四大聖戦：第一戦闘フェイズ【熱砂漠の間】

颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

光、光、光。 キラキラと煌めくそれは、少女の全てを包み込もうと波の様に風の様に迫ってきます。 轟々と風を吹き荒らす少女はちらりと睨む様に勇者を睨みつけますが、少女の側からは彼が倒れ伏している様子しか見えず、苛立たしげに眉を潜めました。

颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

既に全方位を囲まれ、逃げるという選択は出来ません。 自分の周りの砂の全てを巻き上げる勢いで風を起こし、砂の壁で身を守ろうとしましたが、勇者の全力の魔力が篭ったそれを打ち消せる筈もありませんでした。 多少は弱まるも砂を突き抜けたその光は、容赦無く少女の身体に叩きつけられます。

颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

黒い羽は焦げ、機械の羽は折れ、表面の半分以上が崩れ落ちた少女は外套を焔から庇い抱きしめたまま、必死に耐えようとしました 未だ燻る熱の中に残ったのは息も絶えそうな黒い塊。折れた羽と人形の残骸によって、辛うじてそれがあの少女だった事がわかりますが、それはもう少女とは呼べないものでした

颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

影の様な化け物は、今は一つだけになってしまった橙色の瞳で倒れた勇者を見据え、黒い煙や液体を垂れ流すその身体をずるりと引きずります。 「…しん、死、…死…？」 動かない勇者の身体。 自分は、嘘をつかずにいれたのかしら。大切な約束を握ったまま、少女は茫然とそれを眺めました。

颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

「…これで、皆と一緒、いれる…？」 勇者一人に、この体たらく。魔王のみんなにみせられる綺麗な身体も失ってしまいました。そんな死にかけの化け物を、果たして彼らは受け入れてくれるのでしょうか。 「…貴方の力を侮った、私への罰かしら」 勇者の亡骸を眺めたまま、化け物は静かに呟きました。