サイバー・スレイヤー【五殺目・アブラクサス】後編

劉度 @arther456

ドロイドを破壊しない理由はない。そもそもその為にわざわざあのドロイドを連れて５人のニンジャを殺したのだ。あのドロイドと暮らした時間はほんの僅かで、愛着を抱く理由もないはずだ。それにナラクが自分の体を手に入れれば、どれだけの惨劇が起こるかもわからない。しかし。49

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フスマが開いた。フジキドが顔を上げると、そこには少女型オイランドロイドが立っていた。ウェットスーツめいた黒のシャツとレギンスは取り払われ、代わりに白い手術着を身に纏っている。「フジキド、終わったぞ」闇の中で、少女は不敵に笑う。50

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「……動けるのか？」「おう。頭の天辺から爪先まで、元通りじゃ」少女は図々しくもフジキドの隣に座り、足を眼前に突き出してくる。「ほれ、どうじゃ？」艶めかしいオモチシリコンの足を、フジキドは押しのけた。少女は後転してソファから降りる。「なんじゃ、つまらん」51

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「ナラク」「面白いぞ、この体は。小娘のオモチャと侮っておったが、いや、中々によく出来ておる。オヌシの軟弱な体よりもずっとワシの力を発揮できるわ」その場でくるりと一回転、手術着の裾が翻る。「これならもう、オヌシがニンジャを殺すのをニューロンで指を咥えて見ている必要はないのう？」52

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少女は更に喋る。「フジキドよ。今までご苦労であったな。これからはワシがアマクダリの全てのニンジャを、いや、ネオサイタマ中のニンジャを殺してやろう。オヌシはゆっくりフートンで寝ておれ。力も、記憶も取り戻したワシに、敵うニンジャなど」「黙れナラク」冷たい声が、少女の語りを遮った。53

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「……ッ、な、何じゃ。何が気に食わぬ？」少女はうろたえていた。「そ、そうか。ワシがニンジャ殺しを独り占めするのが気に食わんか！なら、ワシら２人でネオサイタマ中のニンジャを恐怖のドン底に落としてやるのじゃ！楽しかろう？楽しかろう！」フジキドは耳を貸さず、ゆっくりと立ち上がる。54

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「ニンジャを殺すのはオヌシではない。私の意志だ」フジキドの体を赤黒のニンジャ装束が覆う。顔には恐怖を煽る文字で「忍」「殺」と書かれたメンポが現れた。「それに、ニンジャを殺すというなら、オヌシの目の前に最初の一人がいるではないか。その目は物の役に立たんようだな」55

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両手を合わせ、相手を見定めるように睨みつけてから、アイサツを繰り出す。「ドーモ、フジキド・ケンジです」少女は何か言い返そうとして、しかし、ニンジャの本能には抗えず、俯いた。「……グググ」少女が顔を上げた時、そこには先程まで無かった、いや、隠されていた邪悪があった。56

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「ドーモ、フジキド・ケンジ＝サン。ナラク・ニンジャです」57

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【五殺目・アブラクサス】おわり 【六殺目・ナラクロイド】に続く