地獄鎮守府の日常＃２６

白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

古鷹は多少不安げな顔をしたが、私の指揮をきちんと聞く。彼女は艦娘同士での実戦経験がほとんどない為恐怖するのも無理はない。喩えるなら民間人のようなものだ。「この子達は一体何なのでしょうか……提督、食堂の方に駆逐３、軽巡３居ますね」 #地獄鎮守府の日常

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加賀だ。彼女ら空母は艦載機を展開し偵察を行っており、敵の位置をメモしつつ、報告している。室内の制空権は現在は補給が潤沢な此方の方が優位である、というのは救いであるが、数の暴力に何時すり潰されるかという恐怖感は、依然として拭えない。 #地獄鎮守府の日常

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「ダクト内にまで艦載機が入ってきてる……これ、素人の手段じゃないわね」大鳳が不安げに語る、空母達は椅子に座りながら艦載機を運用している、正直傍目見れば武装した少女が机と向き合いながら、ぶつぶつと何かを語っているようではあると感じる。 #地獄鎮守府の日常

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そんな中、扉が開かれる音がした。不知火がさっと、扉の方に手持ち式の１２．７ｃｍ砲を向ける。「戻ってきましたよ、本当、派手にやってますね」扉から戻ってきたのは、電と金剛だ。 #地獄鎮守府の日常

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電は胸像のように、両腕と下半身を失った子日の頭を鷲掴みにしており、そのセーラー服は返り血で汚れていた。不知火が仲間だと判断すると、砲を下に向け、ほっとため息をつく。「臆病になりましたね」電がその仕草に、くすりと笑う。 #地獄鎮守府の日常

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「そうね、幸せになりましたから。だから昔のようにはならないし、もう、なりたくもありません、絶対に」だが不知火は、怒る様子も無く言い返す。「ええ、だけど強くなった……さてと、これが土産物です、敵の旗艦ですよこの子、金剛さんちょっと椅子用意してくれませんか？」 #地獄鎮守府の日常

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「オッケー、これでいいデスか？」そう言って金剛が置いたパイプ椅子の上に、胸像のように引き裂かれた子日を置く。切断面はショートしており、胴体からは臓物かぶら下がり、胸は刃で貫かれたのか胸部の動力炉は停止しているようで艦娘特有の静かな駆動音は聞こえない。 #地獄鎮守府の日常

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子日は私達から目を逸らし、床の方を見ている。「早く殺しなよ。今日は何の日？子日の命日、あなたたちの命日だよ？」子日が呟く。ネガティブでダウナー、生存を諦めた口ぶりだ。「これ、聞き出せるのか？」一体どうすればいいのかと、私は考えてしまう。 #地獄鎮守府の日常

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電が私に提案する、拷問は基本立会人の私と、もう一人任命した艦娘が行うことになっている。だが、こうなった彼女に拷問しても無駄だろう、無言を貫き通し時間を稼がれるだけだ、ゆっくりとやる猶予なんてない。 #地獄鎮守府の日常

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「いや、雷を呼べ、すぐにこいつの頭の中から吐き出させる。もうなりふりは構わない、悪魔の手でも借りるぞ」「そうですね、わかりました」そう言って電は部屋から出て、数分するとすぐ雷をつれて戻ってくる。「じゃーん、雷様の出番ね司令官？」笑顔で雷がキメ台詞を言う。 #地獄鎮守府の日常

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そして雷はすぐに子日に近づき、彼女の眼を覗き込む。「な、なに……？」 その様子に、狼狽える子日、雷はその顔を見て笑顔を浮かべると、前髪から棘のようなものを取り出し、彼女の額にぶすりと刺し『接続』した。 #地獄鎮守府の日常

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「あ……うぁ……あ……あ……」がくんがくんと首を動かす子日を、雷は笑顔で首を掴んで押さえつける。異様な光景、そんな光景の間も、砲声は絶え間なく続く。子日は白眼を剥き、そして体の力を抜けたように、気絶する。 #地獄鎮守府の日常

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腕は千切れ下半身はなくなり、意識が途切れる、一般的に見れば死んでるも同然だが、艦娘の場合、この程度は大破した程度に過ぎない。「終わったわよ」棘を引き抜き、雷は告げる。 「首尾は？」「上場、かな、どこから聞く？」 #地獄鎮守府の日常

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「まず敵の目的、規模だ。一体奴等は何なんだ？」「うーん、そうね、この人達は情報軍の提督達の徒党ね、提督は４人、それぞれの名前と区画は今書くね」そう言って雷はメモ帳も文字を書き連ねる。 #地獄鎮守府の日常

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雷が調べ上げたリストには、一人見知った、同じ派閥の……本土放棄派の提督も居る事に驚く。「それで目的はこの区画をぶっつぶす事かしら？」 雷はにっこりと笑う。そんなことはわかっている、問題は、何故潰すかだ。 #地獄鎮守府の日常

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彼女は意図して伏せている、私と同じ派閥の人間が襲撃に参加する異常事態だ、だがその理由を隠している。私に知られてはいけない、知ってはいけないとものを隠すように。「何故伏せる？」私は直球で、彼女に問い掛ける。 #地獄鎮守府の日常

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「情報軍の幕僚レベルでの禁則事項だからよ、つまり司令官以上の存在、海軍風に言えば大本営かしら」「この前横須賀を襲撃した時に大鳳が殺した本土維持派の連中じゃないのか？」「違うわ、彼らのレイヤーよりも上位の闘争を行ってるから、こんな少数なのよ」「じゃあ、何者だ」 #地獄鎮守府の日常

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「『貴方が介在すべきでない戦い』の住人よ。私にはこれ以上は答えられないし答える気はない、けど、知りたいなら貴方ワトソンでなく、シャーロック・ホームズのようになって推理して」雷が苦い顔をする、こんな顔を浮かべたのは初めてだ。 #地獄鎮守府の日常

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私が介在すべきでない戦い、警告のような言葉、何が目的かはわからない、ただ、何かを隠してる不快感が、私の心にこびりつく。だが、気にしたところで状況は好転しない。私は敵の区画の情報、艦娘の編成、それぞれの提督の性格、見取り図等を雷に作成してもらい、作戦を構築する。 #地獄鎮守府の日常

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顔の見えない提督、穴だらけの性格情報、推測された編成データから、私は彼らの戦術パターンを予測し、パズルのように構築していく。 私は相手の戦術を把握するのが上手だった、相手が何を考え、どうすればいいか、それを動かすのに長けていた。 #地獄鎮守府の日常

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だからこそ、アフリカの地獄で、一人で戦えていた。敵の規模は４００以上、私の規模は１００、防衛戦とはいえ不利な数、このまま凌いでも潰されるだろう。だとすれば目的としては、指揮官である提督の暗殺或いは撤退への恫喝による霍乱である。 #地獄鎮守府の日常

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敵提督は恐らく区画内に陣取っており、そこから指示を出している。彼らは同じ場所に一箇所に集まっておらず、それぞれが自分の執務室にて待機してるだろう、子日の提督はおそらく意識接続を遮断し、子日を放棄している可能性が高い。 #地獄鎮守府の日常

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だが、念には念を私は入れよう。私は腰のホルスターから拳銃を取り出す、故郷で作られた拳銃、トカレフにセーフティを配置し、９ｍｍパラベラム弾に対応した拳銃。 正式名称はツァスタバＭ７０Ａ。 #地獄鎮守府の日常

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ただしこの拳銃と同名のＡＫ４７派生の突撃銃があるため、私はトカレフと専ら呼称している。 その拳銃を虚ろな眼で、どこでもないどこかを見ている子日の前に向け、引き金を引く、９ｍｍ弾が彼女の脳天に、穴を開けた。 #地獄鎮守府の日常

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一見小さい穴だが９ｍｍ弾は彼女の脳をズタズタにかき回し、機能を停止させるのであった。「あら、殺したの？もうその子、敵の司令とのリンクは切ってたのに」「念には念を、さ」「司令官、戦場だと本当に怖いわね」口元に笑みを浮かべ、雷は言った。 #地獄鎮守府の日常