08-24 22:09:03
劉度 @arther456

「イヤーッ!」この斬撃もニンジャスレイヤーは防御、しかし!「イヤーッ!」「グワーッ!」曲芸じみた空中回し蹴りがニンジャスレイヤーの側頭部に命中!視界がぶれ、ニンジャスレイヤーの意識が飛びかける。暗くなった視界の中で、アブラクサスがトドメの突きを構える。34

2016-08-24 22:13:10
劉度 @arther456

(……べし)ソーマト・リコールの中で声が聞こえる。(……すべし)それはナラク・ニンジャの呼び声か。いや、ナラクは今、フジキドの中にいない。(殺すべし!)すなわちそれは、フジキド自身の声。ニンジャへの確たる憎悪が、彼を奮い立たせる!「ニンジャ、殺すべし!」35

2016-08-24 22:15:05
劉度 @arther456

己の叫びで視界が晴れた。眼前に迫った刃。避けるには間に合わない。恐らく、避けた後の斬撃の変化も、相手は用意している。ニンジャスレイヤーのニューロンが加速し、打開策を編み出す。「イヤーッ!」両手でアブラクサスの刃を挟み止める!シラハドリ・アーツだ!36

2016-08-24 22:18:04
劉度 @arther456

それでも、アブラクサスの踏み込みは恐るべきスピードだった。もし切っ先が折れていなければ、カタナはニンジャスレイヤーの額を穿ち、爆発四散せしめていただろう。「ヌウウゥーッ!」アブラクサスは悪鬼めいた形相でカタナを押し込もうとする!それに対し、ニンジャスレイヤーは腕を……引いた!37

2016-08-24 22:21:02
劉度 @arther456

「イヤーッ!」「グワーッ!?」ゴウランガ!カタナを利用したイポン背負い!アブラクサスが背中から地面に叩きつけられる!そして、ニンジャスレイヤーの動きは止まらない!地面に叩きつけられたアブラクサスの首めがけ、ギロチンめいたチョップを振り下ろす!38

2016-08-24 22:24:05
劉度 @arther456

ゴォン!チョップの衝撃は、屋上庭園全体を揺らすほどであった。目を見開いた生首が、土埃とともに宙を舞う。「サヨナラ!」アブラクサスは爆発四散した。ニンジャスレイヤーは彼の首を掴み、静かにザンシンする。パラパラと、砕けたサクラの破片が地面に落ちた。39

2016-08-24 22:27:02
劉度 @arther456

周りにニンジャの気配は無い。フジキドは倒れている少女型オイランドロイドの元に駆け寄った。「ナラク、無事か?」「ピガガッ……」返事は壊れた電子音声。体のあちこちから電撃が走り、奇妙な痙攣を起こしている。「ナラク!?」素人目に見ても危険な状態だ。40

2016-08-24 22:30:04
劉度 @arther456

「しっかりしろ、ナラク!」「ピガガ……」「ええい……!」ドロイドを担ぎ上げる。火花がフジキドの体を焼くが、構っている暇はない。一刻も早く修理し、アブラクサスのソウルを注ぎ込まなければいけない。「イヤーッ!」フジキドはナラクを抱えエレベーターへと駆け込んだ。41

2016-08-24 22:33:07
劉度 @arther456

無人となった屋上庭園には、風が吹き込んでいた。2人のニンジャの激戦によって、老朽化したガラスドームにヒビが入り、そこから外気が入り込んでいる。枯れ草がガサガサと音を立て、枯れたサクラが枝を揺らす。一匹の羽虫が飛んできて、地面に転がるカタナの上に止まった。42

2016-08-24 22:36:04
劉度 @arther456

バシリデスは以前と同じアジトにいた。フジキドは何も言わなかったが、彼は壊れかけた少女ドロイドとアブラクサスの生首を見て、全てを理解したようだ。何も言わずにドロイドボディと生首を預かり、修理のために工房へと入っていった。44

2016-08-24 22:39:03
劉度 @arther456

それから長い時間が過ぎた。日はとっくに暮れ、ドクロめいた月がネオサイタマを見下ろしている。フジキドは、空のユノミを前にして、ソファに座っていた。ナンシーからは何度かIRCの着信が来ているが、フジキドは画面を見ようともしない。45

2016-08-24 22:42:01
劉度 @arther456

窓の外から差し込む民家の明かりが、徐々に消え始めた。この地区は治安が悪く、叩き割られた街灯は放置されている。人々が寝静まれば、この部屋も一切の闇に包まれるだろう。それでもなお、フジキドは考えている。バシリデスから告げられた、ソウルを元に戻す方法を。46

2016-08-24 22:45:04
劉度 @arther456

『お前のソウルは今2つある。お前から奪えず残ったソウルと、このドロイドの中に集めた5人分のソウルだ』ニューロンに、先程バシリデスが語った言葉が蘇る。『分割したソウルは惹かれ合う。後はお前がこのドロイドを破壊すれば、全てのソウルが元通りお前に取り憑くだろうよ』47

2016-08-24 22:48:02
劉度 @arther456

無防備なドロイドの頭部を穿ち、破壊する。たったそれだけで、彼にニンジャスレイヤーとしての本来の力が戻ってくる。今まで殺してきたニンジャたちと比べれば、なんと簡単なことであろうか。だが、フジキドは迷っている。果たしてあのドロイドを破壊してよいものだろうか、と。48

2016-08-24 22:51:09