チェルノブイリ小児甲状腺癌に関するCardisらの論文についての牧野さんの考察についてちょっと考えてみた

以下のまとめの続編です。 関連するまとめ ①http://togetter.com/li/433867 ②buveryさんが同じ内容についてまとめて下さいました http://togetter.com/li/433865 続きを読む
8
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

で、そうやっているので被曝時低年齢の患者に対しては被曝時低年齢の対照がそれぞれ(層別化された)組となって条件付ロジスティック回帰の係数が推定される。

2013-01-06 22:46:31
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

なお、条件付ロジスティック回帰モデルを他のデータに外挿するのは禁じ手、というのは疫学業界ではよく知られた(あまり明文化されたものではないが)常識であったりするので、念のため。

2013-01-06 22:46:45
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

で、「論文にもちゃんと書いてあるが(中略)発がんリスクも低年齢のほうが高いので、被曝によるがんは低年齢層で発生してい るのに対してバックグラウンド群のは高年齢層で発生」はResultの冒頭なら明らかな誤読と思われ。

2013-01-06 22:47:03
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

ここでいっているのは、ロシアの3地域(Kaluga, Orel,and Tula)の症例は事故時の平均年齢が高いので、(年齢が上がれば罹患率が上昇する)被曝によらない(自然発生の)甲状腺癌を含んでいる可能性がある、ということ、つまり逆。「過小評価」バイアスで目が曇った?

2013-01-06 22:47:39
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

そうだとすると、逆に低線量域(上記3地域は一番汚染が軽い)での過剰見積もりにつながっている可能性があるわけ。まあ、この論文の記述もその程度でそんなに上がるか?という気もするが。

2013-01-06 22:47:55
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

いずれにしても、がん自体は年齢が上昇すると自然発症が増加する。放射線による影響は被曝後いつ出るかわからない、これが曲者。チェルノブイリの小児甲状腺癌はたまたま影響が早く出た例。

2013-01-06 22:48:14
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

恐らく、今後も(もはや小児ではないが)甲状腺癌の累積の発症者は増えていくが、被曝によらない甲状腺癌も増えていき、ERRは小さくなっていく一方で、EARは大きくなっていくということになる。

2013-01-06 22:48:25
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

で、前からいっているけれど相対リスクだけで見ていると「真の被害」を見落としがちにもなるわけで。確かに「小児甲状腺癌が●倍に!」というのはインパクトあるけど、仮にERRが微小でもバックグラウンドの発症率や死亡率が高い疾患の方が実際には被害が大きかったりする。

2013-01-06 22:48:37
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

仮にERR=100でも「まず発生しない病気」なら、リスク因子に曝されても10万にほぼ0人→1人に増える程度である場合もあれば、ERR=0.1でも、もともと10万人のうち1万人が罹患する疾患なら、罹患者が1000人増えることになる。

2013-01-06 22:49:13
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

なので、相対リスクばかりに目をやらずに、絶対リスクについてもきちんと評価することは必要なのだが、そういったところは案外見過ごされがちなんだよな。

2013-01-06 22:49:28
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

まあ、こういう間違いは論文の査読とかやっていると結構専門家でもやりがちだというのは経験上知っているので、この例を以て牧野さんが疫学に対して無知だというつもりは全くないが。

2013-01-06 22:50:22
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

いや、正確には問題ありまくりだから… RT jun_makino 正確には、問題ないことがじゃなくてこのまとめで書いてあることについては問題ないことが、です。

2013-01-07 23:00:45
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

http://t.co/HeVsqRt0 - ある集団でこのようにリスク因子の曝露により疾患が発生したと考えると、曝露群の罹患率はA/(A+B)、非曝露群の罹患率はC/(C+D)で、相対リスク(RR)=A(C+D)/{C(A+B)}。コホート研究ではこの値が出てくる。

2013-01-07 23:02:11
拡大
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

一方、症例対照研究ではオッズ比(OR)AD/BCが出てくる。なので、C<<D、A<<Bのときはオッズ比はRRに漸近するけれど、曝露群や非曝露群の罹患率そのものは研究デザイン上得られない。

2013-01-07 23:04:09
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

http://t.co/in8htie8 - で、問題になっているのはこういうこと。例えば実際の集団での分布がこのような場合、RR=(90/1000)/(5/1000)=18ということになる。一方、OR=90*995/(5*910)=19.68。

2013-01-07 23:05:29
拡大
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

http://t.co/kjPJdqgr - で、牧野さんが問題にしている状況は、例えば分布がこんなことになってしまったことを意味していると考えられる。Aの場合、RR=4、OR=4.26に、Bの場合、RR=6、OR=6.68にそれぞれなる。

2013-01-07 23:06:23
拡大
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

全然症例対照研究は「過小評価」になっていないわけで。これは、「影響を小さく見積もる」ことではなく、「ERRの真値が下がった」状態であるだけ。

2013-01-07 23:06:54
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

そもそも、症例対照研究で得られるORは非曝露群の罹患率が高い場合、リスク因子曝露による影響をその真の値であるRRを過大に見積もる傾向があるわけで、それが問題の一つなんだけどな(まあ、そういう場合は比較的早期にコホート研究ができるわけだけれど)。

2013-01-07 23:07:52
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

ちなみに、因子曝露によりリスクが減少するような場合(例えばワクチン接種とかによる感染症発生)、ORは逆にRRを過小に見積もる傾向がある。

2013-01-07 23:08:09
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

で、Cardis論文の結果の冒頭部分の記述の解釈は正確には「母集団の真の相対リスクが低い集団になってしまった可能性がある」ということ。これを「Case control studyのばあい、リスクを小さく見積もる」といったらそれは端的に間違いと思われ。

2013-01-07 23:08:28
地下楽師@Ph.D @tonkyo_Vc

まあ、このところが理解が不十分であったのか、なんとしても「過小見積もり」という結論に持って行きたいがゆえの強弁か、間違えを認めたくないからあのようにツイートしているのかは私にはどうでもいいことだけど。

2013-01-07 23:08:43