@_h_japan さんの「自殺率の規定要因分析」

@_h_japanさんの「自殺率の規定要因分析」研究ツイートのまとめ。 かなり詳細に研究プロセス・結果を記述なさっています。   (関連まとめ) 清水康之さんの自殺対策支援活動:http://togetter.com/li/72533
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h @_h_japan

カナダは、公的扶助(生活保護)が高いわりには、「家族向け支出」や「失業給付」そして、「社会支出」全体は低いほうだ。社会支出を領域ごとで見ても、国ごとで、別の領域でカバーしていたりするので、注意が必要だ。ある程度いくつかの領域を「加算」して、見たほうがよい。これが教訓だ。

2010-10-15 01:40:37
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年金等の高齢者向け公的支出。北欧諸国(社会民主主義)よりも大陸諸国(保守主義)のほうが若干高めだ。「保守主義」(コーポラティズム+国家主義)ということで、職域別公的年金が多く公務員年金支出が高い(エスピン=アンデルセン『三つの世界』邦訳pp.79, 132-4)のが原因だろうか。

2010-10-15 02:02:07
h @_h_japan

OECDの「社会支出」データの内訳についての詳細な説明は、日本政府のこのpdfファイルが、非常に参考になる。政府に感謝。 http://bit.ly/alf8Io

2010-10-15 02:11:27
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他にも「遺族向け支出」と「障害者向け支出」がある。それで社会支出の内訳は全部だ。これらの内訳データを使って、これまでよりも詳細な分析がいろいろとできないものだろうか。どういう支出をしたらどうなるのか。各支出領域は、どういう社会的要因に規定されているのか。など。

2010-10-15 02:22:09
h @_h_japan

あ、あと「公的医療支出」という内訳もあった。 とりあえず来月〆切の英語論文で、使えるものは使ってみよう。大事なのは、「相互補完的な諸領域は、加算すべき」ということだ。たとえば、「失業給付+住宅補助+公的扶助(+公的医療支出)」は、自殺率を抑制する効果をもつかもしれない。

2010-10-15 02:35:51
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自殺率(人口10万人当たり)の推移 http://twitpic.com/2xl7cf

2010-10-15 02:50:09
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自殺率が低いのは、南欧(ギリシア・イタリア・スペイン・ポルトガル)とイギリス(とオランダ)。南欧は血縁共同体が強いのと日照時間が長いので説明できるとして、イギリスとオランダは謎だ。そこで出番なのが公的支出だ。イギリスは住宅補助が高い。オランダはアクティベーションが高い。

2010-10-15 03:23:21
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イギリスでは、失業してもホームレスにならずに済む(安心がある)。オランダでは、失業しても職業訓練等で能力を高められる(希望がある)。これだ。とりあえず記述統計では、こういう理論的な仮説が立てられる。パネル分析で検定も可能だろう。これを来月の英語論文の軸にしよう。

2010-10-15 03:27:13
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近々学会で発表する分析結果によれば、日韓のように急速に経済発展した国では、失業率の上昇が自殺率の上昇に結びつく傾向がある。これは、長期経済成長率の自殺率への正の効果が、長期成長率と失業率との正の交互作用によって説明し尽くされたことで、示される。で、来月の論文ではこの続きを書く。

2010-10-21 01:51:54
h @_h_japan

実は、長期成長率と失業率の交互作用と独立して、社会支出率(対GDP比)は自殺率に負の効果を持っている。社会支出率が1%上がれば、10万人あたり自殺者は0.1人減る推定だ。単純計算すると、日本の社会支出率をスウェーデンレベルまで10%程高めると、日本の自殺者が1300人減る推定。

2010-10-21 02:02:11
h @_h_japan

で、重要なのはここからだ。社会支出の内訳は、年金・医療・家族・失業・障害・住宅・生活保護など、多岐に渡る。では、その分野での支出を高めれば、自殺率が減るのだろうか。ヒントはオランダ、英国、デンマークの事例にある。

2010-10-21 02:04:49
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それらの事例から仮説を導けば、「住宅補助」(ホームレスにならない安心を提供)と「積極的労働市場政策」(失業から脱せる希望を提供)のための支出が、自殺率を下げる、との仮説が提案できる。

2010-10-21 02:07:30
h @_h_japan

で、実際に分析してみると、「社会支出」の(自殺率への)負の効果は、「住宅補助」と「積極的労働市場政策」の2つの変数の負の効果によって、完全に有意性を失う。つまり、社会支出の効果は、住宅補助と積極的労働市場政策で、説明し尽されたことになる。先の仮説を支持する結果が得られたわけだ。

2010-10-21 02:09:26
h @_h_japan

というわけで、「私たちの子孫が、この国で不運によって失業したときに、それが原因で自殺に追い込まれてしまうようなことがないように、この国の制度を改善するためには、とりわけ住宅補助と積極的労働市場政策に税金を使うように方向づけたらよいのではないか」との提案ができるのではないだろうか。

2010-10-21 02:21:25
h @_h_japan

もちろん、分析・解釈・提言の前提として、「日本の経緯だけでなく、他の先進諸国(OECD諸国)の経緯からも、(各国の歴史的背景の違いを考慮に入れつつ)等しく学ぶならば」という前提があるので、それを明記しておかなければならない。

2010-10-21 02:27:17
h @_h_japan

ちなみに、日本の戦後の自殺率(人口10万人あたり自殺数)は、低い90年代前半と比べて、今は(10万人あたり)5人分増えた。経済水準・失業率・離婚率・結婚率・出生率・女性労働力率・高齢者率なども、社会支出とは独立した効果をもつ。 http://twitpic.com/2zahul

2010-10-21 03:02:24
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h @_h_japan

自殺率の話のつづき。昨夜つぶやいたとおり、ぼくの分析では、各国固有の定数が含まれており、各国固有の歴史的背景をそこに吸収させています。しかしトッド『世界の多様性』邦訳p.88には、「自殺率高←共同体家族>直系家族>絶対核家族>平等主義核家族→自殺率低」という仮説が示されています。

2010-10-21 22:43:34
h @_h_japan

そこで、各家族制度(トッドによればそれは15世紀末以降不変であり、宗教改革・近代イデオロギーの源泉である)のダミー変数を作って、説明変数に投入してみた。すると、平等主義核家族のみがたしかに有意な負の効果を示すが、他の家族制度は自殺率に有意差を生まない。→

2010-10-21 22:48:35
h @_h_japan

→しかも、投入前と比べて投入後はモデルの尤度が有意に改善されておらず、さらに、(AICは変わらないが)BICは1990から2003へと増えてしまっているのだ。

2010-10-21 22:53:22
h @_h_japan

投入前に有意だった「緯度」(気温・可照時間)の正の効果が消えて、「平等主義核家族」の負の有意効果が出るわけだが、尤度比検定とBICから判断すれば、「平等主義核家族」よりも「緯度」のほうが、説明力が強いことになる。

2010-10-21 22:55:04
h @_h_japan

「平等主義核家族の国で自殺率が低いように見えるのは、緯度による擬似相関だった」ということが(少なくともこのOECD27ヵ国、1980~2005年の国レベル・パネル分析からは)いえるようだ。トッドでさえこうなのだから、自殺率を左右する歴史文化的変数を特定するのは、現段階では難しい。

2010-10-21 22:57:18
h @_h_japan

だからこそ、説明変数としてではなく国特有のランダム切片(定数)として、観察されない効果(各国特有の歴史的背景など)を回帰式に含めているわけですね。なお家族制度変数投入後でも、緯度以外の変数の有意性は失われません(もちろん正負も不変)。参考:http://bit.ly/bVKegX

2010-10-21 23:08:05
h @_h_japan

注記: 本分析で使っているOECDの自殺率は、「自殺年齢調整死亡率」です。http://bit.ly/2kbrFv のグラフにある「日本の自殺率データ」とは異なります(このグラフでは、日露の自殺率と、他国の自殺年齢調整死亡率とが、混在してしまっているようです)。

2010-10-22 03:35:22
h @_h_japan

OECDの「自殺年齢調整死亡率」データの詳細はこちら(1980年のOECD諸国の人口構造を基準としているようだ)→ http://bit.ly/9B0Jnshttp://bit.ly/d2J41v

2010-10-22 03:55:33
h @_h_japan

昨夜発見したこのサイトは、じつに面白い。日本の社会学者はたいがいすでに知っているサイトなのだろうか。知っているとお得そうである。 日本における(ウォーラーステイン的な意味での)中核地域(=独占的生産過程の集中地域)がここだとして→ http://bit.ly/bFBfSz

2010-10-23 10:58:23
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