モーサイダー!~Motorcycle Diary~Episode of Spring XI~
- IngaSakimori
- 1982
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「はっ……はー!! なんだなんだそういうことか! ばっかでー! 俺達はなあ! せっかく4ミニ乗ってるのに、しょっぼいから悪いところを採点してやってるだけだよ!」 #mor_cy_dar
2013-06-25 10:23:14「……くっくっく。どんなバイクも乗り方が悪かったら、宝の持ち腐れ……もっとも、ふん詰まりマフラーのこいつじゃ、たかが知れてるけどな……」 #mor_cy_dar
2013-06-25 10:23:18「………………ふーん」 この二人を志智から見て。 その悪意の根にあるものをそれぞれ推測するならば、なんだろうか。 #mor_cy_dar
2013-06-25 10:24:51(なんていうか……さ) 自意識の過剰。 そして、他人を見下さずにいられない性分と言ったところだろうか。 (きめえ奴ら) その判断を下した瞬間、三鳥栖志智の中でわずか引っかかっていた『年上へ向けるべき敬意』は消滅した。 #mor_cy_dar
2013-06-25 10:25:35「そうか。ずいぶん自信があるんだな。 あんたらきっと速いんだろうなあ……他人のバイクを、乗り手の腕も見極めずに馬鹿にしまくるくらいだもんなあ……すげえなあ……」 #mor_cy_dar
2013-06-25 10:25:51「そ、そりゃーそうよ!! 大型だろうがなんだろうが、下りじゃ俺達にはついてこられねーんだよ! そいつを分かってない身の程知らずが多くてな、さっきも一台SSをかるーくぶっちぎって━━」 「そいつはすごい。じゃあ、250ccくらい相手にもならないよな?」 #mor_cy_dar
2013-06-25 10:26:05「……くく。どんなバイクでも同じ……こっちから見たら重すぎ、曲がらなすぎ、止まらなすぎだ……」 「へえ~?」 志智はあえて挑発の感情を隠すこともなく、語尾をつりあげてみせた。 嘘くさいな? 本当か、信じられないな? そんなニュアンスを存分にこめて。#mor_cy_dar
2013-06-25 10:26:46「な、なんだ今のは! 生意気だぞ、このっ……でかいのが!!」 「……くっく。見たところまだ学生みたいだけど……素人が大人をなめないほうがいい……忠告しておくよ……」 「生意気なのか、なめてるのかどうかは、実際に速さを比べてから言ってほしいな」 #mor_cy_dar
2013-06-25 10:27:02「お、お前、俺達とやる気か!? みのっ、みみみ、みのっほど知らずだな……どれだけ離されても知らないからな!」 「ああ、それでいいよ。 あんたらの得意な下りで走ろうぜ。月夜見第一からここまで、さ。それだけ口にする速さを見せてくれよ」 #mor_cy_dar
2013-06-25 10:27:29「別に今からでもいいんだが、そっちも準備があるだろうし……今度の土曜日、この時間でどうだ?」 「……戦わずに逃げ出したら不戦敗……それを忘れてはいけない……戒め……くくくくくっ……」 #mor_cy_dar
2013-06-25 10:27:49「おっおおおー! や、やってやんよおー!! けど、下りだからな! いいか、下りだぞおー!!」 なぜ、志智が強気に出ているのか。 そして、小太りのメガネと痩身の男が、どこか必死になって対応せざるを得ないのか。 #mor_cy_dar
2013-06-25 10:27:58「じゃあ、それで決まりだな」 三鳥栖志智(みとす しち)はうっすらと笑う。 しかしそれは口元だけのことだ。 その瞳には相手をその場に縫いつけるような鋭さがあり、長身からは闘志と怒気と、あるいは━━殺気にすら感じられるほど強烈な敵意を放つ。 #mor_cy_dar
2013-06-25 10:28:13(ありゃあこええよな……ヨ) 『おやっさん』はそんな志智を背中から見ているだけだったが、ゴリラとKSR110の乗り手にとって、どんな事態になっているのかは容易に想像がついた。 #mor_cy_dar
2013-06-25 10:28:39「こっ、ここここっ、この学生ふぜいが調子に乗ってれりられれーっ!!」 「……くくくく。噛んでるぞ……落ち着くんだな、原牧……」 「ほっ、ほっとけよお、細木ー!!」 「原牧『さん』に細木『さん』ね。俺は三鳥栖志智だ。 それじゃあ土曜日にな」 #mor_cy_dar
2013-06-25 10:29:02敬称ではなく、蔑称をつけて呼ぶべき名前を一応、記憶しつつ、志智は踵をかえす。 ティックと『おやっさん』はその時、ほんの残り香だけ志智の顔にのこった猛き感情を見た。 しかしそれは、風の前の塵とおなじ速度で消え失せる。 #mor_cy_dar
2013-06-25 10:29:15「わぁ……わぁ……! お兄さん、すごいです!!」 「ん? 何がだ?」 「いえ、あの、なんていうか……かっこいいです! 僕、ああいうことできないから、すっごく憧れます!」 #mor_cy_dar
2013-06-25 10:29:30「……そうか? 別に俺達のいないところで何言っても勝手だと思うが、聞こえるところでバイクの悪口言われたらな……頭に来るだろ?」 #mor_cy_dar
2013-06-25 10:29:50「そ、それはそうですけど、すごいです! いいなあ……僕、わかりました!! 千歳ちゃんを振り向かせるには、さっきのお兄さんみたいな事が出来るようになればいいんですよね!!」 #mor_cy_dar
2013-06-25 10:30:10「やっぱりよくわからないが、とりあえず動機が邪なことは理解できたので、制裁しておくぞ」 「痛いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいー!! お、お兄さんどうしてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 #mor_cy_dar
2013-06-25 10:30:42「それはそうと、志智……ヨ」 先ほどに倍する頭蓋骨がきしむ音は、走り去っていく4ミニ集団の爆音にかき消される。 残ったのは、空中にうかんだまま両手足をじたばたと動かすティックの叫び声と、深刻な表情の『おやっさん』のみ。 #mor_cy_dar
2013-06-25 10:31:11「お前、本当にあいつらとやるつもりか?」 「当たり前だよ。 純粋にああいう奴らはむかつくんだ。別にぶん殴ってもよかったんだけど、喧嘩するのは千歳にとめられてるからな」 #mor_cy_dar
2013-06-25 10:31:28「バイク乗りらしい落とし前の付け方ではあるけど……ヨ。 下り限定にしたのは失敗じゃねえかなあ」 「え? どういう意味だ?」 「いや、お前が好きでやるなら止めねえけど……ヨ」 #mor_cy_dar
2013-06-25 10:31:36「ああああああああああ、お兄さんんんんんんん、壊れるっ、壊れちゃいますううううううううう! 僕の頭の骨がああああああああ!」 「………………」 それ以上、詳しく語ろうとしない『おやっさん』の表情に、三鳥栖志智は少年の悲鳴も忘れて立ち尽くしていた。 #mor_cy_dar
2013-06-25 10:32:23