ノルウェーとベラルーシの旅(補遺)

あんどーさんたちは、無事にそれぞれ帰国できました。ノルウェーやベラルーシで考えたこと、思い出したことのツイをまとめておきます。 ノルウェー到着まで。http://togetter.com/li/381838 ノルウェー編。http://togetter.com/li/382052 ベラルーシ編。http://togetter.com/li/385236
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安東量子【告知専用】 @ando_ryoko

ブラギンで最初に訪れた、人口が半減してしまったというテルマン村のガリアさんの家で、4~5月にかけてのご先祖のお墓参りシーズンに避難した人たちも訪れている、という話を聞いたあと、「避難した人たちが帰ってくればいいな、と思うことはありませんか?」と尋ねてみた。

2012-10-14 21:34:18
安東量子【告知専用】 @ando_ryoko

言下に「それは無理です」と、彼女は答えた。「彼らの家は、もうなくなってしまった。帰ってこようとしても、もう無理です。」2年前に、空き家となった家は、すべて取り壊された、という話を聞いたところだった。(それまでは、放置されていたのだ。)

2012-10-14 21:36:41
安東量子【告知専用】 @ando_ryoko

これが、26年、という歳月。避難した時期にもよるだろうけれど、20年もの間、廃墟となった多くの空き家を見ながら暮らした、ガリアさんたちの気持ちを考えて、その後、墓参りには訪れるという避難した人たちのことを考えた。庭には花がいっぱい、家の前には、ヤギが繋がれ、アヒルが放されていた。

2012-10-14 21:39:23
Yoshihiro Sato @yoshisatose

ノルウェーでの視察・研修で、いくつか思い出したことを書いておきます。

2012-10-15 08:22:24
Yoshihiro Sato @yoshisatose

行政が住民の信頼を得るということの重要性。ノルウェーでも、チェルノブイリ事故直後は初動が遅れ、私達が訪れたValdres地方で比較的高い汚染が明らかになるまで1ヶ月かかったという。首都オスロでは汚染が軽微だったため、中央当局の役人は「特に対策は必要ない」と甘く見ていたようだ。

2012-10-15 08:23:23
Yoshihiro Sato @yoshisatose

だから、汚染が明らかになった後に、地元の人々が中央当局に対して抱いた不信感は大きかった。しかし、地元で献身的に食品の安全検査を行っていた保健所の職員(アンマリーさんら)は、人々の信頼を維持することができたという。

2012-10-15 08:24:41
Yoshihiro Sato @yoshisatose

首都オスロの中央当局は、汚染計測拠点を人口密度の高い場所に設置した。そのため、アンマリーさんら地元の人たちは田舎のValdres地方(国内に落ちた放射性物質の半分がこの地域に!)にも設置して欲しいと要求。結局、地元の人々でお金を集め寄って86年9月に測定機器を自分達で購入した。

2012-10-15 08:25:49
Yoshihiro Sato @yoshisatose

それ以前は、土壌や食品などのサンプルを車で数時間かかるリレハンメル(←冬季五輪!)まで送らなければならなかったし、国は検査結果を公表しないこともあったという。だから、自分達で購入した測定機器が大いに活躍することになった。

2012-10-15 08:26:38
Yoshihiro Sato @yoshisatose

購入した機器は大きく、アメリカ製で、もともと実験室で使うために作られていたが、アンマリーさんらはリュックに入れて担ぎながら、屋外での放射線測定に使った。そのことをメーカーが後になって知ると「そんな使い方もできるのか!」とビックリされたという。

2012-10-15 08:27:10
Yoshihiro Sato @yoshisatose

アンマリーさんはそのような機器を使いながら、地域の土壌の汚染や食品の汚染を検査し、その結果を公共ラジオの地域版チャンネルでこまめに放送したらしい。谷の多い地域なので、天候によっては電波が届かない地域もある。「聞こえなかったから再び放送してくれ」という電話が住民からあったことも。

2012-10-15 08:28:17
Yoshihiro Sato @yoshisatose

そんな経緯があったから、地元の人々は「中央官庁の人たちは信頼できなくても、あなた方、地元の保健所の人たちは信頼できる」とアンマリーさんたちに言ってくれたらしい。以上のエピソードは、アンマリーさんをはじめ、地元で食品測定をしていた人たちが話してくれたものだが、

2012-10-15 08:29:07
Yoshihiro Sato @yoshisatose

今回、案内してくれたアストリードさんやラヴランスさん(2人とも中央官庁である放射性安全庁の職員)も、事故の後に汚染計測・汚染対策や住民とのコミュニケーションに非常に重要な役割を果たしたのは、地元の保健所同士のネットワークと、その職員と住民との間の信頼関係だったと語っていた。

2012-10-15 08:30:17
Yoshihiro Sato @yoshisatose

中央官庁は地元住民に不人気だったわけだが、生産者(牧畜・酪農家)との信頼関係はその後、次第に回復して行ったようだ。生産者は事故後2、3年は基準値超えが多く、出荷できない製品の廃棄が相次いだ。それは非常に悲しいことだったと、ある生産者は語ってくれた。

2012-10-15 08:41:55
Yoshihiro Sato @yoshisatose

しかし、行政と協力しながら、プルシアンブルーや生体検査など様々な汚染対策が試みられ、その技術が確立してくると、廃棄に回される製品が減っていき、生産者は次第に自信を取り戻していった。汚染を自分達でコントロールできるという実感も、自信につながって行ったと言う。

2012-10-15 08:42:34
Yoshihiro Sato @yoshisatose

その過程で、行政の職員や大学・研究所の研究者が定期的に生産者のもとを訪れ、アドバイスしたり、生産者が抱える問題に耳を貸したという。

2012-10-15 08:42:58
Yoshihiro Sato @yoshisatose

私達が訪ねた生産者(牧場経営者)も、行政の職員とのやり取りには満足していると言っていた。行政職員が目の前にいたから、そう答えた、とか、アストリードさんがそう答えそうな生産者を選んで私たちを連れて行った、と疑う人もいるかもしれないが、

2012-10-15 08:43:40
Yoshihiro Sato @yoshisatose

ノルウェーもスウェーデンと同様、たとえ相手が行政の職員(日本で言う、いわゆるお上)であれ、誰であれ、対等でカジュアルな関係を保ちながら、自己主張はしっかりするし、問題は問題としてはっきり言うだろうから、その恐れは無いと私は思う。

2012-10-15 08:44:28
Yoshihiro Sato @yoshisatose

生産者の話を聞きながら感じたポイントは、なるべく同じ職員や専門家が住民や生産者との接点を持ち、コンタクトパーソンになること。生産者の一人も「いつもだいたい同じ人が来てくれた」と語ってくれた。担当者がコロコロ変わっては、住民・生産者との信頼は築けない。

2012-10-15 08:45:15
Yoshihiro Sato @yoshisatose

それから、住民・生産者と接点を持つ職員は、きちんとした専門知識を持ち、さらに行政組織内での一定の発言権や決定権を持った人であること。浅い知識しかなく、上司と住民との橋渡ししかできない行政官では、住民・生産者のほうよりも上司の顔色ばかり窺いがちになる。発言も責任を欠いたものとなる。

2012-10-15 08:47:02
Yoshihiro Sato @yoshisatose

今回案内してくれた放射線防護庁のアストリードさんやラヴランスさん、そして、地元保健所の元職員のアンマリーさんや、食品安全庁のトールさんなどは、ノルウェーの典型的な「役人」なわけだが、皆それぞれの分野の専門知識を大学で学んだ上で、その能力が必要とされる求人に応募して職員になった人。

2012-10-15 08:48:28
Yoshihiro Sato @yoshisatose

そして、組織内では基本的にずっと同じ分野の仕事をできるし、その分野の管理職にも就く。アストリードさんは理学修士、ラヴランスさんは理学博士で、ラヴランスさんのほうが年上だが、アストリードさんは今や課長で、ラヴランスさんの上司だとのこと。

2012-10-15 08:49:22
Yoshihiro Sato @yoshisatose

彼らのような技官とは別に、行政機関の中には法律解釈の専門職や、経理・人事などのもちろん専門職もある。いずれにしろ、どの職員も専門の技能を持ち、その技能を必要とされる求人に対して求職活動する。採用後の定期的なローテンションなど基本的にない。

2012-10-15 08:50:08
Yoshihiro Sato @yoshisatose

結果として、それぞれの職員は自分の能力を各分野で発揮できるし、経験の蓄積もできる。同時に、一定の裁量もあるので責任も負える。一般社会との接点も継続的に維持し、信頼関係を築ける。(これは、スウェーデンでもノルウェーでも、行政一般に言えること)

2012-10-15 08:51:27
Yoshihiro Sato @yoshisatose

私は以前から、日本のようなジェネラリスト養成の雇用のあり方が、様々な問題を生み出していると感じてきた。ノルウェーの視察では、それとは逆の、専門家集団による行政の良いところが、適切な対策の構築や採用、技術の確立、人々との信頼関係の醸成につながっているように感じた。

2012-10-15 08:52:16
Yoshihiro Sato @yoshisatose

それから、「役人」が肩肘張らず、カジュアルに一般の人々と付き合える気楽さも重要。(話は尽きないが、話が横道にそれそうなので、この辺で終わり。ノルウェーの食品基準値について考えたことは明日書きます)

2012-10-15 08:54:15
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