牧眞司の文学あれこれ その5

牧眞司の文学あれこれ その4牧眞司の文学あれこれ その4 http://togetter.com/li/496165 からの続きです。
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牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ほかにも今年出版された世界文学作品で、ロブ=グリエ『消しゴム』、ナボコフ『絶望』(ともに光文社古典新訳文庫)は現代ミステリとしても最高水準だと思うのだが、ミステリ・ファンもミステリ評論の方々もあまり言及されていないような気がする。ぼくが不注意なだけかもしれませんが。

2013-12-17 21:00:13
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

『ルーティーン 篠田節子SF短篇ベスト』(ハヤカワ文庫JA)見本が届いた! 篠田さんの「あとがき」がステキ。ユーモアの効かせた文章で、小説家としての心意気が恬淡と表明されていてカッコいい。惚れ直してしまいました。

2013-12-18 18:40:32
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

篠田さんの「あとがき」の書き出し――〔トリックとキャラに興味は無いが、謎と神秘は好きだ。人の身体と心、文明に関わる謎も面白いが、自然と人との間に横たわる神秘もいい。〕

2013-12-18 18:40:47
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

上田早夕里『深紅の碑文』(早川書房)読了。「魚舟・獣舟」『華竜の宮』と同じ未来を舞台に、迫り来る地球規模の壊滅的異変に対して、さまざまな立場の人びとが生き残り対策や、自らが属する共同体の利益や正義を追求しようとする。多くの価値観や駆け引きが絡みあった、じつに大がかりな物語。

2013-12-21 16:40:13
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

小松左京と比べられることが多い上田早夕里だが、ぼくが『深紅の碑文』で感じたのはむしろ眉村卓との類縁性だ。

2013-12-21 16:40:31
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

眉村さんが提唱した「インサイダー文学論」は、特定の機構や団体のなかの一員の視点だったが、『深紅の碑文』は別々の組織・勢力のインサイダーが登場し、そのあいだの軋轢・反目・連携・分担など複雑なやりとりが描かれる。

2013-12-21 16:42:11
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

石原慎太郎『秘祭』(新潮文庫)を読んだ。かなり面白い。サスペンス小説としても、文化人類学な視点・感覚においても非凡。人口17人の孤島をリゾート化するために訪れた主人公が、いっけん平穏な村にひそむ禁忌・習俗にふれ、ついにあともどりできないところまで踏みこんでしまう。

2013-12-25 18:26:18
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

非劇的な結末を導くのは、ひとつに異文化のメカニズムであり、ひとつは村人の心中にある瞋恚だが、作者はどちらもあまり説明的に扱わず、むしろ情景や行動を重点的に描いていく。たぎるものが物語を貫いているのだが、それを設定(島の文化)にも内面(心の闇)へも送り返したりしない。

2013-12-25 18:28:26
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

異境のなかへ踏みこみ、いつのまにかあともどりできない地点を踏み越えてしまう。そういう小説だと、ぼくはポール・ボウルズがいちばん面白いと思う。ボウルズは共同体のメカニズムを経由せず、人と世界との界面をあらわにしてしまう。

2013-12-25 18:42:04
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ボウルズに比べると、石原慎太郎『秘祭』も、あるいは安部公房『砂の女』も、共同体(土着性)が前提になっていて、そのぶんわかりやすいのだが、ちょっと迂遠な感じがする。それはぼくの嗜好というか志向の問題なのだが。

2013-12-25 18:42:36
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

奥泉光さんだったと思うけど、「共同体の文学」と「宇宙論の文学」というような分け方をしていて、ああ、なるほどと思った。外見的なことやジャンル分けは別にして、ぼくはほぼ「宇宙論の文学」が出発点で、共同体の問題はあくまで局所的な(もしくは中間的な)問題だという感覚がある。

2013-12-25 18:49:16
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

もちろん、ここでいう宇宙とは、ロケットを打ち上げたりするとかそういことではない。ぼくにとってはボルヘスはもちろん、カフカも「宇宙論の文学」なので。

2013-12-25 18:49:31
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

大江健三郎『洪水はわが魂に及び』(新潮文庫)を読んでみた。カルト(?)集団「自由航海団」が核シェルターに立てこもり、半ば自滅的な最後を迎えるまでの顛末はどうにものみこめない部分が多々あるが、中盤の「縮む男」の裏切り/自己犠牲のあたりは、グロテスク・ファンタジイとして迫力ある。

2013-12-30 18:52:03
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

岡和田晃『「世界内戦」とわずかな希望』(アトリエサード)読了。本格的な評論集ゆえ、まとまった時間を取って読みたかったため、いままで取りかかれずにいた本。ここ2日間をあてて読んだがその甲斐があった。きわめて啓発的。それは内容だけではなく、著者の思考する姿勢や表現へむかう態度までも。

2013-12-31 13:44:36
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

岡和田さんが俎上にあげている作品はSFや世界文学が多く、その志向・嗜好はぼく自身のそれとも近いのだけど、文学に何を託すかという点が決定的に違う。その「決定的」とは、相容れないということではない。少なくともぼくの側からすれば強い光でこちらを照らしてくれる思いだ。

2013-12-31 13:45:13
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

おそらく岡和田さんにとって文学は、同時代的問題をあらわにし、そこから先へ踏みだす契機となるものだ。ぼくがそういう感覚がないのは、岡和田さんの観点からすれば「リベラル・アイロニスト」たることに甘んじているからだろう。

2013-12-31 13:45:48
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

『「世界内戦」とわずかな希望』を読み、「リベラル・アイロニスト」たる自分から脱却しようと思ったわけではないが(軽々にそう思うのはかえって危険だろう)、自分が拠っている地点を確認し、そこからは見えづらいものがつかめる。それは小説を読むうえで多くの可能性を開いてくれる。

2013-12-31 13:46:42
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

たとえば、ぼくは「他者/他人」「宇宙/共同体」という極で考えるのだけど、岡和田さんの批評を読むと、それでは掬いきれない(掬いにくい)ものがあると気づく。

2013-12-31 13:47:14
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

「帰らざる日のために」の歌詞について話したら思いだした。この歌の出だしは〔生まれて来たのはなぜさ〕なんだけど、中学生はだいたいエッチなことを想像するよね。

2013-12-31 17:10:51
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

それと同様、『ライ麦畑でつかまえて』で主人公のホールデンが〔僕が生まれる前に両親は何をやってたかなんてことはしゃべりたくないんだ〕とかうそぶくんだけど、これを読んだときも「いやあ、それはキミを作っていたんだろ-」と思った。サリンジャーってこういうユーモアなのね、と。

2013-12-31 17:11:19
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

その当時はヴォネガットが大好きだったので、サリンジャーもそういうのかなって合点したんだけど、いま思うとそうじゃないよね。ぜんぜん違いますね。ごめんなさい。

2013-12-31 17:11:56
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ジェス・ウォルター『ザ・ゼロ』(岩波書店)読了。最後まで間断なく面白い! 記憶が途切れ途切れになるなか、テロリスト(おそらく)の捜査と、自分の身分(諜報組織のメンバーらしいのだが曖昧)の推測を進めていく主人公。ジャンルミステリのようなタネ明かしで終わらない。

2014-01-01 17:01:36
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