戦争と芸術とプロパガンダと

戦争を扱った絵画や映画、およびプロパガンダに関するツイートです。
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菅野完 @noiehoie

藤田嗣治の「サイパン島同胞臣節を完うす」という、サイパンでの民間人玉砕を描いた大作があるんだけど、あの絵は藤田と思えないほど精細で、グロテスクですらある。あの絵は、藤田にとって「ゲルニカ」だったんだと思う。

2013-05-21 11:53:43
菅野完 @noiehoie

「サイパン島同胞臣節を完うす」の真ん中では、ライフルを口にくわえて足で引き金を引こうとする瞬間の男性が描かれ、その脇では、母親が赤ん坊の首を絞めている。ああいう絵から「国威発揚」要素なんか読み取れるはずがない。素直に観れば反戦画。

2013-05-21 11:53:59
菅野完 @noiehoie

先日、あの絵を観た。張さんと二人で、藤田の「サイパン島同胞臣節を完うす」のあの巨大なキャンバスの前で立ちすくんだ。同時代の他の戦争画と並べられた藤田のあの絵は、僕たち二人を鷲掴みにした。あまりにも異彩だった。

2013-05-21 12:07:14
菅野完 @noiehoie

確かに、陸軍から協力を求められたのは事実だし、サイパン島もアッツ島も、彼はその協力の一環として描いたんだけど、その作品は、同時期の他の画家の絵と比べても、きわめてグロテスクで異様でさえある。彼の作風とも違う。

2013-05-21 12:08:51
菅野完 @noiehoie

素直に読み取れば「レジスタンス」「反戦」としか読み取れない作品を、戦後、「藤田は戦争協力した!!」と糾弾した、左翼陣営の罪深さは、本当にどうしようもないと思う。

2013-05-21 12:09:18
菅野完 @noiehoie

「素直に観ればなんでもないもの」に、「作品や言語そのものと関係のない」「外部の理屈」を用いて糾弾するという悪癖は、いまの左翼も引きずっている。「仲良くしようぜ」すら、「差別だ」と言ったりね。こういう悪癖をあらためないかぎり、左翼陣営は、人々の生活から遊離し続けるだろう。

2013-05-21 12:11:07
司史生@減量中 @tsukasafumio

@noiehoie @gishigaku 凄惨な描写や悲劇的な描写があるから反戦画と結論づけるのは、戦争を非とする現代的価値観からの後付けではないかな。ユンガーの戦争文学を見ても、悲惨や悲劇はヒロイズムの母胎となる。

2013-05-21 12:18:10
司史生@減量中 @tsukasafumio

アッツやサイパンの玉砕図を描いている最中の藤田に会った人の証言だと、芥川の「地獄変」の絵師のリアル版という感じだった。

2013-05-21 12:28:04
司史生@減量中 @tsukasafumio

かなり前にTBSの報道特集で、藤田をはじめとする戦争画についてルポがあり、従軍画家のひとりがインタビューに答えていた。その人は過去を隠さず「戦争は古来から芸術の主題だった」と言い切り、全身に蛆の涌いた日本兵の死体画を描き続けていた。

2013-05-21 12:32:05
田川 滋 TAGAWA Shigeru 타가와 시게루 @kakitama

この頃だと既に戦況不利が明白なので、「戦意高揚」と言うより「国民に総力戦の覚悟をさせる」意図で描かされている感じもしますね。RT @tsukasafumio: アッツやサイパンの玉砕図を描いている最中の藤田に会った人の証言だと、芥川の「地獄変」の絵師のリアル版という感じだった。

2013-05-21 12:31:33
司史生@減量中 @tsukasafumio

@kakitama 藤田はノモンハン戦の絵を製作した時に、公表されたのと別に日本軍が壊滅してる絵を描いてて、その構図をアッツ玉砕図に利用してます。なんか隠された反戦の意思というより凄惨なものを描きたくてうずうずしてた人のような気がするんですよ。

2013-05-21 12:39:21
司史生@減量中 @tsukasafumio

日本でもドイツでも、現代から見たらどう見ても悲惨で反戦的としか見えない絵画や映画が、検閲にひっかかるどころか戦意高揚作品として堂々と通用してしまった。それは検閲官が馬鹿なのではなく、総力戦の時代にはそれこそ効果があった。戦中の芸術作品にはそういう問題があります。

2013-05-21 12:43:41
田川 滋 TAGAWA Shigeru 타가와 시게루 @kakitama

@tsukasafumio 成程、戦争後半であれば死者と一体化して自分も破滅してリセットしたい、玉砕したい、的な”欲望”もあったかも知れませんが、ノモンハンにしても当時の戦場は描かないと日常世界には残せない人間を試す究極の”現場”、絵を描く者としては究極のテーマになり得ますね。

2013-05-21 12:51:16
田川 滋 TAGAWA Shigeru 타가와 시게루 @kakitama

@tsukasafumio 続)そう言う意味で、優れた画家である藤田にとっては反戦云々以前に、究極を描いたものには究極さが表現されていなければならない、そうしたいと考えたのかも知れませんね。勿論こう言う”意図”は描いた本人にとっても意識無意識が渾然としているものと思いますが。

2013-05-21 13:02:15
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs

@tsukasafumio 『軽騎兵旅団の襲撃』の記事で書いたけど、戦争の悲惨さを栄光に結びつけていたのはイギリスでも同じですね。日本は特に非西欧ということで際立っているが、芸術作品は社会と文化の所産なので、「悲惨の描写・受容」の分析にはコンテキスト的な理解が欠かせない。

2013-05-21 13:41:13
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs

田中日佐夫『日本の戦争画 その系譜と特質』ぺりかん社、清水一嘉/鈴木俊次編『第一次大戦とイギリス文学 ヒロイズムの喪失』世界思想社、を手がかりとしてとりあえずお薦め。

2013-05-21 13:44:56
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs

@tsukasafumio ユンガーの『鋼鉄の嵐』は…あれはトルストイの『セヴァストポリ』と共通しているような気がします。戦争という巨大な現象に叩き込まれた人格が、それをどうにかして他者に伝えようとした場合、「とにかく全て」を書くしかなかったのではないかと。

2013-05-21 13:50:37
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs

ハシェク、レマルク、ユンガーがそれぞれ描いた大戦は大きく違っているが、象を撫でるの諺の通り、一つの作品、一つの手段で巨大な戦争の全体を捉えるのは不可能だ。だが、ユンガーは初期のトルストイと共にそれを試みて、一定の成果を挙げているように読める。

2013-05-21 13:57:27
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs

日本で西洋風の戦争画を始めたのは黒田清輝だが、この分野での彼の作品は1枚も残っていない。高階秀爾先生によれば、結局、移殖できたのは皮相的な技法だけで、西洋の「骨格と思想」は持ち帰れなかったから、失敗に終わったのである。

2013-05-21 14:08:20
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs

末期の西洋戦争画は、ほとんどレイディ・バトラーのみが「悲惨」を主に描いたが、他の画家たちは「栄光」の言わば隠し味として「悲惨」を使うことが多く、結局、それらは母体となった帝国主義ミリタリズムと共に第1次大戦の現実の前に打ち砕かれ、そして西洋戦争画の長い歴史自体もここで終わる。

2013-05-21 14:15:43
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs

だから、後の日本の戦争画(そして歴史画も)はその「骨格と思想」において、西洋の戦争画・歴史画とは別物である。明治神宮聖徳記念絵画館や東京府養生館といった官営ギャラリーの目的は、恐らく手本となっただろうヴェルサイユ歴史美術館と重なるが、展示作品の傾向は大きく異なっている。

2013-05-21 14:12:10
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs

対して、大戦期の日本の戦争画、つまり聖戦画は、取り憑かれたように「悲惨さ」を追求していった。画家たちがそれを望んでいたと言うより、日本の統治権力が、戦時下の社会がそれを必要としていたのである。

2013-05-21 14:19:42
有坂純@ターナー展 @thorn_the_socrs

日本とフランスの間にあった、インサイダーにしてアウトサイダーであるレオナール・フジタの『アッツ島玉砕』は、「骨格と思想」において、どのように位置づけられるのだろうか。それは日本のものなのか、西洋のものなのか、ハイブリッドなのか。

2013-05-21 14:23:45
司史生@減量中 @tsukasafumio

@thorn_the_socrs 戦時下社会と戦後社会の継続性を考えると、悲劇性の強調により平和を訴える図式の戦後日本の映画やドラマが、本当に反戦的なものであったのかという疑問が生じますね。岡本喜八や鈴木清純の活劇こそ、戦争批判においてより深く痛烈だったのではないか。

2013-05-21 14:30:18
司史生@減量中 @tsukasafumio

周知のように岡本喜八や鈴木清純の戦争映画は、中国戦線を舞台にしたものが多い。1980年代以降の日本の映画やドラマは、反戦映画であっても、その大半は対米戦やシベリア抑留を描くことで中国から目を背けていた。

2013-05-21 14:35:04