差別表現は表現の自由の対象外か ――枠組の整理+α
- kyoshimine
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こちらのまとめの派生まとめです。
こちらの2つが、きっかけとなったTweetです。
大変な誤解があるようなんだが、 差別的表現も侮辱的表現も扇動的表現も表現の自由の範囲内なんだ。ただ、被差別者・侮辱された者・攻撃対象者にはこれらを拒絶し差止を求め損害や苦痛の回復を求める権利があり、場合によっては処罰を求める権利もある。
2017-07-11 09:26:38自治体に徒党を組んでクレーム入れて、講演つぶすのも、表現の自由でいいんですかね? それでいいと割り切ってる法律家もいますが。 twitter.com/kmuramatsu/sta…
2017-07-10 23:15:24まぁ、その理屈でもいいんですが、弱い人、少数派が不利なゲームになりませんかね? 僕は、香山リカ氏の講演、妨害は、すべきでないと考えていますが。
2017-07-10 20:33:50その1 表現の自由の範囲外か公共の福祉ほかによる制限か
大変な誤解があるようなんだが、 差別的表現も侮辱的表現も扇動的表現も表現の自由の範囲内なんだ。ただ、被差別者・侮辱された者・攻撃対象者にはこれらを拒絶し差止を求め損害や苦痛の回復を求める権利があり、場合によっては処罰を求める権利もある。
2017-07-11 09:26:38これは、以下のどちらの判断枠組を取るべきかという憲法の解釈問題なんだけど、たいていの法律家は後者を取ると思う。 「差別表現は表現の自由の対象外で、立法により制限され得る」 「差別表現は表現の自由の対象だが、公共の福祉により正当化できる範囲で、立法により制限され得る」 twitter.com/un_co_the2nd/s…
2017-07-11 10:39:472つ説の説に名前をつけなかったのは、失敗でした。たいそう分かりづらい。
1つ目を「範囲外説」、2つ目を「制限説」として、以下適宜欄外から注釈します。
別に後者(差別表現も表現の自由の保護を受ける説)を取ったから、差別表現を規制できなくなるわけではない。 「差別表現かどうか」で判断するか、「公共の福祉」で判断するか、という違いなので、後者でも公共の福祉の範囲内で制限立法は可能。
2017-07-11 10:47:03「後者」というのは「制限説」
以下、「制限説」の考えられる理由付けです。
どうして差別表現も表現の自由に入れたいかというと、いくつか理由がある。 まず、憲法が「集会、結社及び言論、出版その他*一切の表現*の自由は、これを保障する。」としていることが大きい。差別表現は「一切の表現」に含まれないという解釈は、ま、自衛隊が戦力じゃないという解釈くらいは苦しい
2017-07-11 10:57:56仮に、差別表現を、侮蔑的表現、扇動的表現を「一切の表現」から除外すると解釈すると、その解釈がどこまで広がるか、コントロールできなくなるおそれがある。 これは実害として結構大きい。
2017-07-11 12:01:56それから、「差別表現(侮蔑的表現)にあたるかどうか」という基準よりも、「公共の福祉にあたるかどうか」という基準の方が、様々な事情を取り入れて柔軟な判断ができるので、基準として優れているという判断もある。
2017-07-11 12:02:53「前説」というのは、「範囲外説」
他方、差別表現規制派が前説(差別表現は表現の自由の範囲外説)を取りたがる法的な理由もある。 「公共の福祉」の解釈について、内在的一元的制約説というのがあって、ざくっというと、他者の人権侵害との調整だけが人権を制限できるという考え方。
2017-07-11 12:17:46この「公共の福祉」の解釈は、憲法の人権論の中核にある大事な考え方なんだけど、これが差別表現規制と相性が悪い(面がある)。だから、「公共の福祉」による制約という議論を避けて、そもそも差別表現は表現の自由の対象外という大上段の議論に行きたくなる。
2017-07-11 12:20:07ただ、ここは色々と理屈をつけることは可能なので、前説を取らないと差別表現を規制できないということではない。
2017-07-11 12:20:59あとは法的というより、情緒的・政治的な話があって、「ヘイトスピーチは、マイノリティを傷つける魂の殺人であって、そもそも表現の自由の対象外なんだ! えいえいおー!」という景気づけをやりたいから言っているという側面がある。逆に、後説は、なんとなく表現の自由を大事にする雰囲気は出る。
2017-07-11 12:23:37後説というのは、「制限説」です。
最高裁判例の立場
昔の判例は「範囲概説」とも「制限説」とも取れる判示をしていましたが、平成2年の比較的新しい判例は「制限説」と思われます。
例えば、最大判昭和31年7月4日民集10巻7号786頁 「しかし、憲法二一条は言論の自由を無制限に保障しているものではない。そして本件において、原審の認定したような他人の行為に関して無根の事実を公表し、その名誉を毀損することは言論の自由の乱用であつて、」
2017-07-11 12:28:39ここまで読むと、「乱用」(濫用)というのだから、表現の自由の範囲内なんだろうなと考える。しかしこの続きのところは、 「たとえ、衆議院議員選挙の際、候補者が政見発表等の機会において、かつて公職にあつた者を批判するためになしたものであつたとしても、→
2017-07-11 12:30:00これを以て憲法の保障する*言論の自由の範囲内に属すると認めることはできない*。してみれば、原審が本件上告人の行為について、名誉毀損による不法行為が成立するものとしたのは何等憲法二一条に反するものでなく、所論は理由がない。」 としていて、表現の自由の範囲外だと言っている。
2017-07-11 12:34:01