初音ミク「ハジメテノオト」の歌詞を韻による意味の伝達という観点から評価する

6月12日文学フリマで『筑波批評』で「Os-宇宙人」論を出させていただく@yaoki_dokidokiが、初音ミクの歌について語ってみたよ。
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料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

「ハジメテノオト」で僕がいいなって感じるのは、「わ」の音だ。「はじめてのおとは なんでしたか/はじめてのおとは」。ここまではやさしく念をおすように韻がふまれている。韻とはいっても、おなじフレーズが繰りかえされているだけなので、僕たちにはたぶん押韻とはかんじとられない。

2011-05-25 23:19:24
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

歌のはじまりの部分に繰りかえしを置くのは、畑亜貴せんせーもよくやることだ。ミルキィホームズの「おはよーおはよー」や涼宮ハルヒの「ナゾナゾみたいに」や、宙のまにまにの「遠くとおくへと」や、らき☆すたの「BonBonおーえんだん」などだね。

2011-05-25 23:24:14
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

畑亜貴せんせーの場合は、畑亜貴せんせーの押韻のやりかたに、みんなの耳がついていけるように準備をさせているのだと思っている。

2011-05-25 23:26:10
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

さて次の歌詞を見てみると、「わたしにとっては これがそう/だからいま うれしくて」となっている。そして、「わ」の音に注目すると、「わたしにとっては」というフレーズの始まりと終わりに「わ」が置かれている。

2011-05-25 23:29:16
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

それですこし巻きもどして聞いてみると、「はじめてのおとは わたしにとっては」となっているんだよ。つまり、「わ」の音がフレーズの終わりと次のフレーズの始まりで隣りあっているんだよね。聞いているとあまり意識されないことだと思うけど。

2011-05-25 23:32:31
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

意識されないのは、フレーズの終わりからフレーズのはじまりへと位置が移動してるからだ。逆にいうと、位置が同じである「おとは」と「とっては」の「わ」の音はちょっとにているよね。「とは」が「とっては」へ引き延ばされているからっていう理由もあるだろう。

2011-05-25 23:36:13
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

さきにすすんでみよう。次は「はじめてのことばは なんでしたか/あなたのはじめてのことば」。ここでは1連とはちがって「わ」の音が一回しかでてこない。聴いた感じとしては、1連よりも安定的な感じがへると思う。

2011-05-26 00:55:55
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

そして「わたしはことばって いえない/だからこうしてうたっています」。先ほどと同じように「わ」の音で始まっている。今度は隣り合って置かれてはいない。

2011-05-26 00:58:12
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

でもね、よく見ると「わたしは」ということばが「わ」ではじまり「わ」で終わっている。

2011-05-26 00:59:33
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

それで、この「わたし…は」というフレーズは1番でけっこうでてくるんだよ。1連「わたしにとっては」→2連「わたしはことばって」→3連「わたしはうたうから」→4連「わたしはしらない」というふうに。

2011-05-26 01:03:50
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

「ハジメテノオト」という歌が初音ミクという存在にある種の「ほんとうにそういう生命がいる感じ」をもたせたと感じる人がいるなら、それはこのフレーズのちりばめかたにあると思うんだ。

2011-05-26 01:06:28
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

ここからはTwitterとかではふだんあまり言わなかった話を導入したいとおもうんだ。

2011-05-26 01:10:42
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

最初にどうして「同じかたちだと構成がわかりやすい」という話をしたかということだけど、これからする話のために準備していたのだ。

2011-05-26 01:21:14
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

歌の全体における構成、つまり歌のかたちというのは、意図的につくられていることがおおい。だからわかりやすいのだとも思う。そうだけど、歌詞のこまかい部分でおこなわれている構成は、意識されないことがおおい。

2011-05-26 01:24:11
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

つくっている本人もわかっていないことが多かったりで、そのため「聴いているひとに歌詞の構成がわかりやすいように」という意識もはたらかなかったりする。そんなとき、もちろん聴いているひとにもあまり構成は意識されて聴かれないだろう。

2011-05-26 01:27:07
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

でも日本語の歌詞にはそれなりの規則があって、見よう見まねでその規則はいろんな人にうけつがれている。聞いてる人の聞き方にも、作る人の作り方にもね。

2011-05-26 01:30:08
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

ただ、最初に断ったように、同じかたちをしていると構成はわかりやすいのだと直観する。その考えをすこし強めにおしひろげると、同じかたちがあるのなら、そこに構成が読みとられるのだということ。ゆるい感じで同じかたちがあるのならゆるい構成が、つよく同じかたちがあるのならくっきりした構成が。

2011-05-26 01:34:03
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

そこで今僕が同じかたちと呼んでいるのは、「ハジメテノオト」の「わ」という音のことなんだけど。

2011-05-26 01:35:13
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

僕のうっすらとした考え、つまり仮説では、「ハジメテノオト」を聴いて「わ」の音になにかを感じているとき、僕たちはぼんやりした意識のなかでそこに構成を読みとっている。

2011-05-26 01:37:05
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

構成が読みとられると、次に僕たちはぼんやりとそこに意味を読みとろうとすると考える。「どうしてここに『わ』の音があるんだろう。ここにもここにもあるな」というふうに。構成から感じとられる意味を、僕は「論理」と呼んでいる。

2011-05-26 01:39:51
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

正確には、僕たちは論理をつかって構成から意味を読みとろうとすると思う。そして、僕の考えによると、韻をふむことはそこに構成をつくりだすので、僕たち聞き手からするとそこに論理があるように見えるということ。するとだんだん意味のようなものがうっすら見えてきてしまうの。

2011-05-26 01:45:34
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

脱線しているようにも見えるけど、そんなことはない。僕が「ハジメテノオト」を聴いて感動して以来、ずっとじっと考えてきたことはそういうことだからだ。それをていねいにかたろうとしているのだ。

2011-05-26 01:48:37
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

その意味とはなんだろうか。つまり「わ」という音による押韻が僕たちに聞かせてくれるメッセージとは?

2011-05-26 01:49:56
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

そこでまたここに歌詞へのリンクを張る:初音ミク Wiki - ハジメテノオト http://t.co/gpYqetE

2011-05-26 01:50:33
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

「はじめてのおとは なんでしたか」ということばは、この歌を聴いているリスナー、つまり僕たちへの質問というかたちをしている。僕たちはこの歌声の持ち主にそのようにことばを投げかけられているのだ。

2011-05-26 01:52:38