『カマドウマすごいぜ』やつは、植物種子の「運び屋」として活躍していた!~末次健司氏が研究を発表
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光合成をやめた植物(菌従属栄養植物、腐生植物、寄生植物)研究者。神戸大学理学部教授(兼・高等学術研究院卓越教授)。専門は、植物、昆虫やキノコの自然史(生態や進化)。変わった生物に心惹かれますが、特にラン科植物が大好き。学生さん、学振応募者や共同研究者を募集中。自身初の単著の書籍『「植物」をやめた植物たち』好評発売中!
カマドウマが、様々な光合成をやめた植物の種子の運び手となっていることを明らかにした論文を発表しました。自身の中では過去最高傑作の仕事だと思っています。ぜひご覧ください。 onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/np… pic.twitter.com/bwPI6fggor
2017-11-10 15:34:52多くの植物は、動物に食べられることで種子を運んでもらい、糞と共に排出してもらう方法を採用しています。この方法を用いる植物は、動物への報酬として、糖分などの栄養に富む果肉を発達させています。我々が食べているおいしい果物も、動物に種子を運んでもらうための進化の賜物なのです。
2017-11-10 15:35:53このように、動物に食べられて運んでもらい、糞と共に排出される種子散布方法は、動物被食散布と呼ばれ、種子の運び手は、主に鳥類と哺乳類ですが、驚くべきことに親戚同士でもない3種の光合成をやめた植物が、昆虫に種子散布を託すという進化をそれぞれ独自に遂げたことが明らかになりました。
2017-11-10 15:36:21昆虫が動物被食散布による種子の運び手となる例としては、ウェタが有名です。ニュージーランドではコウモリ以外に哺乳類が存在しないため、哺乳類の占めているはずのニッチが空いていました。そのためバッタの仲間が巨大化して、それが種子の運び手としても機能していると言われていたのです。
2017-11-10 15:37:03言い換えれば、バッタの仲間が種子の運び手として機能するためには、哺乳類が存在しないような特殊な環境における独自の進化が必要だと考えられてきたのです。このような直翅目による種子散布の例は、地上で生活する哺乳類がいる地域においては世界で初めてのものです。
2017-11-10 15:37:23寄生植物の種子は、栄養を蓄える必要がないために非常に小さく、埃のように風で舞うことで散布されると考えられてきました。しかし、光合成をやめた植物の生育環境は暗く風通しの悪い林床のため、風に種子散布を頼るのは非効率的です。そこで、動物に種子散布を頼るようになったと考えられます。
2017-11-10 15:38:11しかしながら、寄生生活を営んでいる彼らには、あまり資源に余裕がありません。このため鳥類や哺乳類が好むような、栄養に富んだ果肉や目立った色の果実を作ることができず、次善の策として、質の低い餌資源でも利用してくれるカマドウマを、種子の運び手として雇ったのかもしれません。
2017-11-10 15:38:50実際に、一般的な種子の運び手である鳥や哺乳類の仲間は、これらの植物の果実に気が付いて触れることもありましたが、食べようとはしませんでした。
2017-11-10 15:39:06なお、ギンリョウソウに関しては、「ギンリョウソウにとってモリチャバネゴキブリは“かけがえのないパートナー”である」と最近報告されましたが、ギンリョウソウは、今回の調査地を含め、モリチャバネゴキブリが全く生息しない地域にも、多数存在しています。
2017-11-10 15:39:32(ギンリョウソウは、北は北海道から南は沖縄まで分布し、本州でも亜高山帯まで生息していますが、モリチャバネゴキブリは北海道には分布しておらず、本州でも主に平地に生息しています)
2017-11-10 15:39:49このことと、今回の研究でカマドウマがギンリョウソウの種子の運び手として機能していたことが解明されたことを併せて考えると、ギンリョウソウの種子散布は、特定の昆虫ではなく、その地域に生息している様々な無脊椎動物を種子の運び手として利用しているのかもしれません。
2017-11-10 15:40:13今回の親戚同士でもない光合成をやめた植物のカマドウマ散布の発見は、光合成をやめるという進化(とそれに伴う種子の小型化や、風による種子散布が非効率的な暗い林床環境への進出)が、昆虫による被食動物散布という特殊な生態への収れん進化を促したことを示唆するものです。
2017-11-10 15:41:55カマドウマ、わりと嫌われてるけど、たしか川魚のごはんとしても有能な虫だから、つまらない虫として扱うのは失礼だったのかもしれない。
2017-11-10 17:01:56@yokogawa12 その地域に生息している様々な無脊椎動物を種子の運び手として利用しているといったあたりが妥当だと思います.種子散布はルーズですので.ちなみに私の論文ではもう一つの主な摂食者としてゴミムシにも食べさせていて,これは完全に種子を破壊してしまうことを示しています.
2017-11-10 17:14:42カマドウマ論文は本当に気合いを入れて書きました.表現にもこだわったので文章表現を変えられるのも嫌だったので,英文校閲にもださず投稿しました.
2017-11-10 17:19:08ツチアケビの発見はラン科で初めての動物散布の証明ということでNature Plantsに載ったけど,今回ターゲットした植物の一つであるキバナノショウキランもラン科.正直自然史的な発見の驚き度からいうと,前作よりも大きな発見だと思うけど,そこはeditor運に恵まれなかったかなあ.
2017-11-10 17:21:48せっかく皆さんかなり論文ツイートしてくれているけど,論文のウェブサイト直リンクだとaltmetricsに反映されないのか.ちょっと残念.
2017-11-10 17:24:01@tugutuguk 恐れ入ります。このツイートについてお尋ねしたいのですが、何か同じように論文を見に行くにしても、「altmetricsに反映」させる方法のようなものがあるのでしょうか?同じ事ならその手順を踏みたいと思うのですが。 twitter.com/tugutuguk/stat…
2017-11-11 02:35:21