オーズ・ディケイド・平成ライダー 火を噴け!十二人ライダー 04
「待ってください、色の混ざったメダルってのは何です。そんなもの存在するわけが」 「俺は実際にこの目で見たんだ。三色に分割されて、それぞれに鳥の紋章が刻まれたやつをよ」 士に嘘を言っている様子はない。信じ難い話だが彼は三つのメダルが混ざり合ったものとやらを本当に目撃したのだ。
2013-09-14 22:44:05しかし、そんなものあり得るのか。世界が違えばそんなメダルも存在するのだろうか。映司が一人思案を巡らせる中、今まで聞き手に回っていた鴻上が口を開く。
2013-09-14 22:45:32「成る程、そういうこと……か」 「鴻上さん、何が”そういうこと”なんです」 「火野君。君はドクター真木との戦いを覚えているかね?」 「何です藪から棒に。勿論覚えてますけど」 鳥系グリード・アンクと協力して挑み、欲望の「ブラックホール」に真木を飲み込ませて決したあの時か。
2013-09-14 22:48:07それがこの話と何の関係があるのか。顔に疑問符を浮かべる映司に、鴻上は「その通りだ」と言葉を返す。 「時に火野君、君は『ホワイトホール』と言うものをご存知かな」 「えぇと、ブラックホールと繋がっていて、そこで飲み込んだものを放出する天体がホワイトホール……なんでしたっけ」
2013-09-14 22:50:27「関係があるからさ。君の話じゃあドクター真木と恐竜メダルは粉々に砕け、他のメダルと一緒にブラックホールに吸い込まれていったんだったね。そこでさっきのホワイトホールだ。この二つは表裏一体の代物。この世界で発生したブラックホールが次元を越えて、門矢君たちの世界と繋がったのだ」
2013-09-14 22:53:57「門矢君が見た異質なコアメダル。あれは恐らく、砕けたメダルたちに”消えたくない”という欲望が生じ、互いに引き合って出来たものではないだろうか。コアメダルの三枚揃いの力がどのようなものか――、君はよく知っている筈だ。成る程、それを使用した怪人がライダーを圧倒できたのも頷ける」
2013-09-14 22:54:56「アンクの体みたいなことが、あの中で起こったって言うんですか」映司は訝しげな目で鴻上を見る。「でも、行く先が別世界だとか、意思の消えたメダルに欲望が芽生えるだなんて、突飛過ぎて」 「それでも、実際に起こったのだ。それに今気にすべきことはそこじゃない。そうだね、門矢君」
2013-09-14 22:59:16鴻上に唐突に話を振られ、士はやや戸惑いながらも言葉を返す。 「俺たちの世界のアポロガイストが、何故この世界に攻めて来たのか……ってか? ヤツは俺たちライダーを倒した後、ろくでもないことをしでかしたのさ」
2013-09-14 23:02:16「ショッカーと言う組織は、古今東西の優秀な技術に目を付け、次々に吸収して発展した組織。コアメダルの事も研究を行っていたらしい。ヤツはあの戦いの後、アジト跡地に残された技術を応用し、とんでもねぇものを作りやがったんだ」 「とんでもないもの……とは?」
2013-09-14 23:03:36「人を直接メダルに変える装置さ。ヤツがかつて所属していたGOD機関、そこで研究開発を行っていた「RS装置」とやらの応用らしい。詳しい仕組みは分からんが、人間ってのは頭のてっぺんから足の先まで欲望の塊だからな、変換されちまえば皆同じになるって訳だ。それは仮面ライダーも例外じゃねぇ」
2013-09-14 23:04:12「俺以外のライダーはみんなやられた。やられただけならまだよかったんだが、ヤツはライダーのメダルに宿る力を利用して、”全平行世界”を繋ぎ、自分の支配下に置こうとしやがったんだ。ヤツの元にはほぼ全てのメダルが集まり、辛うじて一人生き延びた俺にも止めようがなかった。しかし……」
2013-09-14 23:05:20「しかし?」 「失敗したんだよ。全ての世界を繋ぐ所か悪戯にいじくり回したせいで、奴らのアジトと大多数の怪人を巻き込んで消えやがったのさ。俺はその隙に二枚のライダーメダルを奪い、オーロラの一つに飛び込んだ。後は奴らの放つ刺客たちと戦いながら、ヤツの居場所を探し回ってたって訳さ」
2013-09-14 23:07:10士はそこまで話し終えると、ゆっくりと深呼吸をして言葉を継ぐ。 「俺から話せることは以上だ。さて鴻上とやら、俺たちをそんな物騒な戦場に呼んだ訳。そろそろ聞かせてもらえるか?」 「いいだろう」鴻上は真剣な顔付きで言う。「では、本題に入ろうか。里中君」
2013-09-14 23:10:10鴻上の一言に、今まで黙っていた里中が口を開く。 「お二人にやっていただきたいのは、アポロショッカーの撃退及び、現在敵の捕虜となっている鴻上の救出です。会長無しではライドベンダーもカンドロイドも自由に使用出来ませんので……」
2013-09-14 23:14:01「ちょ、ちょっと待ってください里中さん」彼女の口を突いて出た一言に、映司は目を見開いて聞き返す。「捕まってるんですか!? 鴻上さんが」 「はい。会長、カメラをもう少し引いてもらえますか?」 「うむ、少し待ちたまえ」
2013-09-14 23:14:42里中の求めに応じ、鴻上はカメラを引いて、周囲の様子を映司たちに見せる。 彼が立っていた場所はいつもの応接間ではなく、薄暗くて何もなく、微かな明かりだけが灯った硝子張りの部屋であった。
2013-09-14 23:15:16更に上方へとカメラを向ける。部屋の天井に供えられた小箱の中で何かが動いた。長くうねうねとした何かが、火花を散らしながら箱の中で這いずり回っている。 「鴻上さん、これは……」
2013-09-14 23:18:26「コアやセルの使い道を知っているのは、この世界じゃ我が財団だけだからね、真っ先に奴らに狙われたんだよ。勿論ライドベンダー隊や仮面ライダーバースを出動させて応戦させたのだが……結果は惨敗。私も捕らえられ、ライドベンダーやカンドロイドの使用権も彼らに奪われてしまった」
2013-09-14 23:18:54「捕まる際上着の中に、テレビカメラ内臓型のバッタカンドロイドを忍ばせておいたから、こうして君たちと話が出来るのだけどね。この牢獄には上の電気ウナギカンドロイドから供給された5万ボルトの電流が流されている。私の力じゃ脱け出せないんだ」
2013-09-14 23:20:20「バースも倒されて、鴻上さんも捕まって、全く勝ち目がないじゃないですか! これじゃ俺が来たって何も……」 「落ち着きたまえ火野君。確かに絶望的な状況だ。しかしね、君がいて、仮面ライダーディケイドがアポロショッカーからライダーメダルを奪ってきた今、逆転のチャンスは大いにあるのだよ」
2013-09-14 23:21:42「逆転のチャンスって……、俺はもうオーズじゃないんですよ、何をしようって言うんです」 「そうだね、その通りだ。里中君! 火野君に例のものを」 「かしこまりました」 里中は鴻上の求めに応じ、虹色のリボンが巻かれた白いプレゼントボックスを取り出した。
2013-09-14 23:25:18「……これは?」 「開けてみたまえ。そうすれば分かるさ」 「はぁ」訳が分からず、疑問は拭えないが、映司は里中が差し出したプレゼントボックスを掴むべく手を伸ばす。しかしそんな疑問も、ヘリの操縦席から聞こえてきた悲鳴で掻き消えた。
2013-09-14 23:26:44「な、なんだ今の声」 「操縦席からだぜ。何かあったんじゃねぇのか……わわっ、と!」 驚いたのは悲鳴のことだけではない。それと同時にヘリの高度が下がり始めたのだ。どう考えても普通じゃない。 「私が見てきます。二人はそこで待機していて下さい」
2013-09-14 23:29:36まずは私がと操縦席に向かう里中。そこで彼女が見たものは、首と体が皮一枚で繋がって事切れた操縦士と、血に塗《まみ》れた右手の爪を舐めて拭う、筋骨隆々としたコウモリの怪人の姿だった。
2013-09-14 23:30:56「”リント”ザ《は》ボゾグ《殺す》。リンバボゾグ《皆殺す》! ゴゼ《おれ》、ゴオマ。ゴゼ《おれ》、ゲゼブバス《偉くなる》、ロドドロドド《もっともっと》!」
2013-09-14 23:32:30