差別表現は表現の自由の対象外か ――枠組の整理+α

うの字先生、村松(トゥギャ松)先生のTweetを契機に、表現の自由について若干の整理を書いてみました。
法律 判例 公共の福祉 差別表現 憲法 表現の自由 ヘイトスピーチ
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こちらのまとめの派生まとめです。

まとめ ジャンプお色気♡騒動。【法律家版】 弁護士、裁判官、大学の法律学者の反応を簡単にまとめましたよ! (べつにそんな高尚な議論はしていないw) なつかしのオイロケ漫画を思い出すほのぼのとした流れになりました。 話題提供者の弁護士太田啓子先生ありがとうございます!!♡ なお、漫画表現の規制に反対のかたは、 ぜひ、表現の自由を守るNPO うぐいすリボンへ、寄付をお願いします。(私も正会員となっております。) http://www.jfsribbon.org/p/blog-page_5.html 550840 pv 3634 755 users 957
こちらの2つが、きっかけとなったTweetです。
うの字 @un_co_the2nd
大変な誤解があるようなんだが、 差別的表現も侮辱的表現も扇動的表現も表現の自由の範囲内なんだ。ただ、被差別者・侮辱された者・攻撃対象者にはこれらを拒絶し差止を求め損害や苦痛の回復を求める権利があり、場合によっては処罰を求める権利もある。
村松 謙 @kmuramatsu
自治体に徒党を組んでクレーム入れて、講演つぶすのも、表現の自由でいいんですかね? それでいいと割り切ってる法律家もいますが。 twitter.com/kmuramatsu/sta…
その1 表現の自由の範囲外か公共の福祉ほかによる制限か
うの字 @un_co_the2nd
大変な誤解があるようなんだが、 差別的表現も侮辱的表現も扇動的表現も表現の自由の範囲内なんだ。ただ、被差別者・侮辱された者・攻撃対象者にはこれらを拒絶し差止を求め損害や苦痛の回復を求める権利があり、場合によっては処罰を求める権利もある。
弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine
これは、以下のどちらの判断枠組を取るべきかという憲法の解釈問題なんだけど、たいていの法律家は後者を取ると思う。 「差別表現は表現の自由の対象外で、立法により制限され得る」 「差別表現は表現の自由の対象だが、公共の福祉により正当化できる範囲で、立法により制限され得る」 twitter.com/un_co_the2nd/s…

2つ説の説に名前をつけなかったのは、失敗でした。たいそう分かりづらい。
1つ目を「範囲外説」、2つ目を「制限説」として、以下適宜欄外から注釈します。

弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine
別に後者(差別表現も表現の自由の保護を受ける説)を取ったから、差別表現を規制できなくなるわけではない。 「差別表現かどうか」で判断するか、「公共の福祉」で判断するか、という違いなので、後者でも公共の福祉の範囲内で制限立法は可能。

「後者」というのは「制限説」
以下、「制限説」の考えられる理由付けです。

弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine
どうして差別表現も表現の自由に入れたいかというと、いくつか理由がある。 まず、憲法が「集会、結社及び言論、出版その他*一切の表現*の自由は、これを保障する。」としていることが大きい。差別表現は「一切の表現」に含まれないという解釈は、ま、自衛隊が戦力じゃないという解釈くらいは苦しい
弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine
仮に、差別表現を、侮蔑的表現、扇動的表現を「一切の表現」から除外すると解釈すると、その解釈がどこまで広がるか、コントロールできなくなるおそれがある。 これは実害として結構大きい。
弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine
それから、「差別表現(侮蔑的表現)にあたるかどうか」という基準よりも、「公共の福祉にあたるかどうか」という基準の方が、様々な事情を取り入れて柔軟な判断ができるので、基準として優れているという判断もある。

「前説」というのは、「範囲外説」

弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine
他方、差別表現規制派が前説(差別表現は表現の自由の範囲外説)を取りたがる法的な理由もある。 「公共の福祉」の解釈について、内在的一元的制約説というのがあって、ざくっというと、他者の人権侵害との調整だけが人権を制限できるという考え方。
弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine
この「公共の福祉」の解釈は、憲法の人権論の中核にある大事な考え方なんだけど、これが差別表現規制と相性が悪い(面がある)。だから、「公共の福祉」による制約という議論を避けて、そもそも差別表現は表現の自由の対象外という大上段の議論に行きたくなる。
弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine
ただ、ここは色々と理屈をつけることは可能なので、前説を取らないと差別表現を規制できないということではない。
弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine
あとは法的というより、情緒的・政治的な話があって、「ヘイトスピーチは、マイノリティを傷つける魂の殺人であって、そもそも表現の自由の対象外なんだ! えいえいおー!」という景気づけをやりたいから言っているという側面がある。逆に、後説は、なんとなく表現の自由を大事にする雰囲気は出る。

後説というのは、「制限説」です。

最高裁判例の立場

昔の判例は「範囲概説」とも「制限説」とも取れる判示をしていましたが、平成2年の比較的新しい判例は「制限説」と思われます。

弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine
日本の最高裁判例はどうかというと、従来は、どっちともつかないわけの分からない立場だった。
弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine
例えば、最大判昭和31年7月4日民集10巻7号786頁 「しかし、憲法二一条は言論の自由を無制限に保障しているものではない。そして本件において、原審の認定したような他人の行為に関して無根の事実を公表し、その名誉を毀損することは言論の自由の乱用であつて、
弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine
ここまで読むと、「乱用」(濫用)というのだから、表現の自由の範囲内なんだろうなと考える。しかしこの続きのところは、 「たとえ、衆議院議員選挙の際、候補者が政見発表等の機会において、かつて公職にあつた者を批判するためになしたものであつたとしても、→
弁護士 吉峯耕平(「カンママル」撲滅委員会) @kyoshimine
これを以て憲法の保障する*言論の自由の範囲内に属すると認めることはできない*。してみれば、原審が本件上告人の行為について、名誉毀損による不法行為が成立するものとしたのは何等憲法二一条に反するものでなく、所論は理由がない。」 としていて、表現の自由の範囲外だと言っている。
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コメント

文月 @m03zH3iS0oMWetp 2017年7月12日
なんにしても抗議するまえに内容把握してるのかという点と法解釈を好きに変更してる感がある。前者は最近ジャンプにいちゃもんつけてるあの人はあの漫画多分読んでなさそう。後者は左翼活動家によくある対立してる人にはなに言ってもいいみたいな感じがする。
言葉使い @tennteke 2017年7月12日
自力救済が禁止されているだけで、司法に頼った中止は何の問題もないし、不買運動をちらつかせての抑止も問題ない。
3mのちくわ(20禁) @tikuwa_zero 2017年7月12日
「差別的な表現そのもの」を一律的に規制してしまうと、「差別を批判する文脈上で必要となる差別的表現」すら不可能になってしまう危険性があるので、まとめ主さんの言葉を借りるならば、「差別表現は表現の自由の対象外で、立法により制限され得る」ではなく、「差別表現は表現の自由の対象だが、公共の福祉により正当化できる範囲で、立法により制限され得る」を選択するのがベターというお話。
3mのちくわ(20禁) @tikuwa_zero 2017年7月12日
tikuwa_zero また、この場合の「(公共の福祉により規制が正当化できる)差別的な表現」とは、実在する人物・団体・企業その他の名誉や利益を故意に毀損・侵害する場合に留めるべき、という観点は付け加えておきたい。少なくとも「私が差別と判断したから差別」「子供に悪影響が及ぶ。ただしそれを証明するデータはない」「私が不快に感じたのだから、これは女性(男性)全般に対する差別だ」なんて類の主観的拒絶の主語を大きくしただけの妄言を表現規制の論拠にすべきではない。
TAKAMAGAHARA @SILVER_CAP 2017年7月12日
直接的に法規制すると、組織力・行動力のある組織が論敵の主張を一方的に封殺するために濫用される状況が横行し、封殺された側の憎悪を際限なく増幅させる事になる。そしていずれは最悪の形でそれが爆発する、と
ChanceMaker @Singulith 2017年7月12日
とてもすっきりしました。馬鹿パヨクがよく「在日罵倒は差別で違法だが、アベ罵倒は表現の自由」とか、自分の都合に合わせて勝手に「表現の自由」の定義を作るので、次はこれを見せてやります。どうせ連中に理解はできないけど(笑
椎名裕仁🍎( '-' 🍎 )固定にNoteへのリンクあるぱよ🇭🇷🇻🇳👮🏻‍♀️ @SheenaHirohito 2017年7月12日
事例が違うので汎化はしづらいが、例えば「小女子を焼き殺す」や「〇〇死ね」(「〇〇殺す」は時と場合による)も特段明白かつ現在の危険がない限りはそっとしておいていい気がする。
3mのちくわ(20禁) @tikuwa_zero 2017年7月12日
そうした事例に関しては、実在ないしそれを類推可能な対象が名指しされた時点で、脅迫や威力業務妨害が成立するから、また違う話。そも「○○死ね」は願望なのでセーフ(刑事の話で、民事は別)、「○○殺す」は殺害の意思が明確だからアウト。 RT SheenaHirohito:事例が違うので汎化はしづらいが、例えば「小女子を焼き殺す」や「〇〇死ね」(「〇〇殺す」は時と場合による)も特段明白かつ現在の危険がない限りはそっとしておいていい気がする。
3mのちくわ(20禁) @tikuwa_zero 2017年7月12日
tikuwa_zero 注釈するが、小女子事件で容疑者が威力業務妨害で逮捕された一番の原因は「明日午前11時に丹後小学校で小女子を焼き殺す」と書いた点。「丹後小学校」は埼玉に実在する小学校で、「小女子」が「こうなご」なら問題ないが、「小学生女子」の書き損じないし隠語であれば、それは紛れもない殺害予告だからね。しかも時間指定があるため事態は逼迫しており、逮捕されるのは当然。
3mのちくわ(20禁) @tikuwa_zero 2017年7月12日
tikuwa_zero 補足だが、小女子事件が起きたのは2008年6月29日。これは秋葉原通り魔事件(これ自体も犯行前に、犯行を仄めかす内容の書き込みがインターネットの掲示板でなされていた)が起きた同年同月8日の直後で、犯罪予告通報サイト「予告in」が同年同月12日に公開されたばかりという影響も極めて大きい。
体を表さない名 @shirokia 2017年7月12日
まとめ主のツイは解りやすかったが、その後は理解が追い付かない…補足解説いただけると有難いが…
椎名裕仁🍎( '-' 🍎 )固定にNoteへのリンクあるぱよ🇭🇷🇻🇳👮🏻‍♀️ @SheenaHirohito 2018年9月2日
tikuwa_zero 「小女子(こうなご)」を「小学生女子」の隠語と読む時点で引っかかる話ではありますね。
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