第50回日本SF大会第2部~表現と法規制に関するミニシンポ より、山口弁護士のお話

表題通り。憲法論から導かれる表現の自由の重要性とその制約のあるべき根拠。そして、これからの表現規制への対処の仕方、その方向性について。訂正などありましたら、お願いします。
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wagu @wagu108

こういうものを見たら全部女性は不愉快に思うし権利を侵害されたと思うんだ、とか、すべての子どもはこういうふうに思うんだとか、すべての~国人はそういうふうに思うんだとかいう表現はありえないと思う。さまざまなコンテクストがあるから。(続)

2011-09-04 22:51:45
wagu @wagu108

「犯罪を誘発する」については具体的な蓋然性が立証されない限り、具体的な人たちの人権を守るというのは、やはり、対立する権利にはならない。(続)

2011-09-04 22:52:26
wagu @wagu108

それに対して、集団的人権と言うことについては、「じゃあ労働者の権利はどうなんだ」ということを言う人もいる。けれども労働者の権利というのは憲法典に別途入っている。これは憲法上の例外としてある。消費者の権利という言葉もあるが個々の人が権利を行使する主体となるのが前提である。(続)

2011-09-04 22:53:20
wagu @wagu108

けれども、いわゆるヘイトスピーチ規制論者など、ごく一部のフェミニストたちが言う集団的人権というのは、人権というものを私たちが代わって行使してやるという前提がある。(続)

2011-09-04 22:54:12
wagu @wagu108

個人の自己決定権としての人権という枠組みを逸脱しているのではないか。ゆえに公共の福祉にならない。というのが私の考え方だし、一般的な考え方である。(続)

2011-09-04 22:54:40
wagu @wagu108

表現規制のあり方。表現は万能ではない。公共の福祉に制限される。では、どういう形での制約ができるか。大きく分けると、事前規制と事後規制に分けることができる。事前規制というのは、事前に表現内容を審査して、「これ表に出しちゃダメ」。(続)

2011-09-04 22:55:23
wagu @wagu108

行政権による事前規制は検閲に該当するので例外なく不可である。ただ、司法権による事前規制というのは認められる。裁判所が個別事件について認められうる場合がある。(続)

2011-09-04 22:56:15
wagu @wagu108

事後規制、表現された後の規制は内容そのものに着目して、これを出しちゃいかんというような規制の仕方もあるし、出していいけれども、その時と場所と方法を選びなさいよという規制がある。(続)

2011-09-04 22:56:51
wagu @wagu108

内容規制の典型的なものとしては児童ポルノ法、刑法175条の「わいせつ」がある。これは事前規制ではない。(続)

2011-09-04 22:57:50
wagu @wagu108

内容規制の典型的なものとしては児童ポルノ法、刑法175条の「わいせつ」がある。これは事前規制ではない。(続)

2011-09-04 22:57:50
wagu @wagu108

あらかじめ「こういうものを出したいんだけれどもどうなんでしょうか」と警察にお伺いを立てても、警察は教えてはいけないし、教えるというのは検閲になってしまうので、出した後に逮捕するというのが正しいことになっている。(続)

2011-09-04 22:58:19
wagu @wagu108

時と場所と方法の規制については、昨年6月に否定された都条例の改正案は「蔓延を抑止するんだ」ということを言っていて、時と場所と方法ではなくて「そういうものをなくすんだ」という決意や方向性を打ち出しているのだから、じつは内容規制に飛び込みつつあった。(続)

2011-09-04 22:58:58
wagu @wagu108

流通の方法を厳しくするような法律は、内容規制と変わらないことになってしまう。表現には時間と労力とコストがかかるので、もとを取れないような規制をしてしまうと内容規制と変わらない。(続)

2011-09-04 22:59:51
wagu @wagu108

内容規制と時と場所と方法の規制がなぜ議論されなければならないか。それが許容されるか許容されないか、において時と場所と方法の規制の方が、若干ハードルが低い。(続)

2011-09-04 23:00:26
wagu @wagu108

青少年健全育成条例は大人が手に取ることについては文句を言っていない。ゆえに、それくらいの制約は公共の福祉の範囲内でしょう、というのが最高裁の立場。(続)

2011-09-04 23:00:38
wagu @wagu108

民主的な社会のインフラとしての表現の自由について。なぜ表現の自由は保障されているのか。まず民主主義の大前提は、正しいことはわからない、というところからきている。理性を持っている存在である人間が議論を尽くして出てきた結論は、そんなに真実と違わないものではあるまいか。(続)

2011-09-04 23:02:16
wagu @wagu108

価値相対主義、本当のところはわからないというのが大前提としてある。多数決のプロセスを経て形成された多数意見というのは、暫定的な真実であって、絶対的な真実かどうかはわからない。それが民主主義の大前提である。物理学の法則を多数決で決めたりはしない。(続)

2011-09-04 23:06:25
wagu @wagu108

もう一つは、価値観というものは時代に応じて移ろう。今の価値判断、多数派を形成するに至った判断というのは、暫定的に正しいものに過ぎない。であれば、少数派にとってカムバックする方法を閉ざしてしまうような多数決というのはやってはいけない。(続)

2011-09-04 23:07:23
wagu @wagu108

多数派は、こういう表現はよろしくないという議論を通じ、「なくす」という結論に達し、表現してはならんということになった場合、少数派が多数派になる道は永遠に閉ざされてしまう。将来における議論の前提材料の確保という観点。(続)

2011-09-04 23:08:30
wagu @wagu108

表現の自由をどのように保証するのか。(中略)カナダやオーストラリアでは表現の自由がかなり制約されているが、その理由は、議会による立法行為を抑制するという発想がない。多数派が少数者の人権を抑圧するという発想がそもそもない。(続)

2011-09-04 23:10:27
wagu @wagu108

アメリカ合衆国の場合は、裁判所が厳しくチェックするシステムがある。アメリカで司法審査が機能する背景として、アメリカの裁判官の信任の仕組みがある。アメリカの裁判官は特定のポストに信任される仕組みである。任期も昇進も何もない。常に身分保障がある。(続)

2011-09-04 23:10:42
wagu @wagu108

民主党と共和党が選任した裁判官がそれぞれいて混在している。だから民主党、共和党の政策について、それぞれの立場から厳しくチェックすることになるのでうまく機能する。(続)

2011-09-04 23:14:05
wagu @wagu108

日本の場合は、自民党がずっと政権を持っていたので、いろいろな立場から選任された裁判官というのがいない。また最高裁判事の定年は70歳である。選任されるのは早くても60代前半。在任期間が短い。長老的な人がいない。(続)

2011-09-04 23:15:10
wagu @wagu108

裁判官は基本的にサラリーマンだから、出世コースに乗っているかどうかを気にすることもある。その辺の背景がアメリカとは違う。(続)

2011-09-04 23:16:13
wagu @wagu108

だから、日本において司法審査というものは機能しない。(中略)では、表現の自由を守るためにどうすればいいのか。民主的なプロセスを通じて表現の自由を守っていくしかない。である以上、多数決の前にどれだけ根回しできるかというのが勝負になる。(続)

2011-09-04 23:18:08