地獄鎮守府の日常 #32~36

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白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

そうして宿場につくとそこは区画を旅館に回想した場所であった。提督と思わしき老婆が受付を行っており、睦月型の艦娘や、川内型の艦娘達が割烹着を着て運営しているのが見て取れる。 内装も旅館を意識してか、内装も通常の金属壁の上に更に木壁を張り巡らせた様子だ。 #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 15:29:20
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

私は個室に風呂があると確認すると、チェックインを済ませる。叢雲が部屋の中に入ると艤装を脱ぎ、血の付いた服を脱ぎ捨てると、すぐに風呂場に入って行く。 私は部屋の外に出て、ここの区画を管理する老婆提督に、叢雲の服の替えが欲しいと、財布を持って受付で聞く。 #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 15:33:30
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

「叢雲はうちの鎮守府にはおらんからなぁ……ああ、陽炎型の初期タイプの服ならある、それで代用できんかね?」 老婆は聞く、艦娘の制服は基本どの型か、どの艦娘か戦場で簡単に識別するためのものだ。 ただ、昔は障壁を展開する為の予備バッテリーでもあったらしい。 #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 15:36:03
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

だがここは海の上ではない、なら別に着れれば何でも問題は無いと考えた私は、それでいいと頼む。 すると老婆はベルを鳴らし、やってきた皐月に不知火の服を持ってこいと頼み、そして私に不知火のものと思わしき、紅いリボンの服を渡す。 #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 15:39:05
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

「ありがとうございます」 と私は礼金を渡す。 「いいってことよ」 と老婆は返した。 しかし、この区画の空気はギスギスしたものが薄く、和気藹々とした区画だな、と私は感じる。 「それにしても、平和な区画ですね」 私は口を滑らせる。 #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 15:40:33
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

「まぁ、アレなのは片っ端からバラしてるだけよ。アレなのを厳しく罰して、始末をつければ大人しい娘しかいなくなるのさ」 老婆の答えに、私は現実に引き戻される。 この平穏な旅館の裏側には、血と粛清が流れてる、そして、それは必要悪なのだと。 #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 15:43:55
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

私の鎮守府でも、あまりに素行の悪い艦娘等は処罰や、最悪解体追放の処理を行う事となっている。 そしてそれを行うのは叢雲だ、私はそれを許可してるが、彼女が手を穢す。 彼女の提案でもあった、そして彼女の活動によって、鎮守府はある程度の秩序が取れてる。 #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 15:47:10
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

私が直接粛清をとれば、憎悪は私に向く、そのため叢雲が行うのだが、この老婆は自分自身が手を穢したのだろうか。 だが、老婆提督を恐怖の眼で艦娘は見ない。もし老婆提督が粛清の執行者とすれば、恐怖の眼で見る事すら罪なのだろうか? #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 15:50:18
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

思考の渦に巻き込まれ、悪趣味な憶測に気分が悪くなった私は「そうですか」と答えその場から去り、叢雲の居る場所まで向かう。 「ちょっといいかな」 だが、通路の途中で後ろから声。 振り向くと、後ろには先ほど私が出会った、旅人の時雨が居た。 #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 15:52:03
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

「何だい?」 と私は問い掛ける。 「うん、ちょっとラウンジでお茶したくてね、だめかな?」 と、時雨は口元に笑みを浮かべながら、私を誘う。 「まぁ、ちょっとだけなら構わないかな」 私も笑みを造り、了承し、そして二人で旅館区画のラウンジに向かうのであった。 #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 15:54:36
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

旅館のラウンジ、竹で造られた椅子に座りながら、私は時雨とテーブル越しに向き合う形になる。 「それで、私なんかに何の用事だい?」 「まぁうん、聞きたい事があるんだ」 時雨は私の眼を覗くように目を合わせながら、私に頼みかかった。 #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 22:45:46
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

「何をだい?」 「そうだね、僕の提督は死んだ、その仇について、知ってたら教えてほしいんだ」 そう言って、時雨はメモ帳を引きちぎり、メモを私に渡す。 私はメモを受け取り、そこに描かれた情報を観覧した。 #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 22:49:01
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

提督について ・横須賀鎮守府出身 ・本土派の幹部の一人 ・僕らの都合のいい傀儡 提督の殺害犯についての情報 ・艦載機をダクト内に侵入させ、機関銃による暗殺 ・監視カメラによると、中東連邦に鹵獲された大鳳の仕業 ・だけど僕は知っている ・お前がの仕業だ #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 22:52:15
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

頭が凍りつき、メモを読み終え正面を見据える。 時雨は、消音機付きの拳銃を私の頭に向けていた。 その表情は、凍り付いたような無表情で、その瞳は、憎悪に満ち私を睨みつけている。 「つけていたのか」 私は彼女に問い掛ける。 「いや、偶然の接触だよ。運が良かった」 #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 22:54:42
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

銃口を突きつけながら、彼女は私に話をする。 「そうか、天運だったね。だが、何で私をまだ殺さない?」 「聞きたい話があるからだよ、これは『僕ら』の問題だ」 その言葉に、引っ掛かりを覚える。 『僕ら』とは何だ? #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 22:59:30
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

だが、ここで問い掛けても無駄だろう。なので私は黙り込み、彼女の質問を待つ。 「まず、僕の居る区画の提督は本土派ではなかった、むしろ大陸派だった。それなのに情報軍から暗殺者が来た……君はどこまで状況を把握している?」 彼女の口が、開かれる。 #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 23:03:35
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

恐らく殺害したのは任務斡旋者の方の大和が与えた、本土派の暗殺任務の一人。だが、その本土派の中に本土派ではない存在が混じっていたのだと彼女は語る。 「大体、本土派と本土放棄派以上のレイヤーで争いが発生してる事ぐらいは知ってるね」 ここは、嘘をつかずに発言する。 #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 23:09:05
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

恐らくはこの前の襲撃事件と同じ、『別のレイヤー』での戦い、その刺客がこの時雨なのだろう。 ここは、逆に何があったかを聞き出すチャンスでもある。 「ふむ……」 私の言葉を聞いて時雨は考え込む。 その隙を、私は逃さなかった。 #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 23:14:46
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

彼女が突きつけた銃の手首を掴み、手の甲を小手返しの要領で捻る。 「っつ!?」 咄嗟に時雨は引き金を引く、だが捻られた腕から放たれる銃弾は天井を打ち抜くだけに終わり、そのまま私に成す術もなく組み伏せられ、緩んだ手から拳銃を取り上げる。 #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 23:18:35
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

取り上げた拳銃をあさっての方向に投げ、私は彼女の反撃が来る前に手を放し数歩引き、トカレフを引き抜きセーフティを外し、彼女の頭に銃口を向ける。 「さて、形勢逆転だ」 体を崩しながら、睨みつける時雨に私は言い放った。 #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 23:22:40
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

だが、時雨は体を立て直そうと動く、その為私は即座に彼女の胸に目がけ引き金を引く。 銃声が鳴り、9mm強装弾は延長されたバレルを辿り彼女の胸、中心の主動力部に当たり、穿つ。 「っぐっ!?」 時雨は体を動かす動力を失い、体を再度崩した。 #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 23:27:52
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

主動力炉を貫かれた艦娘は胴体が動けなくなる。脳幹近くにある副動力炉はあくまで頭部の生命維持のための機関で、肉体を動かすものではない。 「艤装を着てなかったのが運の尽きだね」 そう言いながら、私は彼女の細い腕を掴み、持ち上げる。 #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 23:32:21
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

「早く殺しなよ。それとも辱めるのかい?」 時雨は諦めの表情を浮かべており、逆に尋問できるか不安である。 そもそもここではまずい、銃声に気付かれ、陽炎と黒潮がこの光景を見て唖然として、お盆を落とし、乗ってあったお茶を零しているのが見受けられる。 #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 23:35:16
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

「今のはただの喧嘩だ、いいね?」 私は彼女らにそう言い捨てる、時間稼ぎにはなるだろう。 「あっはい」 と陽炎が返す。私の鎮守府の陽炎に比べると、少し芋っぽい感じがしたが、特に気にせず時雨をトイレに連れ込み、洋式トイレに座らせる。 #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 23:37:12
白金桜花 C103土曜東ヨ18b @YamanekoOuka

「さて、今度は私の質問に答えろ、答えれば君は非正規の修理屋に連れて行ってやる」 「君に知られるよりは死んだ方がマシ、というのはわかってるさ」 私の脅迫は、どうにも逆効果だったようだ。 なら、発想の転換だ。 #地獄鎮守府の日常

2014-07-13 23:44:58
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