オペレイション・レスキュー #2

翻訳チームによるサイバーパンク・ニンジャ活劇小説「ニンジャスレイヤー」リアルタイム翻訳 (原作:Bradley Bond-san & Philip Ninj@ Morzez-san) ニンジャスレイヤー公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 続きを読む
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

第二部「キョート殺伐都市」より:「オペレイション・レスキュー」 #2

2012-06-18 14:39:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(廃ビルのそのフロアはかつてオフィスであったと見え、壁は無く、虚無的に広かった。光源はUNIXモニターと、そこへLAN直結した小型ドロイドの赤い光のみ。弱い電子の灯りが、モニタを覗き込む者たちの顔を一色で照らす。)

2012-06-18 14:41:45
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(「……ヨロシサン」三人のうちの一人、大柄な男が呟いた。「面倒がまた増えたかね……」その額にはスティグマめいた黒い印。男は続ける「まぁ何だ。今までむさ苦しかったんでなぁ、美しい女性とミッションに臨むとなりゃ元気百倍。多少の余分の面倒もなんのそのよな。な!」「ふふ……」)

2012-06-18 14:41:58
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(女はただ静かに笑った。モデルめいたスタイルを隠さぬレザーのライダースーツ。「……だよな?」大柄な男はもう一人の男にしつこく相づちを求めた。「すまんな」もう一人の男が美女に言った。ハンチング帽を被り、トレンチコートを着ている。 )

2012-06-18 14:42:12
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(「なかなか雰囲気あっていいじゃない」女は微笑み、言った。女の名はナンシー・リー。大柄な男はタカギ・ガンドー、またの名をディテクティヴ。そしてもう一人はフジキド・ケンジ……ニンジャスレイヤー。)

2012-06-18 14:42:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

この廃ビルはキョート城潜入の下準備ミッションのひとつ、いわば「ヨロシサン・アタック」の開始地点であり、ナンシー・リーとの合流座標でもある。彼女がオバンデス航空旅客機ファーストクラスから降り立ってから半日も経っていない。ガンドーと彼女はこの廃ビルで顔を合わせた。つい先頃である。 1

2012-06-18 14:49:34
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ナンシーはモニタから離れ、窓まで歩くと、朽ちたバンブー・ブラインドの隙間を指で拡げた。廃ビルはガイオンの端にわだかまるバイオ森林を臨んでいる。そして緑に覆われたキョート双子山を。山の斜面では毎夜、カンジの形で並べられた松明が燃やされるのだ。「焼畑アートの時間には少し早いわね?」2

2012-06-18 15:05:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ああ。だが、夕焼けもいいもんだろ」ガンドーはZBRタバコを吸いつけ、ナンシーのそばに立った。「ありがたい夕焼けだ……ガイオン市民の半数以上は、これすら一度も拝めずに死ぬ。観光にゃ十分さ」 3

2012-06-18 15:08:38
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この廃ビルから見下ろす光景が、そのまま今回のミッションの概略地図でもある。眼下の森林の中に、ヨロシサンの廃プラントが隠されている。諸要因によって、セキュリティがアップデートされぬまま放置されたプラント……目当ての暗号プログラムを回収するならば、このプラント以外に無い。 4

2012-06-18 15:20:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガンドーの言う「面倒」とは、当然、ニンジャである。廃棄にはそれなりの理由があったと言うわけだ。詳細な解析によって、あまり嬉しくない追加情報がもたらされた格好である……「避ける事ができりゃあ一番いいんだが、そうも行かんだろうな!」ZBRR成分も手伝い、ガンドーの語気は強い。 5

2012-06-18 15:36:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「バイオニンジャとは、何度かやった」ニンジャスレイヤーは机のふちに腰掛け、両手を握ったり開いたりしながら言った。「侮れぬ力を持つが、イクサは化学ではない。結局はカラテだ……しかも正気を喪っているとあらば」「まあ、備えるしか無いわな」とガンドー。「そうだ」 6

2012-06-18 15:39:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「『ボタニック』。クローンヤクザに光合成機能を付加する実験の過程で生み出された個体」ナンシーは端末に戻り、バイオニンジャのより深部の情報を展開した。「隠滅記録、もっと見る?」「出発は早い方がよかろう」ニンジャスレイヤーは床に立った。「後にダイジェストで送信してくれ」「そうね」 7

2012-06-18 15:47:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「光合成とはまた」ガンドーはタバコを捨てて踏み消し、二丁マグナムを確かめながら呟く。「何でもやってみりゃいいってもんじゃねえだろう」「ヨロシサンとはそういう企業だ」ニンジャスレイヤーは低く言った。「倫理など、はなから持ち合わせておらぬ」 8

2012-06-18 15:50:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「重点!」モーターチイサイがフラフラと飛行。ガンドーがキャッチし、懐にしまいこむ。「そのドロイドに……」「モーターチイサイな」とガンドー。ナンシーは頷き「とにかくその子に、追加機能をインストールしてある。電磁パルス反応をわたしのUNIXに送信して、プラントの位置を計算するの」 9

2012-06-18 16:01:13
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「足で稼ぐわけだ」とニンジャスレイヤー。ナンシーは頷く「そう言う事ね。ドロイドがレーダーの役割をする。こちらから逐一、プラントが存在する方角をガイドできると思う。LANは森林全域をカバーしているし、ここから何でもやるわ」「浮かねえピクニックの始まりだな」ガンドーが言った。 10

2012-06-18 16:14:21
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洞穴の外で日が沈んだ。フォレストは立ち上がった。応急処置を施されたフロッグマンがゴザの上に横たわる。研究員として彼らバイオニンジャを取り扱っていたフォレストは、彼らに関する解剖学的知識も当然持ち合わせる。バイオ蛙とフロッグマン本体は一心同体。蛙がこれほど傷つけば……厳しい。12

2012-06-18 16:47:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フロッグマンの身体から管で繋がっている切り裂かれた巾着袋めいたものが、蛙の成れの果てだ。処置は済ませた。ここからの回復を……奇跡を期待するのなら、少なくともバイオインゴットが必要だ。メディキットも要る。このままこうしておれば望みはゼロだ。 13

2012-06-18 16:49:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニィー……」洞窟の奥の闇で、セントールが身じろぎした。「……オニイサン」「おれはお前の兄では無いぞ」フォレストは何度も繰り返した訂正を再び行なった。「とにかくおれは動かねばならん」フォレストは鉛筆を舐め、拡げた紙に書かれた森林地図に、線を書き加えてゆく。 14

2012-06-18 16:55:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

この地に関する情報は断片的に彼の手元にある。これまでの略奪行為で得た情報は、彼とフロッグマンとでそのつど吟味し、地図を作成し、潜伏や更なる略奪行為のガイドとしてきた。「ここはヨロシサン所有の森林だ」フォレストはセントールに言った。思考の整理の為だ。「プラントを探す」 15

2012-06-18 17:07:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」セントールは答えない。フォレストは言った。「フロッグマン=サンをしっかり守るのだ」「ニィー……」フォレストはナイフひとつひとつをあらため、再びホルスターに納めてゆく。さきのイクサで結構な数の武器が失われた。これについても再調達が必要だが、今考えるべき事では無い。 16

2012-06-18 17:16:53
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「大……将……」フォレストはフロッグマンを振り返った。フロッグマンは瞬きした。「ざまあねぇぜ……」意識を取り戻したのだ。「無理をして喋るな」「ノトーリアスじゃ無かったよな、あいつ……気が散ってよ……」「赤十字を襲い、医療物資を調達して戻る。それまで持ちこたえるのだ」 17

2012-06-18 17:27:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「麓の森か、ここは」フロッグマンは震えた。フォレストは頷く「そうだ。施設が必ずある」「やめろ……ハイドラの鼻が感じ取ってたろ……ヤバイんだよ、ここは……。おい、あいつは?ディスターブドは……?」フォレストは一瞬ためらい、そのあと首を振った。「ディスターブド=サンは戦死した」 18

2012-06-18 17:32:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」フロッグマンは息を吐いた。「死んだか」「奴には悪いが、葬式はもう少し後だ。お前のための医療物資を確保し、同時に、捕虜収容施設を襲撃する。ハイドラ=サンは集合地点に現れなかった。敵の手に落ちたおそれがある」「確かに奴は殺しても死なねえ……ディスターブド以上に……」 19

2012-06-18 17:39:19
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「敵はヨロシサン製薬。ゆえに、この森のプラントを奴らが一時拠点とするのは自然だ」フォレストは言った。「医療物資を求めれば、捕虜にも辿り着くだろう。そのように状況判断する。クスリとハイドラを連れて戻る」「おい……この森……深入りは……」フロッグマンは喋りながら気絶した。 20

2012-06-18 17:44:38