「葬室からの励と責～イット・カムズ・レイド」#6

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瀕死の師弟は激痛に呻きながらも笑みを浮かべていた。やはりエイクリー家の血！本人の修練の成果と血筋の力、ロンが無自覚に抑え込んでいたそれがこの土壇場で覚醒したのだ。自分を卑下・過小評価するがゆえに、才能がスポイルされていたのだ！それが今、目覚めた！ 25

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『こちとら夕食がまだなんだから早くしてよね。そういうのは自分のだけで間に合ってるんだよそういう三文小芝居。さあ早く台詞全部言って適当に攻撃しかけて逝った！逝った！』ホワイトの圧倒的な悪意に気圧されながらもロナルドは睨み返す！そして全身から巻き起こる暴風を敵へと解き放つ！ 26

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風速百ｍ級超極地爆風がホワイトに襲い掛かる！そして…彼が突き出した足、正確には金の足輪に吸い込まれていく。「！？」『今欲しいんだよね……君の命』シュッと右手でロナルドの顔を指差す。ロナルドはその指を睨みつつ、風の勢いを強めるが吸引は止まらない！『これ、風結輪ウインズノット』 27

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『ご覧の通り風や衝撃波を吸いこむ。普通は高速移動時の余波を吸いこむんだが、こういう事も出来る。いや今回準備期間短かったから、お前らの中で最強の奴が風使いで助かったわ。お蔭で基本装備だけで対策がし易かったわ…いや、助かる』一見余裕だが、その足は風刃に切り裂かれズタズタだ！ 28

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ここまでで唯一最大のダメージだ。そして足及び全身と連動しているらしい金輪もカタカタと揺れ始めている。許容限界が近いのだ。ロナルドには希望が見えていた。一方の自分の魔力はまだ6割以上残っている！目覚めたばかりのこの力だが、この技の維持をし続ける自信はあった。このまま押し切る！ 29

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限界まで風を吸収させ、輪を破壊する！そして溢れた風と外からの風でホワイトを切り刻む！そして皆でＵＡＲに凱旋だ！少年が笑みを浮かべたところで、ふとホワイトが先程のナイフを右手で無造作に正面に突き出した。ロナルドは警戒する！しかし投擲動作にしては真っ直ぐに伸ばし過ぎている。 30

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あれでは腕のバネなど利かない。何のつもりだ！？いずれにせよ、と彼は風速を強める。投げて来ようが突っ込んで来ようが、これで押し戻す！吸引しきれない分がビルを徐々に揺さぶり始める！「ロン！加減しろ！魔方陣が壊れる！」ストーンが叫ぶ！「！？……は、はい！」 31

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ホワイトを抑え込む威力を出しつつ、ビルを破壊しない。その加減は覚醒したての彼には非常に困難だった。既に結界は薄れつつある。それも元々ビルの強度をあまり強化するものでは無い。皮肉にもホワイトの輪が風を吸っているおかげで辛うじてバランスが取れている状態だった。 32

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もしこのままホワイトを殺して…殺せてしまったら風が暴発し、ビルが壊れるのでは？ロナルドはその可能性に気付き一瞬動揺！そこを見逃すホワイトでは無い！仮面越しにすら分かる邪悪な笑み！その眼が正にこの世全ての邪悪！覗き込んだなら妖精すらショックで落命するだろう！ 33

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ホワイトがスイッチを押す！『タリスマン・アクセル…ハイ(High)！…ビフォア・エンドレスヘル』ｷｭｵｰﾝ…ﾀｶﾀｶﾀｯﾀ！ｷｭｵｰﾝ…ﾀｶﾀｶﾀｯﾀ！！刃を手に持ったまま再び起動！突き刺さないのか！？…風が、収まっていく。風速80ｍ、40ｍ、20ｍ、10ｍ…。「え…？」 34

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終いにはそよ風、いや隙間風並みにまで威力が減じてしまう。「え…？」『これ、強化した全開なら術の無効化位は出来るんだよね…いつも龍型の無力化に使ってるんだけど…知らなかったかな？』言葉の意味も、事実さえも頭に入ってこない。代わりに白い刃物が右肩に入ってきた。「う」 35

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「あ、ああ、あああ、あ」ｷｭｵｰﾝ…ﾀｶﾀｶﾀｯﾀ！魔術封印！同様にして、クインス、クライムストーンも無力化。出力にもよるが、まともに受ければＡランク魔術師でも1・2時間は魔術行使が出来なくなるのだ。Ｂ以下の彼等では一溜りも無い。それからホワイトは徒弟2人の髪を掴んだ 36

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苦痛に呻く彼等を引き摺って歩く。そして彼等の師の眼前に蹴り飛ばし間に入る。正面にストーン。背後に二人。互いの表情が見えぬように調整してしゃがみ込みストーンに話しかける。前だけに聞こえる声で『さて、部下を助けたければ…お前の手で殴り飛ばせ、ＯＫ？』「何だと！？」 37

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訝しがるストーンの声は後ろには届かない。後ろの二人に聞こえたのは『さて、助かりたいならお前の手で部下を殺せ、ＯＫ？』『何だと！？…そんなことが出来るか！』この合成音声も前には届いていない。ホワイトはなぜこんな真似を！？ 38

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『ペインアクセル・えー……十～倍（テン・ターイムズ）！』後ろにも見える動きで、ストーンの腹を刺す！「ウグアアッッ！」刺す！「ウグアアアッッ！」刺す！「ウグアアアッッ！」『で、どうする？』「分かった！殺すなら！俺だけに、しろぉっ！」クライムストーンはと部下を庇い要求を呑む！ 39

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だが、その声は彼の徒弟には届かない！彼等の耳に入ってきたのは、『わ、分かった！助けて、くれ！助けてくれ！』『殺すか！？』『殺す！だから俺だけは助けてくれ！』ホワイトによる捏造音声！だが、この捏造音声は先程ワイドリバーのもので見せている。彼等はまだ信じはしない！絆！ 40

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ホワイトの後ろからクライムストーンが歩み寄ってくる。『一言でも発して見ろ。さっきの話は無しだ』ホワイトが冷ややかな声を彼の耳元だけに直接作り出す。緊張するストーン。もう魔術を使えない。弟子だけでも救うのにも、意図の分からぬホワイトの提案に乗るより他は無い。「マ…スター？」 41

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呆けた顔の二人を前にストーンは拳を握る。「マスター？」『手加減はするなよ？殺さない程度には加減していいが』再警告するホワイト。ストーンは逡巡し、そして「ッ！」「グワアー！？」「ッ！」「うわーっ！？」素の腕力で二人を殴り飛ばす！ダメージと魔術麻痺により、力の抜けた攻撃である。 42

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だが、殴られた二人もそれは同じ。数メートル後方に吹っ飛ぶ！『ごくろう、なんたらストーン！』二人を殴り終えたクライムストーンの顎をホワイトが蹴り飛ばす！下顎が吹き飛び、鮮血が噴き出る！瓦礫の近くの床に叩きつけられる！『そんなヘナヘナ腕力じゃ殴り殺せないだろうなぁ…もういいや』 43

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「アガッ…ア…ア」殴り殺す？ストーンは疑念を抱くが、それを声に出そうにも顎が壊れている。『残念だが、言う通りにすればお前を助ける…と言った覚えは無いぞ？』実際言っていない。意味が分からずストーンは戸惑う。一方、二人は今の一撃のせいで師が裏切ったと遂に誤解してしまう。 44

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彼等は先程まで声真似の可能性を疑っていた。だが師は指示されるまま自分達を殴ってきた。常日頃からの絆を今更疑うものでは無かったが、拷問により師は壊されたのだと彼等は誤認識してしまった。ホワイトの合成声については元より知られており、彼の特徴の一つと広く認識されている。 45

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が、その応用で人の声を消せることは知られていない。手の内を部分的にだけ明かす悪質な罠であった。「マスター！」「マスター！」二人の声は殆ど悲鳴に近かった。ホワイトは『ホワイトは絶望の表情を浮かべる二人に迫る！さあ、殺せ！ホワイト！』「た、助けて！」 46

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ホワイトの超前傾姿勢からのアッパー！クインスが打上げられる！そして後方に回り込んでの回し蹴り！（やめろ…！）ストーンが声なき声で叫ぶ！その彼の顔に頭部を蹴り飛ばされたクインスが激突！その死に顔は苦痛と苦悶、そして…悲しみが浮かんでいた。 47

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彼は最後まで、ストーンが裏切ったとは思っていなかった。ただ『弟子たちを殺してでも生き残ろうと思ってしまった』師の心情を慮っての悲しんでいた。だが激痛と頭部への衝撃で崩れたその表情は、朦朧とする彼の師の視界には憎悪と失望にしか見えていなかった。 48

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ホワイトは再びロナルドの方を向く。「ひっ！」クインスの死体がストーンの上から滑り落ちる中、ホワイトはスキップで次の犠牲者の元へと移動していく。鼻歌でも歌いそうな足取りだった。『♪～』いや歌っていた。「た、助けて！マスター！！」『アイツが？さっきお前らを殴ったアイツが？』 49