菊池誠（kikumaco）さんと平川秀幸（hirakawah）さんの「リスク比較」に関するやりとり

Hideyuki Hirakawa @hirakawah

数時間前に連ツイしたリスク比較の話。自分が言いたかったのは、リスクの受否の判断には「合理的（rational）」な理由だけでなく「道理がある（reasonable）かどうか」も強く関係しているということ。たとえ合理的には小さなリスクでも道理がなければ拒否するのが人間というもの。

Hideyuki Hirakawa @hirakawah

（続）なおリスク心理学における「リンク認知論」が果たした役割というのは、リスクの認知や受否には合理性だけでなく道理性も大きく関わっていることを明らかにしたことにある。ただし、それが「心理学」だった点で皮肉な限界があった。

Hideyuki Hirakawa @hirakawah

（続）元来、道理性の要素には、個人心理的なものの他に、公平性や自己決定権、責任など社会正義に関わる公共的・政治的次元に属するものが含まれている。ところがリスク「心理学」では、後者も心理的なものとして扱ってしまうことになる。公共的次元の心理化＝主観化。

Hideyuki Hirakawa @hirakawah

（続）そして、リスク心理学が、心理学者自身ではなく、工学者に読まれるようになると、合理的／道理的の区別は、客観的／（個人）主観的の区別にすり替えられ、さらに主観的＝情緒的という等式まで付け足される。

Hideyuki Hirakawa @hirakawah

（続）こうして「客観的なリスクの認識に基づいて主観的・情緒的リスク認知を矯正する」という「リスク論的啓蒙思想」が成立する。日本ではもんじゅ事故が起き、原子力分野でも「リスク」の存在を推進派が公然と認識するようになった90年代後半から原子力や食品、化学で台頭。れ

Hideyuki Hirakawa @hirakawah

（続）しかし、道理性は、客観性と対置されたものとしての主観性とは違うし、ましてや（たいていは否定的意味で用いられる）情緒的とイコールでもない。さっき言ったようにそこには社会正義に関わる公共的・政治的要素が含まれているし、不正義に対する情念を捨てたら人間御仕舞なのはいうまでもない。

Hideyuki Hirakawa @hirakawah

（続）勿論逆に、道理性だけでリスク問題を語りつくすことはできず、合理性（rational → ratio = 比較）に依拠しなければ処理できない問題も沢山ある。ただ、しばしば世の中では合理性の問題以上に道理性の問題こそ紛糾し、それゆえに合理性もうまく通じなくなることが多々ある。

Hideyuki Hirakawa @hirakawah

（続）とにかく、「合理／道理」を「客観／主観」に読み替え、前者を扱うのが科学、後者が心理学という読み替えはただの誤読だということ。リスク認知論はリスク心理学だけでなくリスク政治学でもあり、学的知識によって予測・制御される対象ではなく、公共圏で政治的に扱われるべき事柄も含んでる。

Hideyuki Hirakawa @hirakawah

（続）ちなみにリスク問題について工学系の人は人文・社会系に対して、心理学や社会学の知見を使ってリスクに対する人々の反応を予測し、制御することを期待することが多い。「社会学の知見を使って（リスク受容するという答えありきの）合意形成できませんか」という相談はよくある話。

Hideyuki Hirakawa @hirakawah

（続）けれども彼ら工学者が「操作可能な対象としての人間心理」というのは、政治的にはフィクションである（心理学ないし最近なら脳科学の知見を使えば操作はかなり可能にはなるだろうが倫理的にどうよ？という話）。政治的には道理性の問題は捜査ではなく「相手にボールを預ける」ということである。

rmsi_isng @rmsi_isng

というか本来「合理性」は「道理性」の下位要素に過ぎない。RT @hirakawah: （続）そして、リスク心理学が、心理学者自身ではなく、工学者に読まれるようになると、合理的／道理的の区別は、客観的／（個人）主観的の区別にすり替えられ、さらに主観的＝情緒的という等式まで...

Hideyuki Hirakawa @hirakawah

御意です。RT @gnsi_ismr: というか本来「合理性」は「道理性」の下位要素に過ぎない。RT @hirakawah: （続）そして、リスク心理学が、心理学者自身ではなく、工学者に読まれるようになると、合理的／道理… (cont) http://deck.ly/~rPH5M