モーサイダー!~Motorcycle Diary~Episode of Spring X~
- IngaSakimori
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「おっと、小うるさいのが登場だ……ヨ」 「ん?」 ボボボという連続した低音。 マフラーを変えたビッグスクーターかと思いきや、それはすぐに幾重にもかさなった交響曲となり、川野駐車場へ姿を現す。 #mor_cy_dar
2013-06-17 07:32:10(……ふーん、ああいうのもいるんだな) それは有り体に言ってしまえば、ミニバイクの集団だった。 しかも、それぞれが一目見てわかるほど徹底的にカスタムされ、果たして純正部品がどれだけ残っているのかという外見のマシンも多い。 #mor_cy_dar
2013-06-17 07:32:23「ぞろぞろと4ミニ軍団のお出ましだ……ヨ」 「4ミニ?」 「えっと、4ストロークのミニバイク。 125ccくらいまでの小柄なマシンの総称ですね。僕のグロムもいちおう同じカテゴリーになるんですよ、お兄さん」 #mor_cy_dar
2013-06-17 07:32:35「ふーん。……そんな呼び方があるんだな」 自分の知らない言葉を年下のティックが知っていることに、どこか悔しさを覚えながら、志智は4ミニの一団を見る。 #mor_cy_dar
2013-06-17 07:32:49総勢で10台ほどだろうか。 何もかも、ぴかぴかにメッキしたモンキーやゴリラがいるかと思えば、真っ白なフルカウルをまとったマシンや緑色のオフロード車もいる。 そのうち、3台ほどがまるで競い合うようにニュートラルへ入れたままスロットルを煽りはじめた。 #mor_cy_dar
2013-06-17 07:33:35それは意味があるといえばあり、ないと言えばない動作なのだろう。 キャブレターの調子が悪いのかもしれない。あるいは、プラグがかぶり気味なのかもしれない。 #mor_cy_dar
2013-06-17 07:34:09「あれはあれで楽しいらしいけど……ヨ。 ちょっと特殊な趣味だよな」 「特殊……か。やっぱり、おやっさんがいつもZRXぶんぶんやってるのとは、違うのか?」 #mor_cy_dar
2013-06-17 07:34:21「漢カワサキの乗り手は、走り出すときと止めるとき、ちゃんとカーボン焼き切れって教わるんだ……ヨ」 「なんだそりゃ」 「い、いい音させてますよね。でも、あのくらい音が大きいと、暖気とか近所に気をつかっちゃいますよね……コースならいいんですけど」 #mor_cy_dar
2013-06-17 07:34:51「なんだか……な」 雑踏のど真ん中にいるわけでもあるまいし、多少の騒音くらいはかまわないとも思う。 #mor_cy_dar
2013-06-17 07:35:33(それにしたって……自己主張が激しいっていうか、な) しかし、それは騒音が速やかに過ぎさる場合である。 停止状態でスロットルを開いては閉じる……また開いては閉じる。そんな行為を複数台で繰り返されては、少なくとも好感が持てるものではない。 #mor_cy_dar
2013-06-17 07:35:50(一緒にいる奴らも何も言わないのかな……) そして、それを傍観している仲間のライダーたちにも━━ と、そのときだった。 #mor_cy_dar
2013-06-17 07:36:07「おっ!!」 スロットルをあおり続けていたライダーの一人が、ようやくエンジンを停止させたかと思うと、今はじめて気づいたかのようにティックのグロムを指さした。 #mor_cy_dar
2013-06-17 07:36:25「グロムじゃーん! なんだよ、どノーマル! こいつはひでえな、ドン亀確定だぜ!!」 「あ……」 「………………へぇ」 失意の形に日原院ティックのまなじりが落ちたそのとき。 #mor_cy_dar
2013-06-17 07:36:46「おもしろい連中じゃないか」 三鳥栖志智はかすかな。しかし、実に獰猛な笑みを浮かべた。 #mor_cy_dar
2013-06-17 07:37:28【お知らせ】 本日の投稿はここまでです。この作品に興味をもった方、特にバイク乗りの方、@mor_cy_dar をフォローしてください。そして友人に広めてあげてください。物語の感想・こんな話が読みたいといったご要望も @IngaSakimori にてお待ちしております。
2013-06-17 07:38:22【モーターサイクルダイアリー・登場キャラクター名鑑】日原院ティック(にっぱらいん ティック)亞璃須の弟で帰国子女。名前は時計が針を刻むTickから。5月29日生まれの16歳。身長152cmだが、もっと伸びたい。愛車はグロム。転校初日に好きな人ができました。 #mor_cy_dar
2013-06-17 07:39:22