『テヅカ・イズ・デッド』を批判的に乗り越えるために

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uroak_miku @Uroak_Miku

20)小野耕生の本で紹介されていなかったかな。朝鮮戦争を経験して作風が変わったひともいたとかなんとか。

2016-11-13 10:22:39
uroak_miku @Uroak_Miku

21)まんが(定義はあえてしないでおきます)は20世紀の大量生産&消費社会の申し子として発展したメディアです。20世紀は大戦の世紀でした。まんがにも影を落としたわけです。どの国においても、です。

2016-11-13 10:24:27
uroak_miku @Uroak_Miku

22)キャラクターの可逆→不可逆は日本のまんがだけで起きたことではなく、時期の違いや受容のされ方の違いはあってもどこでも起きていたのではないでしょうか。

2016-11-13 10:25:48
uroak_miku @Uroak_Miku

23)その現象を「キャラ→キャラクター」と名付けてしまうと、かえって本質を隠蔽してしまわないか。

2016-11-13 10:26:42
uroak_miku @Uroak_Miku

24)『テヅカ・イズ・デッド』の欠陥のひとつは、著者が「まんが」というとき、日本製まんがしか基本的に念頭に置いていない(らしい)ことです。実際そういう批判の声が挙がりました。

2016-11-13 10:28:07
uroak_miku @Uroak_Miku

25)理論先行なんですよ。思弁的思考を積み重ねて論を堅固にしていくスタイルだから、実際にまんがはそういう風に進化していったのかの実証的研究に欠けている。良くも悪くも理論物理的なのです。

2016-11-13 10:29:59

続きです。

uroak_miku @Uroak_Miku

1)「キャラ→キャラクターに変容」と考えるのではなく、「キャラクターがある時点で可逆→不可逆に変容」と考えるべきだと私は考えています。

2016-11-13 15:32:25
uroak_miku @Uroak_Miku

2)鉄腕アトムはただの人形。それが科学の力で魂を持ってしまった。そしてアトムは苦悩を知った。 pic.twitter.com/EYGjkPqWD8

2016-11-13 15:34:56
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uroak_miku @Uroak_Miku

3)初期手塚まんがでは、キャラクターが物語の途中で不可逆になる。地球に戻れなくなった少年と少女。控えめにですが少年には筋肉が、少女には胸のふくらみが描かれています。もう子どもではない、生殖可能な体になっている。幼年期の終わり。 pic.twitter.com/fJCTbVxHI7

2016-11-13 15:37:45
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uroak_miku @Uroak_Miku

4)そういえば宮崎駿は『ラピュタ』の終盤をどうするかで悶々としながら「手塚なら絶対この二人をラピュタに残してアダムとイブにするんだろうな、俺はやらないぞ」と意地を張りとおした。それであの二人はグライダーであの浮遊島を離れるのです。手塚との決別であるかのように。

2016-11-13 15:39:59
uroak_miku @Uroak_Miku

5)もっとも絵コンテを見ると、あの二人が海賊の仲間入りをする際に、絶壁に立つパズーの家と鳩たちを二人が空から哀しげに眺めるカットで「パズーの少年時代は終わった」とト書きされています。不可逆テーマがそれとなくしこまれているのです。

2016-11-13 15:42:11
uroak_miku @Uroak_Miku

6)さてこの左側の少女ですが、植物細胞から作られた人造人間です。創造主たる科学者の嫁にされそうになる。本人は嫌がる。もし植物のままだったらこんな苦悩を味わわずに済んだのにといわんばかりに。 pic.twitter.com/pL2Rn4AyWf

2016-11-13 15:44:07
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uroak_miku @Uroak_Miku

7)キャラクターは殴られても蹴られても次のカットではもう元に戻ることができる。ところが手塚まんがでは次第にそれが効かなくなる。

2016-11-13 15:46:05
uroak_miku @Uroak_Miku

8)植物のままでいれば苦悩などという感情を味わわなくて済んだ。それが人間に改造されてしまう。もう植物に戻ることはない。不可逆性の象徴としてこの少女があります。

2016-11-13 15:47:10
uroak_miku @Uroak_Miku

9)もうひとつ同一テーマの作品を紹介します。くしくもアトム誕生の年とされる2003年(でしたか?)公開のアニメ映画『イノセンス』。少女アンドロイドが街で暴走し殺人に走る。ある型のものが何台も同種の事件を起こす。 pic.twitter.com/8ELXQLpuKX

2016-11-13 15:49:44
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uroak_miku @Uroak_Miku

10)刑事だか特殊部隊員だかの主人公が秘密工場に潜入し、ついに謎を解きます。行方不明になっていた少女を発見するのです。あるメーカーがこの娘の人格をコピーして機械人形に吹き込んでいたのです。 pic.twitter.com/EvJN6Bk7yP

2016-11-13 15:52:10
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uroak_miku @Uroak_Miku

11)ただの人形だったのに魂を吹き込まれてしまったがゆえに、機械人形たちはまるで人間たちに復讐するかのように襲いかかる。

2016-11-13 15:53:18
uroak_miku @Uroak_Miku

12)不可逆的存在になったがゆえに機械人形たちはその不条理に怒り猛った、と、そういうお話です。

2016-11-13 15:55:14
uroak_miku @Uroak_Miku

13)思春期を迎えたとき、私たちも同じような不条理を感じなかったでしょうか。

2016-11-13 15:55:48
uroak_miku @Uroak_Miku

14)キャラクターが可逆から不可逆に変化する、あるいは不可逆なキャラクターで作品を描くようになるのは日本だけの現象ではなかったと思います。ただ日本のまんがは手塚の存在が大きかった。多感な十代に戦争を体験し、国の破滅と自分の死の恐怖と幼年期の終わりを同時に味わうなか、

2016-11-13 15:58:31
uroak_miku @Uroak_Miku

15)まんがという幼年期的楽園を自分自身の手で守ろうとした。工場で働かされている最中にもまんがを描き続けた。そうしないと自分の大切な帰るべき場所が消えてしまうといわんばかりに。この逸話は今年のセンター試験でも引用されていました。 pic.twitter.com/WEzZWUOTN7

2016-11-13 16:01:44
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uroak_miku @Uroak_Miku

16)どんなまんがを描いていたかというと、こんなのです。前にお見せしたとおりです。 pic.twitter.com/IeneONtcJK

2016-11-13 16:03:34
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uroak_miku @Uroak_Miku

17)死ぬんですよ。ただの線でできた代物であるはずなのに。 pic.twitter.com/SNeuD28lal

2016-11-13 16:04:31
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uroak_miku @Uroak_Miku

18)破滅に向かっていく国、おとなたちからの抑圧、遠ざかっていく幼年時代の楽園、いやおうなしにおとなの体に育っていく自分自身…これらが折り重なったところに手塚まんがのDNAは形成された。可逆→不可逆の悲劇というDNAが。

2016-11-13 16:06:59
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